鍵介夢SS
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「鍵介ってさ、眼鏡掛けてなくてもかっこいいよね」
ふと隣に座る咲耶に話しかけられ、顔を向けたと同時に何か喋る間もなく鍵介は眼鏡を奪われた。外したところでぼやけるわけでも無い鍵介の視界には、鍵介の眼鏡を両手に持ってまじまじとこちらを見つめる咲耶の姿。
「ちょ……っと、何するんですかいきなり!」
「えー、いいじゃんちょっとくらい。どうせ伊達でしょ?」
奪い返そうとすればからからと笑いながらひょいっと眼鏡を掴んだ手を後ろにされてしまう。そうされてしまえば鍵介と眼鏡の距離は離れてしまい、取るには立たないと難しそうだ。けれど目が本当に悪いならいざ知らず、所詮伊達だ。そこまで本気になるのは馬鹿らしい。
鍵介は少しむすっとした表情を作り、何なんですか一体、と聞くかのように咲耶の目を見た。すると咲耶は先程からこちらを見つめ続けていたのか、ばちっと目が合ってしまった。
「……やっぱさ、鍵介ってわりかし顔整ってるよね。パーツが綺麗っていうか」
「……はい?」
「彼女の贔屓目抜いてもイケPよりかっこいいし、あの帰宅部の……峯沢くんにも負けてないレベルだと思うんだけどなー……なんだろ、眼鏡で隠れてんのかな?後は雰囲気で逃げられてたり?」
「はあ……褒められてるんですか?」
「え?褒めてるじゃんかっこいいねーって。あたし鍵介の顔好きだもん、勿論顔以外も大好きだけど」
鍵介はさらりと言われた咲耶の言葉にぽかん、と口を開いた。それからじわじわと頬に熱が集まってくるのを感じる。──いつもそうだ、この人は無自覚でこういうことをサラッと…!
「……もー…なんで先輩はいつも突然そういう事言うんですか…!反則ですよ」
「はあ?何が?」
きょとんとする咲耶の横で、鍵介は赤くなった顔を隠すように片手で顔を覆いはあ、と長い溜息をついた。
ちら、と咲耶を見てみれば何を言われてるのか分からない、と言うような表情をしている。
全く、無自覚なのが一番タチが悪い。
鍵介は既に咲耶の意識の外に飛ばされて、いつの間にか彼女の膝の上にあった眼鏡を奪い返して掛け直した。レンズ越しに見える世界は、やっぱり裸眼と何も変わらない。
「あ!あーあ、いつもの鍵介に戻っちゃった」
「何ですかその言い方、いつもの僕じゃ駄目なんですか?」
「そういうわけじゃないけどさあ……でも鍵介、裸眼でも充分かっこいいし眼鏡掛けてなくてもよくない?」
「嫌です」
きっぱりと断る鍵介に、えー?なんでよ、と咲耶は不満の声を漏らした。
きっと彼女のことだ、ただ単に裸眼の状態の鍵介だってかっこいいから皆に見せてやろう、とでも思ったんだろう。
鍵介は一つ、あることを思いついた。
心の中で一つ深呼吸をし、いつもの手癖で眼鏡の横を軽く押し上げた。
「──いいじゃないですか。そのかっこいい眼鏡外してる僕が見れるのは先輩の特権なんで、他の人には見せません」
かなりキザな台詞を吐いたな、と言うのは自覚している。けれども照れてることなんて知られたくないからわざと余裕ぶった笑みを零してみた。耳はほんのり赤くなっているだろうけど。
それでも、無自覚な彼女にはそれは随分なダメージになったようで。
「えっ……あ、う……そ、そう、そっか、ふーん……そ、それならしょうがない……のかな」
鍵介の言葉に目を大きく見開いた彼女はみるみるうちに顔を真っ赤にして、それから鍵介から目をそらし、地面の草を見ながらしどろもどろに頷いた。右手は髪をくるくると弄っているが、巻いては解いて巻いては解いて、これでは髪に変な跡がついてしまうのではないか。
