そして天使はいなくなった
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あれから少しばかり気持ちが落ち着き、私は漫画の貸し借りは続けようと決めた。
次の日Bさまにその事を伝えると、いつものように漫画を届けに来てくれたが本当にすぐに帰っていった。
寂しい。どうして。怒らせてしまったのだろうか。
ぐるぐると言葉が頭を駆け巡り、不安で胸が苦しくなっていった。
数日が立ち、漫画を返す為にBさまへと話しかけた。
Bさまの態度は今まで通りで、そっけないわけじゃない。
「他に読みたいものはありますか」
「あと、この前仰っていた小説が気になっていて。お借りしてもいいですか?」
「推理小説ですね!もちろんです」
前までのような笑みとは違う気がするけれど、他の天使たちと同じように接してくれている。
元々仕事以外の話はしてこなかったのだし、Bさまは何も変わっていない。
なのに何故こんなにも悲しいのだろう。
プロジェクトは終わった。Bさまは普段から忙しく周りに天使たちも沢山いる。
貸し借りの約束だってなかなかできないのに、休憩時間だろうと感想なんて話す暇もきっとない。
食堂へ行くと、珍しくBさまの姿が見えた。
天使数人とお昼を食べるところで、前にプロジェクトで一緒だった女性天使もいる。彼女とはたまにお昼を一緒にする仲になっていた。
気付かれないよう反対側を向き席を探す。けれど、私を見つけた彼女により呼び止められる。
「隣座ってよ」
無邪気な顔で言われ、断れるはずもなく。「失礼します」と会釈をし彼女の隣へと座った。
「よろしくー。あまり見ない人だね」
「前のプロジェクトで一緒だったの!ね。Bさま」
「ええ。彼女のアイディアはヤバでした。先程ぶりですね」
斜め前に座るBさまと目が合いドキリとする。
さっきも話したというのに。
会話もそこそこに食べ進め、Bさまが「お水入れてきます」と言い席を立つ。
すると私の前に座っている男性天使が、興味深そうに私を見つめてきた。
「…君ってもしかして、Bさまと漫画の貸し借りしてる人?」
「そうですけど…」
「やっぱり!恋人いるの?」
突然の質問に驚き黙ってしまった私の代わりに、女性天使が声をあげる。
「あんた失礼!」
「だってBさまが…。ねえ、誰?」
Bさまが?一体なんの話だろうか。
「私は別に…」
「いい加減にしなさいよ!」
二人のやりとりに、私は乾いた笑みを浮かべるのが精一杯だった。
「賑やかですね」
戻ってきたBさまの声に、男性天使はいたずらに笑うと違う話題をし始めた。
『だってBさまが』。おそらく、この人と私の話をしたのだろう。
もしかして本当は貸し借り自体をやめたかったとか…。それとも玄関先のお喋りが嫌で、それで感想はやめる事にしたのかな。
じゃあ恋人のくだりは…私に恋人がいれば、そこから相談できるから?
…それならそう言ってくれればいいのに。どうして。
「具合でも悪いですか」
ハッと顔をあげるとBさまに見つめられていた。
「…いえ、そんなことは」
「違うのBさま。あいつがさっき変な事言ったからだと思う」
女性天使はそう言い、男性天使を睨みつける。
「お、俺は別に…」
「彼女に何を?」
しまった。私のせいで空気が悪くなってる。
トレイを持ち立ち上がる。
「っ彼は悪くないです!すみません、私もう行きますね。ありがとうございました」
Bさまたちの顔も見ず、勢いに任せその場を離れた。
食堂を出てから、足は資料室へと向かっていた。
相変わらずここは人がいない。椅子に座り目を閉じる。
静かで日差しが暖かい。心が落ち着きを取り戻していく。
午後の仕事まで時間はまだある。少しお昼寝でもして休んでいこう。
「やっぱりここでした」
まどろみでモヤがかっていた脳は、一瞬にして活動を始める。まさか探しにくるなんて。
Bさまは棚の横に立ったまま、静かに口を開く。
「嫌な思いをさせましたね。すみません」
「いえ、私が…すみません」
ああもう。どうして私はこうなのか。あの時席を立たずにいれば、いや笑顔で会話をしていれば。
沈黙の中、聞こえたのは小さな声だった。
「……距離感がわからなかったのです」
Bさまは少し下を見つめ言葉を続ける。
「恋人のいる女性と夜間に会うのはいけないのではないかと」
待って。恋人?Bさまは私に恋人がいると思って、だから男性天使はあんな事を。
「前に、あなたの自宅前で感想を言い合っている事を話したんです。そしたら」
「あの!」
話を続けようとするBさまには悪いが、言葉を遮らずにはいられなかった。
「私、恋人いないです」
顔があげられ、丸い目とかち合う。
