そして天使はいなくなった
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
私は今、男性天使と一緒にケーキを食べている。
というのも先週おでかけの約束をし、お互いの仕事休みが今日だったのだ。
離れた村にあるお店だけれど、美味しい洋菓子屋さんと噂通りの味だ。紅茶も美味しく、その茶葉が販売されていたので何種類か購入したほど。
今回のおでかけは、向こうは私を何故か好ましく思い誘ってくれたのだろうけれど、会話をするにつれガッカリされないか不安になる。
かといって恋愛として好いてほしいわけでもないのに、何を臆病になっているのだろう。
目の前にいる相手を見ると、私に笑いかけてくれている。それが嬉しい反面、どこか寂しい。
彼も漫画が好きだというのでお喋り自体は楽しいのだけれど。
夕方になり、そろそろ帰ろうとお店を出て、散歩がてらに村を散策する。
「美味しそうだね。食べる?」
彼の視線の先には、果物屋さんのリンゴ飴が並べられていた。
そういえば前に、Bさまが私の好きなキャラを当てた事があった。その時にリンゴ飴をご馳走する約束をしたんだっけ…。
「ごめん。お腹空いてなかったかな」
リンゴ飴を見つめたまま黙り込んでいた私を見て、申し訳なさそうに言う。むしろこちらが申し訳ないくらいなのに。
「いえ!謝らないでください。…そうですね。じゃあ私は、あのリンゴジュースにします」
「買ってくるよ。僕は食べようかな。向こうの広場でどこか座って待ってて!」
「ありがとうございます」
先に広場へ行き、ベンチがひとつ空いていたのでそこに座る。
周りを見渡すと子どもの遊ぶ姿はないが、何人かがベンチに座りゆっくりと過ごしている。
のんびりとした時間が流れているようで気持ちが良く、自然と目を閉じた。
一息つくと体が小さく揺れ始め叫び声が聞こえる。揺れは徐々に大きくなり、急に周辺の建物が壊れかと思えば魔獣が姿を現した。
天使たちは羽を広げ慌ただしく飛び立っていく。私も逃げようとしたが、体が揺れるのもあり踏ん張れず、飛ぶのは諦めて魔獣から離れるように走った。
けれど壊れた建物が行く手を阻み、これ以上進めず立ち止まる。
…もしも、私の羽が皆と同じであったなら。
地面が私とは違う影で暗くなる。
彼は無事逃げられたかなとか、Bさまに約束したリンゴ飴をご馳走できなかったなとか、やけに冷静に考えていた。
後ろを向くと、大きな口が私に近づいている。
最後にもう一度Bさまと話したかった。
暗い視界が急に明るくなり、思い浮かべていた顔が近づき足が浮いた。魔獣の倒れ込む音が大きく響く。呆然としていると、頭上から優しい声が聞こえた。
「もう心配ないですよ」
丸い目が私を見つめている。
「Bさま……」
相変わらず顔からは想像できない筋肉質な腕に抱えられ、厚い胸板に耳が当たっている。
以前に助けられた時と比べ、恥ずかしさよりも何倍もの安心感が込み上げた。
「ありがとうございますっ…!」
Bさまの笑みに気が緩み、涙がでそうになる。
魔獣から離れたところに移動し、周りの天使たちがBさまへ称賛を贈る声を聞きながら、開けた場所におろしてもらう。
すると称賛の声に交じって泣き声が聞こえ、それが徐々にこちらへと近づき大きくなる。
「うわあああ!良かったぁぁあ!」
男性天使が涙を流しながら私に駆け寄ってきた。
「ごめん!僕、助けられなくてっ」
「…そんな。あなたが泣かなくても」
なんだか申し訳ないのと、彼の勢いで自分の涙が引っ込むくらいだった。落ち着かせるように背中をさする。
「本当にごめん。僕がリンゴ飴食べようって言ったから…」
「あなたのせいじゃないですよ」
リンゴジュースが半分ほどこぼれた紙袋を見つめ、彼は悔しそうに言う。
この人はなんて天使らしいんだろう。真っ直ぐで、純粋で。
「Bさま。ありがとうございます!」
彼は涙を流しBさまへ言う。私ももう一度お礼を伝えた。
「本当にありがとうございます。Bさまがいなければ今頃どうなっていたか…」
Bさまは「いえいえ」と言うと「それじゃ、わたしはこれで」と続け、忙しそうに飛んでいく。
助けられた時の感触が残る耳に触れ、飛んでいった方角を見つめた。
あの後は彼に家まで送ってもらった。怪我もなく、いつものように過ごしていると呼び鈴が鳴る。
こんな時間に誰だろう。まさかBさま?