仕返し成功、と心の中でガッツポーズをするのと同時に、咲耶のその反応に自分まで余計顔が赤くなってくる。
……しかし、これはもしかしたらキスができる雰囲気なんじゃないか。照れた彼女の腕を引いて引き寄せて、顎を軽く掴んでやれば──
「え──っ、!?ちょ、ちょっと何鍵介いきなり……!」
「い……いや、その…」
けれど、鍵介が実行できたのは最初の腕を引くという行程のみ。顎を掴もうと思ったが緊張か何か自分の腕が言うことを聞いてくれなかった。
腕を引かれた咲耶はそのまま鍵介に抱きとめられるような形になり。驚いた咲耶が顔を上げれば、当然頬を染めて挙動不審気味な鍵介と随分近い距離で目が合った。
「〜〜っ!や、えっと……キ、キスをしようとしたんですけど」
「……は!?」
「ちょっと……めちゃくちゃ緊張しますねこれ」
結局、そこから挽回も出来ず正直に述べたら咲耶からは予想通り素っ頓狂な声。けれどその、いつものような咲耶の声を聞けたおかげで少し落ち着いた。
「……すみません、僕本当こういうの慣れてなくて…」
「い、いや……あたしも分かんないし…人と付き合ったこととか無いし……」
「……すいません」
「あ、謝んないでよ変な雰囲気になんじゃん!えっと……キ、キスね。わかった」
自分が情けなくなり項垂れて謝る鍵介に慌てて声をかけると、咲耶はうう、と何事か唸ったあと、意を決したようにそっと目を閉じた。
「え……せ、先輩?」
「何してるんだとか聞かないでよ、めっちゃ恥ずかしいんだからこれ。……キス、するんじゃないの?」
「えっ……」
上擦った声を上げた鍵介に、もう早くしてよ!と咲耶は怒ったように声を荒らげた。閉じた瞳は緊張からか少し震えていて。
なんでこんな展開になったんだっけ、と一瞬頭の中を疑問が駆け巡ったが、今はそれどころじゃない。これ以上女の子にリードして貰う訳にいかないだろう。
鍵介はそっと微かに震える手で咲耶の頬に手をかけた。それから距離を縮めようとしたが一瞬考え、空いた手で己の眼鏡を外した。裸眼で見る咲耶は、やっぱりとっても可愛かった。
「っ……」
それからぐい、と距離を近づけ目を閉じて、恐る恐る唇を重ねた。──初めてじゃあないのに、どうしていつもこんなに緊張するんだろうか。
重ねた瞬間、びくりと咲耶の身体が跳ねた。それに驚き離れてしまいそうになったが、そこは少し耐え、もう暫く後に唇を離した。前に一瞬しか出来なかったことを教訓に、今度は少しだけ長めのキス。どうやらこれは成功したようだ。
目を開いてみれば、咲耶も同時に目を開いたのか少し潤んだ彼女の瞳が目に入った。彼女も鍵介が眼鏡を外していたことに気づき、少し固まったあと先ほどの鍵介のように両手で顔を覆った。
「……っ、もー!なんなの鍵介、それ反則すぎじゃない!?」
「えっ……な、何がですか!?」
「だってそれ、さっきの話……特権ってそういうこと!?」
「え……?」
「あーもう無自覚!やだ!そういうとこだよねほんと!!」
咲耶はそう一方的に捲し立てると自分の顔を隠すためか、はたまた「仕返し」か、鍵介にぎゅっと抱きつき首元に顔を埋めた。
「はっ……!?ちょ、咲耶先輩!?」
「うるさい!もうむり!キャパオーバー!」
「いや、それこっちの台詞……!何なんですか突然!!」
鍵介は抱きつかれた体勢のまま、どうしていいか分からず固まり。
咲耶は抱きついたはいいもののいつ離れればいいのか分からず固まり。
訳もわからずその体勢のまま二人で軽い口喧嘩。それは10分ほど続いたという。
