page.19 黒い瞳
きっとあれだけの炎の勢いだ
倉庫街一帯は焼け野原になるだろう
そしてHawardの死体が見付かる
順番はどっちでも良いけど
火災に警察と消防隊は駆け付けるだろう
DNA鑑定でHaward=Birthdayだと判明し、Jackを殺した犯人だという証拠もきっと焼け跡から発見される筈だ
「兎に角、僕は逃げなきゃ~」
ちょっと足早に倉庫街から離れ
インターネットが出来るお店の近くまで戻った
「寒いなぁ~...」
時間...
というか
今が何日なのか分からない
カレンダーも時計も
暫く見ていなかったからね
「What's date today?」
辿々しい英語で
通行人に訪ねる
「Today is December 24th.」
「Thank you.」
英語なんて
喋ったのは何年振りかな?
昔パパと観た映画が偶然洋画で
僕はちょっとだけ英語に興味を持った
でもすぐに飽きて
喋らなくなった
そんな思い出が
頭をよぎった
「お兄ちゃんは、英語しか喋れないのかなぁ~...
一応、一通り喋れるようにしておこう」
また図書館に入り浸り
ひたすら洋書とにらめっこ
分からない文章は
館長に聞く
でも何故か館長は
僕の顔をあまり見てくれない
そうか...
この眼が気持ち悪いんだね...
何日間か図書館に通い詰め
取り敢えず英語の読み書き
会話がなんとか出来るようになった
「Thank you.」
館長にお礼を告げると
僕はまた歩き出した
そろそろお金が底を尽きそうで
一刻も早く持ってきた物を売らなければならなかった
まずはジャムやチョコレートなど
食料になりそうな物を売った
「あ~...これじゃ駄目だね。商品にならないよ」
半分以上を突き返される
次は古本屋
父の書斎から持ってきた売れそうな本を
差し出した
「ほぅ...これはこれは...」
本屋の叔父さんは良い人で
ちょっとオマケしてくれた
最後はお酒
栓の開いていない
なるべく古い物を数本持って行った
酒屋の叔父さんは
プレミア物だと言って
かなりの額で買い取ってくれた
これなら暫くは
野垂れ死ぬ心配はしなくて良いねぇ~
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