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page.12 光





1991年10月31日
私の12回目の誕生日がやってきた

母の命日が
私の誕生日だ...


淋しさ
悲しみ
憎悪
恐怖


この日は
沢山の感情に支配される



「ァー.....」

「ニア.....」


でもそんな感情も
ニアの笑顔を見ると
少しは和らぐ


私はこの歳で子供がいる
そして何人もの人が死ぬのを目の前で見ている


引きこもり探偵


本当にそうかもしれない
「世間」からすれば
軽蔑の目で見られる人種だろう


だから私は
一切世間に顔を晒さなかった


怖い
というのもあったが
ニアの安全を考えたうえでの結論だ


この日を境に
必要最低限の外出をしなくなった









ニアが来てから約四ヶ月
世話にも大分慣れてきた


そして
ニアはとてもおとなしい子供だった


泣くのは
眠い時
排泄の時
ミルクの時間
だけだった


手が掛からない子供

それがニアだった




「私も...こんなふうだったのでしょうか...」


ニアの小さな指を握りながら呟く




「ル....L」


一階からワタリが呼んでいる


「はい」


階段を少し下り
顔だけ出してワタリに訪ねる


「L、外をご覧下さい。」
「外?」


ワタリに導かれるままに
玄関のドアを開けた



「......雪...」


外は
辺り一面が白銀の世界だった


「綺麗ですね...」
「ニアにも、見せてあげましょうか」
「はい」


ニアが寒くないようにタオルケットにくるみ
外へ連れ出す


「ニア...綺麗ですね...雪ですよ」
「キャッキャッ!」


雪を少し掬って
ニアの手に触れさせる

体温ですぐに溶ける雪


私の心に巣食っている闇も
ニアになら溶かせるかもしれません...



「何だか美味しそうです」


私は雪を少し掬って口に運んだ


「無糖です...」


「L、お腹を壊しますよ」


...見られていた




こんな小さな幸せが
私にはとても幸福な事に思えた


私の心も...
いつか雪のように真っ白になるでしょうか...












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