「……。それ、本当ですか」
「本当です!」
「魔獣に襲われた時、一緒にいた彼は…」
「遊びに行ってたんです。付き合っているわけではありません」
Bさまの視線は斜め下を見つめてから、急に視線が私の方に動いた。
「わたしの早とちりでしたか」
「え、と。…そうですね」
「好きなんですか。彼のこと」
どこか張りつめる空気に鼓動が速くなる。
「彼は、友人としての好きです」
Bさまへ言い聞かせるかのように、ゆっくりと言葉にした。
むず痒いように張りつめていた空気が、軽くなるのがわかった。
「…………。リンゴ飴、美味しかったですか」
「あ…私は食べなかったのでわかりません」
「どうしてです。好きなんですよね」
不思議そうに見つめられる。
「覚えていないかもしれませんが、Bさまと約束していたので…。なんとなく、とっておきたかったんです」
気恥ずかしくて目をそらしながら話した。
返事がないので様子を窺うと、Bさまの体が小刻みに震えている。
「あの、Bさま?」
「…………。ちょっとなにか、妙な気分です」
そう言いながら顔の前に手を出し距離を取られたかと思えば、その体勢のまま話を続ける。
「あの。腕を回して良いですか」
「え?」
「許可をいただかないといけないと思いまして」
腕を回す、という言葉に頭が追い付かず「どうぞ…?」と気の抜けた声がでた。
両腕が伸ばされ、羽ごと包み込まれる。
抱き抱えられることはあったけれど、こうされるのは初めてで。頬に熱が集中し、鼓動の速さを気づかれないか心配になる。
力強くて少し苦しいけれど、Bさまの優しさが伝わってくるみたいだ。
自分の腕をどうしていいのかわからず、宙をさ迷わせてからBさまの背中に触れる。
抱き締め返すのはなんだかくすぐったくて温かくて、それでいて心地よい。
時おりBさまが小さく顔を動かすので、肌にあたるBさまの耳について、ここは筋肉がないし柔らかいんだなと、これ以上胸が高鳴らないように考えていた。
次の日Bさまにその事を伝えると、いつものように漫画を届けに来てくれたが本当にすぐに帰っていった。
寂しい。どうして。怒らせてしまったのだろうか。
ぐるぐると言葉が頭を駆け巡り、不安で胸が苦しくなっていった。
数日が立ち、漫画を返す為にBさまへと話しかけた。
Bさまの態度は今まで通りで、そっけないわけじゃない。
「他に読みたいものはありますか」
「あと、この前仰っていた小説が気になっていて。お借りしてもいいですか?」
「推理小説ですね!もちろんです」
前までのような笑みとは違う気がするけれど、他の天使たちと同じように接してくれている。
元々仕事以外の話はしてこなかったのだし、Bさまは何も変わっていない。
なのに何故こんなにも悲しいのだろう。
プロジェクトは終わった。Bさまは普段から忙しく周りに天使たちも沢山いる。
貸し借りの約束だってなかなかできないのに、休憩時間だろうと感想なんて話す暇もきっとない。
食堂へ行くと、珍しくBさまの姿が見えた。
天使数人とお昼を食べるところで、前にプロジェクトで一緒だった女性天使もいる。彼女とはたまにお昼を一緒にする仲になっていた。
気付かれないよう反対側を向き席を探す。けれど、私を見つけた彼女により呼び止められる。
「隣座ってよ」
無邪気な顔で言われ、断れるはずもなく。「失礼します」と会釈をし彼女の隣へと座った。
「よろしくー。あまり見ない人だね」
「前のプロジェクトで一緒だったの!ね。Bさま」
「ええ。彼女のアイディアはヤバでした。先程ぶりですね」
斜め前に座るBさまと目が合いドキリとする。
さっきも話したというのに。
会話もそこそこに食べ進め、Bさまが「お水入れてきます」と言い席を立つ。
すると私の前に座っている男性天使が、興味深そうに私を見つめてきた。
「…君ってもしかして、Bさまと漫画の貸し借りしてる人?」
「そうですけど…」
「やっぱり!恋人いるの?」
突然の質問に驚き黙ってしまった私の代わりに、女性天使が声をあげる。
「あんた失礼!」
「だってBさまが…。ねえ、誰?」
Bさまが?一体なんの話だろうか。
「私は別に…」
「いい加減にしなさいよ!」
二人のやりとりに、私は乾いた笑みを浮かべるのが精一杯だった。
「賑やかですね」
戻ってきたBさまの声に、男性天使はいたずらに笑うと違う話題をし始めた。
『だってBさまが』。おそらく、この人と私の話をしたのだろう。
もしかして本当は貸し借り自体をやめたかったとか…。それとも玄関先のお喋りが嫌で、それで感想はやめる事にしたのかな。
じゃあ恋人のくだりは…私に恋人がいれば、そこから相談できるから?
