鍵介夢SS
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「……あれ、」
帰宅部の今日の活動が終わり、校舎を出た所で中庭に見慣れた人影を見つけた。
その人影はベンチに腰をかけてじっとしている。近づいて見ればやっぱり、そこには咲耶先輩が居た。
先輩はすやすやとそこでうたた寝をしていた。手には画面が真っ暗のスマホ。大方弄ってる間にうとうとして、そのまま眠ったんじゃないだろうか。
何となく、そう、何となく隣に腰掛けてみた。けれど先輩は全く起きる気配が無い。
(……寝不足、かな)
こんな外で、彼女の場合はファンに追っかけられる可能性だってあるのに、ぐっすりと。
僕が帰宅部へ寝返ってから、楽士である先輩とは勿論全く関わることがなくなった。
先輩は帰宅部の活動が活発になってから、学校に姿を見せなくなった。いや、来ているのだろうが僕達とはタイミングをずらしているんじゃないだろうか。だからといって、わざわざWIREで連絡を取るのも迷惑だろうし。
帰宅部に入ってその日に抜けた楽士グループのメンバーの中で、咲耶先輩だけは唯一個人の連絡先を残しておいた。仲が良かったから、関係を切りたくないから、そんな情けないエゴに塗れた理由で何となく残してある連絡先は、どうやら向こうにブロックされてることも無いらしい。
そもそも帰宅部と楽士は敵対関係にある。楽士の名を捨て、帰宅部と道を共にすると決めたのだ。それなのに未だに彼女に対して何かしらの繋がりを求めている。──自分らしくない。そんなのは僕が一番分かっている。
「──え……わっ」
そのとき、ぐらりと先輩が傾いて僕の肩に寄りかかってきた。ふんわりと女の子特有の甘い匂いが漂ってくる。
「ちょ、ちょっと、先輩……!」
小さい声で呼び、軽く揺すってみても起きる気配は無い。ただすうすうと規則正しい寝息が返ってくるだけだ。
「あー、もう……誰かに見られたらどうするんだよ」
ちら、と横目で肩に乗った先輩を見た。綺麗にカールした睫毛、ほんのりチークで染まった頬。しっかりメイクしているからか知らないが、いつもは大人っぽい、とまでは行かないけれど周りの女生徒よりかは年相応に見えにくい。だけど、今僕の隣で眠る先輩は何処か幼く見える。
「……かわいい、な」
そっと手で先輩の前髪を軽く梳いてみる。綺麗に染まった明るい茶髪はさらさらと指を通り抜けた。
「──んん…」
「あッ……!」
前髪を通り抜けた指を無意識に頬にやろうとして──むず痒そうに唸った先輩にハッと我に返った。……僕、今何をしようとしたんだ?
驚いた拍子にびくっと跳ねてしまい肩に乗っかった先輩が起きないか不安だったが、どうやら起きる様子は無くまた寝息を立て始めた。それにほっとして、ずり下がった眼鏡を先ほど引っ込めた手で直した。
それからゆっくりと深呼吸する。ふわふわ漂う甘い香りに心臓はいつになくバクバク音を立てている。
「──これ、どうするべきなんだろう……」
いつも通りのまともな思考が出来ない。今日の僕はおかしい。……けれど、おかしい思考をしているからだろうか。後もう少しだけ、誰にも見られず、彼女は眠ったままで、このままであって欲しいなと思った。
先輩も帰宅部に来てくれればどんなに良いだろう。頭に浮かんだ自分勝手で傲慢な想いはこっそりと胸の奥へ。
帰宅部の今日の活動が終わり、校舎を出た所で中庭に見慣れた人影を見つけた。
その人影はベンチに腰をかけてじっとしている。近づいて見ればやっぱり、そこには咲耶先輩が居た。
先輩はすやすやとそこでうたた寝をしていた。手には画面が真っ暗のスマホ。大方弄ってる間にうとうとして、そのまま眠ったんじゃないだろうか。
何となく、そう、何となく隣に腰掛けてみた。けれど先輩は全く起きる気配が無い。
(……寝不足、かな)
こんな外で、彼女の場合はファンに追っかけられる可能性だってあるのに、ぐっすりと。
僕が帰宅部へ寝返ってから、楽士である先輩とは勿論全く関わることがなくなった。
先輩は帰宅部の活動が活発になってから、学校に姿を見せなくなった。いや、来ているのだろうが僕達とはタイミングをずらしているんじゃないだろうか。だからといって、わざわざWIREで連絡を取るのも迷惑だろうし。
帰宅部に入ってその日に抜けた楽士グループのメンバーの中で、咲耶先輩だけは唯一個人の連絡先を残しておいた。仲が良かったから、関係を切りたくないから、そんな情けないエゴに塗れた理由で何となく残してある連絡先は、どうやら向こうにブロックされてることも無いらしい。
そもそも帰宅部と楽士は敵対関係にある。楽士の名を捨て、帰宅部と道を共にすると決めたのだ。それなのに未だに彼女に対して何かしらの繋がりを求めている。──自分らしくない。そんなのは僕が一番分かっている。
「──え……わっ」
そのとき、ぐらりと先輩が傾いて僕の肩に寄りかかってきた。ふんわりと女の子特有の甘い匂いが漂ってくる。
「ちょ、ちょっと、先輩……!」
小さい声で呼び、軽く揺すってみても起きる気配は無い。ただすうすうと規則正しい寝息が返ってくるだけだ。
「あー、もう……誰かに見られたらどうするんだよ」
ちら、と横目で肩に乗った先輩を見た。綺麗にカールした睫毛、ほんのりチークで染まった頬。しっかりメイクしているからか知らないが、いつもは大人っぽい、とまでは行かないけれど周りの女生徒よりかは年相応に見えにくい。だけど、今僕の隣で眠る先輩は何処か幼く見える。
「……かわいい、な」
そっと手で先輩の前髪を軽く梳いてみる。綺麗に染まった明るい茶髪はさらさらと指を通り抜けた。
「──んん…」
「あッ……!」
前髪を通り抜けた指を無意識に頬にやろうとして──むず痒そうに唸った先輩にハッと我に返った。……僕、今何をしようとしたんだ?
驚いた拍子にびくっと跳ねてしまい肩に乗っかった先輩が起きないか不安だったが、どうやら起きる様子は無くまた寝息を立て始めた。それにほっとして、ずり下がった眼鏡を先ほど引っ込めた手で直した。
それからゆっくりと深呼吸する。ふわふわ漂う甘い香りに心臓はいつになくバクバク音を立てている。
「──これ、どうするべきなんだろう……」
いつも通りのまともな思考が出来ない。今日の僕はおかしい。……けれど、おかしい思考をしているからだろうか。後もう少しだけ、誰にも見られず、彼女は眠ったままで、このままであって欲しいなと思った。
先輩も帰宅部に来てくれればどんなに良いだろう。頭に浮かんだ自分勝手で傲慢な想いはこっそりと胸の奥へ。
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