鍵介夢SS
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気付けば、知らない所に居て。戦闘の後のように気だるかった。
気付けば、帰宅部が目の前に居て。どうやら自分は彼らと一戦交えたのだと気づいた。
けど、どうしてだろう。もう私に彼らと戦う理由なんて無いのに。
私の困惑したような顔を見てか帰宅部の集団の、丁度後ろの方に居た私の良く知る、眼鏡を掛けた──今はもうカギPの名は名乗っていない、響鍵介が私の目の前へと向かってきた。
貴女、ソーンに再洗脳されてたんです。……大丈夫ですか?、と。
ああ、そういえば。記憶を辿ってみれば、ある期間からの記憶が曖昧だ。最後、不気味に笑うソーンの顔を見て……そういうことか。
そっか、ごめん。また迷惑かけたね。また鍵介と戦うようなことをしちゃったのか。ごめんね、鍵介。
私がそう名前を呼んで謝れば、彼は何故か酷く安心したような表情を浮かべた。その表情の意味は分からなかったけれど。
鍵介はいつもの笑みで、いいですよ謝らなくて、と。そう言ってくれた。
彼らは現実に戻るのか。だから上を目指しているのか。だから私はここで守り人をしていたのか。落ち着いてくると、様々なことを思い出してくる。
私自身、もうメビウスに留まりたいとは思っていない。まだ私の侵食率が最高値を占めていた頃、帰宅部に……鍵介に体を張って説得されてしまったから。
大人しく説得されるのは何だか癪だったが、大人になりたくない、とずっと駄々を捏ねていた彼が、散々嫌がっていた現実と向き合っている姿を見てしまえば──私だけこんな所で隠れているなんてできないじゃないか。
ねえ。現実に戻って……周りが落ち着いたら。そうしたら、現実のあたし……ううん、「私」に会ってくれる?こんなに明るくて可愛い、偽物の皮を被った私じゃなくて、自分を受け入れられなくて理想に逃げた、暗くて弱くて、性根が曲がった「私」と会ってくれる?また……話をしてくれる?
初めて彼に「サクヤ」でなく、「伊良原咲耶」でもなく、「わたし」として話しかけた。現実に怯えて逃げ出すような、そんなちっぽけな、大嫌いな私を彼の前に出した。
けれど彼は嫌そうな顔一つ見せず。むしろ嬉しそうに微笑んで、
ええ、勿論。前に話したでしょ、二人で何か曲を作ってみたいって。現実の僕はまだ楽譜すらろくに読めない、作詞すら上手くできない何にもできない僕だけど……少しずつ頑張るんで。でも、一人じゃ続けられるか不安なんで、貴女も一緒に……その、僕の隣で頑張ってて下さいよ。
と、最後の方は少し照れが混じった声で答えてくれた。
きっと彼となら、彼となら私は「わたし」を好きになれるんじゃないか。「わたし」を輝かせる努力ができるんじゃないか。
ずっと怖いと思ってた現実。でももし、その恐怖を共有できる人が傍にいてくれれば?──そうすれば、私は立っていられるだろうか。……立つ努力が、できるんじゃないか。
長い、長い大きな階段。
振り返ることなく登る帰宅部の、彼の背中を私は希望と期待を抱いて見つめていた。
──きっと、彼らならこの永遠に醒めぬ理想の夢を終わらせてくれるだろう、と。
気付けば、帰宅部が目の前に居て。どうやら自分は彼らと一戦交えたのだと気づいた。
けど、どうしてだろう。もう私に彼らと戦う理由なんて無いのに。
私の困惑したような顔を見てか帰宅部の集団の、丁度後ろの方に居た私の良く知る、眼鏡を掛けた──今はもうカギPの名は名乗っていない、響鍵介が私の目の前へと向かってきた。
貴女、ソーンに再洗脳されてたんです。……大丈夫ですか?、と。
ああ、そういえば。記憶を辿ってみれば、ある期間からの記憶が曖昧だ。最後、不気味に笑うソーンの顔を見て……そういうことか。
そっか、ごめん。また迷惑かけたね。また鍵介と戦うようなことをしちゃったのか。ごめんね、鍵介。
私がそう名前を呼んで謝れば、彼は何故か酷く安心したような表情を浮かべた。その表情の意味は分からなかったけれど。
鍵介はいつもの笑みで、いいですよ謝らなくて、と。そう言ってくれた。
彼らは現実に戻るのか。だから上を目指しているのか。だから私はここで守り人をしていたのか。落ち着いてくると、様々なことを思い出してくる。
私自身、もうメビウスに留まりたいとは思っていない。まだ私の侵食率が最高値を占めていた頃、帰宅部に……鍵介に体を張って説得されてしまったから。
大人しく説得されるのは何だか癪だったが、大人になりたくない、とずっと駄々を捏ねていた彼が、散々嫌がっていた現実と向き合っている姿を見てしまえば──私だけこんな所で隠れているなんてできないじゃないか。
ねえ。現実に戻って……周りが落ち着いたら。そうしたら、現実のあたし……ううん、「私」に会ってくれる?こんなに明るくて可愛い、偽物の皮を被った私じゃなくて、自分を受け入れられなくて理想に逃げた、暗くて弱くて、性根が曲がった「私」と会ってくれる?また……話をしてくれる?
初めて彼に「サクヤ」でなく、「伊良原咲耶」でもなく、「わたし」として話しかけた。現実に怯えて逃げ出すような、そんなちっぽけな、大嫌いな私を彼の前に出した。
けれど彼は嫌そうな顔一つ見せず。むしろ嬉しそうに微笑んで、
ええ、勿論。前に話したでしょ、二人で何か曲を作ってみたいって。現実の僕はまだ楽譜すらろくに読めない、作詞すら上手くできない何にもできない僕だけど……少しずつ頑張るんで。でも、一人じゃ続けられるか不安なんで、貴女も一緒に……その、僕の隣で頑張ってて下さいよ。
と、最後の方は少し照れが混じった声で答えてくれた。
きっと彼となら、彼となら私は「わたし」を好きになれるんじゃないか。「わたし」を輝かせる努力ができるんじゃないか。
ずっと怖いと思ってた現実。でももし、その恐怖を共有できる人が傍にいてくれれば?──そうすれば、私は立っていられるだろうか。……立つ努力が、できるんじゃないか。
長い、長い大きな階段。
振り返ることなく登る帰宅部の、彼の背中を私は希望と期待を抱いて見つめていた。
──きっと、彼らならこの永遠に醒めぬ理想の夢を終わらせてくれるだろう、と。