鍵介夢SS
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チャイムが鳴ってまだ数分と経ってない昼休み。
咲耶と鍵介はいつものように屋上で共に昼食を摂ろうとしていた。しかし、待ってください、と言う鍵介の声に止められてしまったが。
「ほら、先輩!今朝やっと完成したんです」
自分のプレイヤーを差し出して、鍵介は自慢げに話した。彼の黄色のプレイヤーには黒いイヤホンが巻き付けてある。
「ほんとに!?おめでとう!これで鍵介も堂々楽士デビューだね!」
鍵介がオスティナートの楽士として咲耶達の仲間になったのは丁度一ヶ月前。とうとう楽士の心臓である曲が完成したと言うのだ。
素直に賞賛の声を上げれば、鍵介は得意そうに口端を吊り上げた。気分がいいときの彼の癖だ。
「ええ、結構苦労したんですよこれ。昨日寝ずにずっと仕上げしてたんですから。あーあ、眠いなぁ」
「……なんか露骨じゃない?いやいいけどさ」
これ見よがしに欠伸をする鍵介に、咲耶は苦笑を零した。彼は決して悪い人では無いのだが、少し過剰というか、アピールが激しいというか……まあ、そこが彼の面白い所なのだが。
「兎に角、ほら。早く聴いてくださいよ」
「あっ……えっ、これあたしに?」
「差し出しておいて、それ以外だったらおかしいでしょう」
鍵介は軽く溜息をついてぐい、とプレイヤーを押し付けてきた。困惑しながら受け取れば鍵介はいつものように地面へ座り込み、ペットボトルの水を飲んだ。
「え……ちょ、ちょっと待ってよ!これ、今朝完成したんでしょ?それなのにあたしが聴いちゃっていいの?だって一番最初……」
「ええ、構いませんよ。ていうか、先輩に一番に聴かせたくて持ってきたんですけど?」
え、と鍵介の顔を見れば、いつもの皮肉っぽい笑みで咲耶に笑いかけてきた。
「先輩には色々お世話になってますし……カギPって名前も先輩から頂いたじゃないですか。これで先輩に一番に聴かせなかったら失礼じゃありませんか?僕は義理堅い後輩なので、こういう所はちゃんとしてるんですよ」
「あ、自分で言うのね。んん……そう言うなら遠慮なく」
鍵介の隣に座ってイヤホンを解き、耳に差す。周りの音が遠くなる。電源を点けて見てみれば、曲は一つしか入っていなかった。
「……ピーターパン、シンドローム」
ぽそり、と呟けば隣の気配が少し動いた気がした。自信満々に見せていたが、やっぱり緊張しているんだろうか。
再生ボタンを押せば、明るいメロディが耳に流れ込んできた。優しい、爽やかな雰囲気のイントロ。それから入ってくる、μの透明な声。
自分を特別だと言う、自信に溢れた歌詞。その自信に隠された誰かに認めてほしいと言う、心の奥の叫び。その感情を代弁して歌い上げるμ。
──この、叫びは。
(……鍵介か)
鍵介の心の叫び。胸に刺さるような、震わすような彼の思い。それは、咲耶の心の奥にも──。
やがて曲が終わり、イヤホンはまた静寂に戻った。
咲耶は静かにイヤホンを外し、同じようにプレイヤーに巻き付けた。
「っ、……どうでしたか?」
何でもないように聞いてきた鍵介の顔にはほんの少し、緊張が混ざっていた。
「……いいよ、これ。凄くいい。今まで私が聴いた曲の中で、一番」
「……!…まあ、当然ですよね。僕が昨日あんなに苦労して作ったんですから」
「うん。流石だよ鍵介。これ、ほんとに凄い」
「そうでしょ……って、なんて顔してんですか!」
鍵介が突然慌てだしたものだから、何事だろうと目を瞬かせればぽろり、と頬を伝うものがあった。
「え、……えっ、嘘」
伝ったものは涙で。まさか、知らないうちに泣いていたのだろうか。やばい、と乱暴に目を擦ろうとすれば鍵介にああ、ちょっと!と手首を掴まれ止められてしまった。
「そんな乱暴にしたら駄目でしょう!ええと、何処やったっけな……あ、あった」
ごそごそとズボンのポケットを探ったかと思えば、中からハンカチを取り出してそっと咲耶の頬を拭った。
「あ、ごめん……ありがと」
「別にいいですけど。……大丈夫ですか?」
「うん。や、なんかね、自分でもよく分かんなくて」
「……はあ?」
鍵介の呆れた声に、咲耶はあはは、と笑いを返した。その反応はごもっともだ。
「んー、やっぱ鍵介の曲が良すぎて感動しちゃったのかな」
「何ですか、それ。──ま、兎に角良かったです。記念すべき一人目のお客様には大好評だったみたいですし」
鍵介は咲耶の言葉に珍しく、安心したように優しく笑んだ。
「うんうん、ほんと最高だったよ!これならファンも大量獲得間違い無しだって、あたしが保証する!」
「先輩からのお墨付きが頂けたなら安心ですね。──直ぐに先輩の予想以上の結果を出すんで、期待しててください」
「──うんっ!期待してるよ、カギP!」
こうして、響鍵介のカギPとしての最初の活動は大成功に終わった。
それから暫くあと、楽曲発表後カギPは直ぐにメビウス内で人気のドールPに名を連ねることになる──
余談
「てか鍵介ってさ、結構紳士なんだね。さっきのハンカチ」
「えっ?……あっ」
「何、無意識だったの?」
「え、ええ……まあ……」
「へーっ、めっちゃジェントルマンじゃん!イケメンだよ鍵介!」
