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page.09 絶望の淵から...





コンコン...


「失礼します。ドクターNagi...」
「L、大分落ち着きましたね」



ワタリは
数日の入院が必要になるが
命には別状ないという


過度の疲労と
精神的に不安定だった事が
病に繋がったという


手の傷は
血のわりには酷くなく
神経に異常は見られないそうだ



「良かったです...ワタリが無事で...」
「L、その表情いいね」
「え?」
「君はワタリの話をする時は、とても穏やかな表情になる」
「そう...ですか?」

「普段は人と距離を置く君が、ワタリにはこんなに心を許している」
「はい。ワタリは...」

「君の親友であり、最高の父親。だろ?」
「まぁ...そういう事にしましょうか」

正確にはちょっと違う


ワタリは私を救ってくれて
ここまで育ててくれた

私にとって
ワタリは神であり
希望の光だ


ワタリと出逢えて
私は本当に幸せです


「L、そろそろワタリの目が覚める頃だよ。行っておいで」
「はい。ありがとうございます。ドクター」




ワタリの病室へ続く廊下を歩く

病院は静かで好きだ

医療器具が擦れる音と
薬品の匂い


ここで毎日
幾つもの生と死が繰り返されているのだ

神は
まだ私を生かしてくれている

もう死にたいなど
口にするのをやめよう


生きたくても生きれない人々も
沢山いるのだ

そんな人々の前で
死にたいなどと言ったら
それこそ裁きが下るであろう












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