──二人のその一部始終をマスコットのように小型化したμがきらきらした目で覗き見していて、またそれをLucidに嬉しそうに報告していたのは……当然、二人に知る由もない。
ふと隣に座る咲耶に話しかけられ、顔を向けたと同時に何か喋る間もなく鍵介は眼鏡を奪われた。外したところでぼやけるわけでも無い鍵介の視界には、鍵介の眼鏡を両手に持ってまじまじとこちらを見つめる咲耶の姿。
「ちょ……っと、何するんですかいきなり!」
「えー、いいじゃんちょっとくらい。どうせ伊達でしょ?」
奪い返そうとすればからからと笑いながらひょいっと眼鏡を掴んだ手を後ろにされてしまう。そうされてしまえば鍵介と眼鏡の距離は離れてしまい、取るには立たないと難しそうだ。けれど目が本当に悪いならいざ知らず、所詮伊達だ。そこまで本気になるのは馬鹿らしい。
鍵介は少しむすっとした表情を作り、何なんですか一体、と聞くかのように咲耶の目を見た。すると咲耶は先程からこちらを見つめ続けていたのか、ばちっと目が合ってしまった。
「……やっぱさ、鍵介ってわりかし顔整ってるよね。パーツが綺麗っていうか」
「……はい?」
「彼女の贔屓目抜いてもイケPよりかっこいいし、あの帰宅部の……峯沢くんにも負けてないレベルだと思うんだけどなー……なんだろ、眼鏡で隠れてんのかな?後は雰囲気で逃げられてたり?」
「はあ……褒められてるんですか?」
「え?褒めてるじゃんかっこいいねーって。あたし鍵介の顔好きだもん、勿論顔以外も大好きだけど」
鍵介はさらりと言われた咲耶の言葉にぽかん、と口を開いた。それからじわじわと頬に熱が集まってくるのを感じる。──いつもそうだ、この人は無自覚でこういうことをサラッと…!
「……もー…なんで先輩はいつも突然そういう事言うんですか…!反則ですよ」
「はあ?何が?」
きょとんとする咲耶の横で、鍵介は赤くなった顔を隠すように片手で顔を覆いはあ、と長い溜息をついた。
ちら、と咲耶を見てみれば何を言われてるのか分からない、と言うような表情をしている。
全く、無自覚なのが一番タチが悪い。
鍵介は既に咲耶の意識の外に飛ばされて、いつの間にか彼女の膝の上にあった眼鏡を奪い返して掛け直した。レンズ越しに見える世界は、やっぱり裸眼と何も変わらない。
「あ!あーあ、いつもの鍵介に戻っちゃった」
「何ですかその言い方、いつもの僕じゃ駄目なんですか?」
「そういうわけじゃないけどさあ……でも鍵介、裸眼でも充分かっこいいし眼鏡掛けてなくてもよくない?」
「嫌です」
きっぱりと断る鍵介に、えー?なんでよ、と咲耶は不満の声を漏らした。
きっと彼女のことだ、ただ単に裸眼の状態の鍵介だってかっこいいから皆に見せてやろう、とでも思ったんだろう。
鍵介は一つ、あることを思いついた。
心の中で一つ深呼吸をし、いつもの手癖で眼鏡の横を軽く押し上げた。
「──いいじゃないですか。そのかっこいい眼鏡外してる僕が見れるのは先輩の特権なんで、他の人には見せません」
かなりキザな台詞を吐いたな、と言うのは自覚している。けれども照れてることなんて知られたくないからわざと余裕ぶった笑みを零してみた。耳はほんのり赤くなっているだろうけど。
それでも、無自覚な彼女にはそれは随分なダメージになったようで。
「えっ……あ、う……そ、そう、そっか、ふーん……そ、それならしょうがない……のかな」
鍵介の言葉に目を大きく見開いた彼女はみるみるうちに顔を真っ赤にして、それから鍵介から目をそらし、地面の草を見ながらしどろもどろに頷いた。右手は髪をくるくると弄っているが、巻いては解いて巻いては解いて、これでは髪に変な跡がついてしまうのではないか。
仕返し成功、と心の中でガッツポーズをするのと同時に、咲耶のその反応に自分まで余計顔が赤くなってくる。