今夜は約束をしていないけれど、胸の高鳴りをおさえ扉を開けるとBさまが立っていた。
「Bさま!今日は本当にありがとうございました!」
「いえ。あなたが無事でなによりです」
私から視線を外し黙り込む。気のせいかどこか真剣な顔をしている。
「この間は失礼しました」
普段とは違う、Bさまの少し静かな声が響いた。
「えと…なんの事でしょうか」
「頭に触れるなど、やはり軽率でしたね」
「それは嫌じゃないとお伝えしましたが…」
「いえいえ。そういう事じゃなくて」
強められた声に心臓が跳ねるようだった。
「こうしてあなたとお話するのは楽しいです。……ですが、もう辞めにしましょう」
続けられた言葉に頭が追い付かない。
「………え?」
「あなたが構わないなら漫画の貸し借りは続けますし、感想はお昼休みなどにお話しましょう」
私が気の抜けた返事をすると、Bさまはさっきと同じように静かな声で話した。
「今日はそれを伝えにきたんです。…それじゃ、おやすみなさい」
声が出ない。何か言おうとしたけれど、乾いた喉に言葉が張り付いた。
Bさまも返事を待つことなく飛んでいってしまう。
喉がつっかえたまま扉を閉め、部屋に戻りしゃがみこむ。口の中が塩辛い。鼻を啜る音が部屋に響いた。
というのも先週おでかけの約束をし、お互いの仕事休みが今日だったのだ。
離れた村にあるお店だけれど、美味しい洋菓子屋さんと噂通りの味だ。紅茶も美味しく、その茶葉が販売されていたので何種類か購入したほど。
今回のおでかけは、向こうは私を何故か好ましく思い誘ってくれたのだろうけれど、会話をするにつれガッカリされないか不安になる。
かといって恋愛として好いてほしいわけでもないのに、何を臆病になっているのだろう。
目の前にいる相手を見ると、私に笑いかけてくれている。それが嬉しい反面、どこか寂しい。
彼も漫画が好きだというのでお喋り自体は楽しいのだけれど。
夕方になり、そろそろ帰ろうとお店を出て、散歩がてらに村を散策する。
「美味しそうだね。食べる?」
彼の視線の先には、果物屋さんのリンゴ飴が並べられていた。
そういえば前に、Bさまが私の好きなキャラを当てた事があった。その時にリンゴ飴をご馳走する約束をしたんだっけ…。
「ごめん。お腹空いてなかったかな」
リンゴ飴を見つめたまま黙り込んでいた私を見て、申し訳なさそうに言う。むしろこちらが申し訳ないくらいなのに。
「いえ!謝らないでください。…そうですね。じゃあ私は、あのリンゴジュースにします」
「買ってくるよ。僕は食べようかな。向こうの広場でどこか座って待ってて!」
「ありがとうございます」
先に広場へ行き、ベンチがひとつ空いていたのでそこに座る。
周りを見渡すと子どもの遊ぶ姿はないが、何人かがベンチに座りゆっくりと過ごしている。
のんびりとした時間が流れているようで気持ちが良く、自然と目を閉じた。
一息つくと体が小さく揺れ始め叫び声が聞こえる。揺れは徐々に大きくなり、急に周辺の建物が壊れかと思えば魔獣が姿を現した。
天使たちは羽を広げ慌ただしく飛び立っていく。私も逃げようとしたが、体が揺れるのもあり踏ん張れず、飛ぶのは諦めて魔獣から離れるように走った。
けれど壊れた建物が行く手を阻み、これ以上進めず立ち止まる。
…もしも、私の羽が皆と同じであったなら。
地面が私とは違う影で暗くなる。
