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知らぬ間に、家の中が侵略されている
お気に入りの花柄マグカップが見当たらず、代わりにと言わんばかりに置かれていたのは青一色のなんだか高そうなガラスのコップで
明るい色のカーテンは水色の落ち着いた物へと変わり、ソファに並んだクッションもオレンジから濃紺の物へと変貌を遂げている
しまいには部屋に飾られていた赤い薔薇の花が、どういう訳か真っ青になっていて
どこを見渡しても家中、青、青、青 自分の顔色までもが青くなっていくのがよく分かった
「……バージルさん、これは一体……」
「どうした」
帰宅した我が家に当然のように居る人物へと声を掛ける
読書中の彼はこちらに目を向けないが、私の言わんとしていることはよく分かっているはずだ
分かっていて、どうしたと返してくる彼はこの状況を作り上げた確信犯というか張本人というかなんでここにいるのだろう
「あの勝手に部屋の模様替えするのはやめて欲しいんですけど……」
「より快適に過ごせるようにしてやったまでだ なにか不満があるのか」
「不満とかそれ以前の問題で……それにここまでがらりと雰囲気変えられると落ち着かないというか、なんで一式青なんですか」
「色彩心理学的に青は鎮静効果があると言われているはずだが、落ち着かないか」
「いや落ち着きはしますけれど 逆に落ち着き過ぎて異常事態なのに妙に頭が冷静になってしまいますよ」
「よかったな」
「よくないです」
とうとう我が家にまで手を出し始めた彼を出来れば通報したい しかし命の恩人という建前上、あまり強く彼を拒否出来ないでいる
そんな小心者な自分に溜め息をこぼせば疲れているのかと心配される始末
たしかに、疲れてはいる
帰宅して立ち尽くしたままの私に座らないのかと視線を向けられたが、明らかに空けられたそのソファのスペースに腰を降ろす気にはなれなかった
本当に、なぜこのような状況になっているのか
ない頭を捻り必死に考えようとして、しかしそれは目の前の原因である人物によって毎度遮られてしまう
「今日はいつもより帰りが遅かったな 残業か?」
「え、まぁ……ちょっと店じまいが遅くなってしまって」
「だったら、疲れているんじゃないのか」
「いや疲れてはいますけど……」
と聞かれるままに答えれば、彼はすっと腰を上げてキッチンへと向かった
コーヒーでいいか?とおそろしく自然に聞いてくる彼に追いつかない頭でええと、となんの返事にもならない返事をする
慣れた手つきで私の分のコーヒーを私の家のキッチンで淹れる彼に、やはりなんと返していいのかわからなかった
2017.11.16
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不法侵入系バージルと人生に疲れてる系女子
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