……しかし、これはもしかしたらキスができる雰囲気なんじゃないか。照れた彼女の腕を引いて引き寄せて、顎を軽く掴んでやれば──
「え──っ、!?ちょ、ちょっと何鍵介いきなり……!」
「い……いや、その…」
けれど、鍵介が実行できたのは最初の腕を引くという行程のみ。顎を掴もうと思ったが緊張か何か自分の腕が言うことを聞いてくれなかった。
腕を引かれた咲耶はそのまま鍵介に抱きとめられるような形になり。驚いた咲耶が顔を上げれば、当然頬を染めて挙動不審気味な鍵介と随分近い距離で目が合った。
「〜〜っ!や、えっと……キ、キスをしようとしたんですけど」
「……は!?」
「ちょっと……めちゃくちゃ緊張しますねこれ」
結局、そこから挽回も出来ず正直に述べたら咲耶からは予想通り素っ頓狂な声。けれどその、いつものような咲耶の声を聞けたおかげで少し落ち着いた。
「……すみません、僕本当こういうの慣れてなくて…」
「い、いや……あたしも分かんないし…人と付き合ったこととか無いし……」
「……すいません」
「あ、謝んないでよ変な雰囲気になんじゃん!えっと……キ、キスね。わかった」
自分が情けなくなり項垂れて謝る鍵介に慌てて声をかけると、咲耶はうう、と何事か唸ったあと、意を決したようにそっと目を閉じた。
「え……せ、先輩?」
「何してるんだとか聞かないでよ、めっちゃ恥ずかしいんだからこれ。……キス、するんじゃないの?」
「えっ……」
上擦った声を上げた鍵介に、もう早くしてよ!と咲耶は怒ったように声を荒らげた。閉じた瞳は緊張からか少し震えていて。
なんでこんな展開になったんだっけ、と一瞬頭の中を疑問が駆け巡ったが、今はそれどころじゃない。これ以上女の子にリードして貰う訳にいかないだろう。
鍵介はそっと微かに震える手で咲耶の頬に手をかけた。それから距離を縮めようとしたが一瞬考え、空いた手で己の眼鏡を外した。裸眼で見る咲耶は、やっぱりとっても可愛かった。
「っ……」
それからぐい、と距離を近づけ目を閉じて、恐る恐る唇を重ねた。──初めてじゃあないのに、どうしていつもこんなに緊張するんだろうか。
重ねた瞬間、びくりと咲耶の身体が跳ねた。それに驚き離れてしまいそうになったが、そこは少し耐え、もう暫く後に唇を離した。前に一瞬しか出来なかったことを教訓に、今度は少しだけ長めのキス。どうやらこれは成功したようだ。
目を開いてみれば、咲耶も同時に目を開いたのか少し潤んだ彼女の瞳が目に入った。彼女も鍵介が眼鏡を外していたことに気づき、少し固まったあと先ほどの鍵介のように両手で顔を覆った。
「……っ、もー!なんなの鍵介、それ反則すぎじゃない!?」
「えっ……な、何がですか!?」
「だってそれ、さっきの話……特権ってそういうこと!?」
「え……?」
「あーもう無自覚!やだ!そういうとこだよねほんと!!」
咲耶はそう一方的に捲し立てると自分の顔を隠すためか、はたまた「仕返し」か、鍵介にぎゅっと抱きつき首元に顔を埋めた。
「はっ……!?ちょ、咲耶先輩!?」
「うるさい!もうむり!キャパオーバー!」
「いや、それこっちの台詞……!何なんですか突然!!」
鍵介は抱きつかれた体勢のまま、どうしていいか分からず固まり。
咲耶は抱きついたはいいもののいつ離れればいいのか分からず固まり。
訳もわからずその体勢のまま二人で軽い口喧嘩。それは10分ほど続いたという。
──二人のその一部始終をマスコットのように小型化したμがきらきらした目で覗き見していて、またそれをLucidに嬉しそうに報告していたのは……当然、二人に知る由もない。