(……何で無意識であんなことしたんだ?僕…確かに前に雑誌で読んだけど……)
咲耶と鍵介はいつものように屋上で共に昼食を摂ろうとしていた。しかし、待ってください、と言う鍵介の声に止められてしまったが。
「ほら、先輩!今朝やっと完成したんです」
自分のプレイヤーを差し出して、鍵介は自慢げに話した。彼の黄色のプレイヤーには黒いイヤホンが巻き付けてある。
「ほんとに!?おめでとう!これで鍵介も堂々楽士デビューだね!」
鍵介がオスティナートの楽士として咲耶達の仲間になったのは丁度一ヶ月前。とうとう楽士の心臓である曲が完成したと言うのだ。
素直に賞賛の声を上げれば、鍵介は得意そうに口端を吊り上げた。気分がいいときの彼の癖だ。
「ええ、結構苦労したんですよこれ。昨日寝ずにずっと仕上げしてたんですから。あーあ、眠いなぁ」
「……なんか露骨じゃない?いやいいけどさ」
これ見よがしに欠伸をする鍵介に、咲耶は苦笑を零した。彼は決して悪い人では無いのだが、少し過剰というか、アピールが激しいというか……まあ、そこが彼の面白い所なのだが。
「兎に角、ほら。早く聴いてくださいよ」
「あっ……えっ、これあたしに?」
「差し出しておいて、それ以外だったらおかしいでしょう」
鍵介は軽く溜息をついてぐい、とプレイヤーを押し付けてきた。困惑しながら受け取れば鍵介はいつものように地面へ座り込み、ペットボトルの水を飲んだ。
「え……ちょ、ちょっと待ってよ!これ、今朝完成したんでしょ?それなのにあたしが聴いちゃっていいの?だって一番最初……」
「ええ、構いませんよ。ていうか、先輩に一番に聴かせたくて持ってきたんですけど?」
え、と鍵介の顔を見れば、いつもの皮肉っぽい笑みで咲耶に笑いかけてきた。
「先輩には色々お世話になってますし……カギPって名前も先輩から頂いたじゃないですか。これで先輩に一番に聴かせなかったら失礼じゃありませんか?僕は義理堅い後輩なので、こういう所はちゃんとしてるんですよ」
「あ、自分で言うのね。んん……そう言うなら遠慮なく」
鍵介の隣に座ってイヤホンを解き、耳に差す。周りの音が遠くなる。電源を点けて見てみれば、曲は一つしか入っていなかった。
「……ピーターパン、シンドローム」
ぽそり、と呟けば隣の気配が少し動いた気がした。自信満々に見せていたが、やっぱり緊張しているんだろうか。
再生ボタンを押せば、明るいメロディが耳に流れ込んできた。優しい、爽やかな雰囲気のイントロ。それから入ってくる、μの透明な声。
自分を特別だと言う、自信に溢れた歌詞。その自信に隠された誰かに認めてほしいと言う、心の奥の叫び。その感情を代弁して歌い上げるμ。
──この、叫びは。
(……鍵介か)
鍵介の心の叫び。胸に刺さるような、震わすような彼の思い。それは、咲耶の心の奥にも──。
やがて曲が終わり、イヤホンはまた静寂に戻った。
咲耶は静かにイヤホンを外し、同じようにプレイヤーに巻き付けた。
「っ、……どうでしたか?」
何でもないように聞いてきた鍵介の顔にはほんの少し、緊張が混ざっていた。
「……いいよ、これ。凄くいい。今まで私が聴いた曲の中で、一番」
「……!…まあ、当然ですよね。僕が昨日あんなに苦労して作ったんですから」
「うん。流石だよ鍵介。これ、ほんとに凄い」
「そうでしょ……って、なんて顔してんですか!」
鍵介が突然慌てだしたものだから、何事だろうと目を瞬かせればぽろり、と頬を伝うものがあった。
「え、……えっ、嘘」
伝ったものは涙で。まさか、知らないうちに泣いていたのだろうか。やばい、と乱暴に目を擦ろうとすれば鍵介にああ、ちょっと!と手首を掴まれ止められてしまった。
「そんな乱暴にしたら駄目でしょう!ええと、何処やったっけな……あ、あった」
ごそごそとズボンのポケットを探ったかと思えば、中からハンカチを取り出してそっと咲耶の頬を拭った。
「あ、ごめん……ありがと」
「別にいいですけど。……大丈夫ですか?」
「うん。や、なんかね、自分でもよく分かんなくて」
「……はあ?」
鍵介の呆れた声に、咲耶はあはは、と笑いを返した。その反応はごもっともだ。
「んー、やっぱ鍵介の曲が良すぎて感動しちゃったのかな」
「何ですか、それ。──ま、兎に角良かったです。記念すべき一人目のお客様には大好評だったみたいですし」
鍵介は咲耶の言葉に珍しく、安心したように優しく笑んだ。
「うんうん、ほんと最高だったよ!これならファンも大量獲得間違い無しだって、あたしが保証する!」
「先輩からのお墨付きが頂けたなら安心ですね。──直ぐに先輩の予想以上の結果を出すんで、期待しててください」
「──うんっ!期待してるよ、カギP!」
こうして、響鍵介のカギPとしての最初の活動は大成功に終わった。
それから暫くあと、楽曲発表後カギPは直ぐにメビウス内で人気のドールPに名を連ねることになる──
余談
「てか鍵介ってさ、結構紳士なんだね。さっきのハンカチ」
「えっ?……あっ」
「何、無意識だったの?」
「え、ええ……まあ……」
「へーっ、めっちゃジェントルマンじゃん!イケメンだよ鍵介!」
(……何で無意識であんなことしたんだ?僕…確かに前に雑誌で読んだけど……)