彼は無事逃げられたかなとか、Bさまに約束したリンゴ飴をご馳走できなかったなとか、やけに冷静に考えていた。
後ろを向くと、大きな口が私に近づいている。
最後にもう一度Bさまと話したかった。
暗い視界が急に明るくなり、思い浮かべていた顔が近づき足が浮いた。魔獣の倒れ込む音が大きく響く。呆然としていると、頭上から優しい声が聞こえた。
「もう心配ないですよ」
丸い目が私を見つめている。
「Bさま……」
相変わらず顔からは想像できない筋肉質な腕に抱えられ、厚い胸板に耳が当たっている。
以前に助けられた時と比べ、恥ずかしさよりも何倍もの安心感が込み上げた。
「ありがとうございますっ…!」
Bさまの笑みに気が緩み、涙がでそうになる。
魔獣から離れたところに移動し、周りの天使たちがBさまへ称賛を贈る声を聞きながら、開けた場所におろしてもらう。
すると称賛の声に交じって泣き声が聞こえ、それが徐々にこちらへと近づき大きくなる。
「うわあああ!良かったぁぁあ!」
男性天使が涙を流しながら私に駆け寄ってきた。
「ごめん!僕、助けられなくてっ」
「…そんな。あなたが泣かなくても」
なんだか申し訳ないのと、彼の勢いで自分の涙が引っ込むくらいだった。落ち着かせるように背中をさする。
「本当にごめん。僕がリンゴ飴食べようって言ったから…」
「あなたのせいじゃないですよ」
リンゴジュースが半分ほどこぼれた紙袋を見つめ、彼は悔しそうに言う。
この人はなんて天使らしいんだろう。真っ直ぐで、純粋で。
「Bさま。ありがとうございます!」
彼は涙を流しBさまへ言う。私ももう一度お礼を伝えた。
「本当にありがとうございます。Bさまがいなければ今頃どうなっていたか…」
Bさまは「いえいえ」と言うと「それじゃ、わたしはこれで」と続け、忙しそうに飛んでいく。
助けられた時の感触が残る耳に触れ、飛んでいった方角を見つめた。
あの後は彼に家まで送ってもらった。怪我もなく、いつものように過ごしていると呼び鈴が鳴る。
こんな時間に誰だろう。まさかBさま?
今夜は約束をしていないけれど、胸の高鳴りをおさえ扉を開けるとBさまが立っていた。
「Bさま!今日は本当にありがとうございました!」
「いえ。あなたが無事でなによりです」
私から視線を外し黙り込む。気のせいかどこか真剣な顔をしている。
「この間は失礼しました」
普段とは違う、Bさまの少し静かな声が響いた。
「えと…なんの事でしょうか」
「頭に触れるなど、やはり軽率でしたね」
「それは嫌じゃないとお伝えしましたが…」
「いえいえ。そういう事じゃなくて」
強められた声に心臓が跳ねるようだった。
「こうしてあなたとお話するのは楽しいです。……ですが、もう辞めにしましょう」
続けられた言葉に頭が追い付かない。
「………え?」
「あなたが構わないなら漫画の貸し借りは続けますし、感想はお昼休みなどにお話しましょう」
私が気の抜けた返事をすると、Bさまはさっきと同じように静かな声で話した。
「今日はそれを伝えにきたんです。…それじゃ、おやすみなさい」
声が出ない。何か言おうとしたけれど、乾いた喉に言葉が張り付いた。
Bさまも返事を待つことなく飛んでいってしまう。
喉がつっかえたまま扉を閉め、部屋に戻りしゃがみこむ。口の中が塩辛い。鼻を啜る音が部屋に響いた。