…それならそう言ってくれればいいのに。どうして。
「具合でも悪いですか」
ハッと顔をあげるとBさまに見つめられていた。
「…いえ、そんなことは」
「違うのBさま。あいつがさっき変な事言ったからだと思う」
女性天使はそう言い、男性天使を睨みつける。
「お、俺は別に…」
「彼女に何を?」
しまった。私のせいで空気が悪くなってる。
トレイを持ち立ち上がる。
「っ彼は悪くないです!すみません、私もう行きますね。ありがとうございました」
Bさまたちの顔も見ず、勢いに任せその場を離れた。
食堂を出てから、足は資料室へと向かっていた。
相変わらずここは人がいない。椅子に座り目を閉じる。
静かで日差しが暖かい。心が落ち着きを取り戻していく。
午後の仕事まで時間はまだある。少しお昼寝でもして休んでいこう。
「やっぱりここでした」
まどろみでモヤがかっていた脳は、一瞬にして活動を始める。まさか探しにくるなんて。
Bさまは棚の横に立ったまま、静かに口を開く。
「嫌な思いをさせましたね。すみません」
「いえ、私が…すみません」
ああもう。どうして私はこうなのか。あの時席を立たずにいれば、いや笑顔で会話をしていれば。
沈黙の中、聞こえたのは小さな声だった。
「……距離感がわからなかったのです」
Bさまは少し下を見つめ言葉を続ける。
「恋人のいる女性と夜間に会うのはいけないのではないかと」
待って。恋人?Bさまは私に恋人がいると思って、だから男性天使はあんな事を。
「前に、あなたの自宅前で感想を言い合っている事を話したんです。そしたら」
「あの!」
話を続けようとするBさまには悪いが、言葉を遮らずにはいられなかった。
「私、恋人いないです」
顔があげられ、丸い目とかち合う。
「……。それ、本当ですか」
「本当です!」
「魔獣に襲われた時、一緒にいた彼は…」
「遊びに行ってたんです。付き合っているわけではありません」
Bさまの視線は斜め下を見つめてから、急に視線が私の方に動いた。
「わたしの早とちりでしたか」
「え、と。…そうですね」
「好きなんですか。彼のこと」
どこか張りつめる空気に鼓動が速くなる。
「彼は、友人としての好きです」
Bさまへ言い聞かせるかのように、ゆっくりと言葉にした。
むず痒いように張りつめていた空気が、軽くなるのがわかった。
「…………。リンゴ飴、美味しかったですか」
「あ…私は食べなかったのでわかりません」
「どうしてです。好きなんですよね」
不思議そうに見つめられる。
「覚えていないかもしれませんが、Bさまと約束していたので…。なんとなく、とっておきたかったんです」
気恥ずかしくて目をそらしながら話した。
返事がないので様子を窺うと、Bさまの体が小刻みに震えている。
「あの、Bさま?」
「…………。ちょっとなにか、妙な気分です」
そう言いながら顔の前に手を出し距離を取られたかと思えば、その体勢のまま話を続ける。
「あの。腕を回して良いですか」
「え?」
「許可をいただかないといけないと思いまして」
腕を回す、という言葉に頭が追い付かず「どうぞ…?」と気の抜けた声がでた。
両腕が伸ばされ、羽ごと包み込まれる。
抱き抱えられることはあったけれど、こうされるのは初めてで。頬に熱が集中し、鼓動の速さを気づかれないか心配になる。
力強くて少し苦しいけれど、Bさまの優しさが伝わってくるみたいだ。
自分の腕をどうしていいのかわからず、宙をさ迷わせてからBさまの背中に触れる。
抱き締め返すのはなんだかくすぐったくて温かくて、それでいて心地よい。
時おりBさまが小さく顔を動かすので、肌にあたるBさまの耳について、ここは筋肉がないし柔らかいんだなと、これ以上胸が高鳴らないように考えていた。