What the Hell
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「……ほんとに入れ替わっちゃったみたいだね」
「……みたいだな」
リビングのソファで寝間着姿のまま、ふたりは途方に暮れていた
「あの、原因とか分かる?」
「確実に、あの酒じゃないのか」
「あ、やっぱりそう思う?」
昨日の今日で何か変わった事があったとしたら、あの悪魔の酒を飲んだということしかふたりに共通するものはない
ニナの姿をしたバージルは深い溜め息を吐いて、あからさまに落ち込んでいた バージルの姿をしたニナはそれを見て何とも言えない顔をする
「そんなに落ち込まなくても、ちょっとすれば元に戻るんじゃないの?」
「……そうでないと困る というかお前、俺の姿でそんな顔をするな気色悪い」
バージルは自分の姿でしおらしい顔をするニナをきつく睨む
そうでなくても先程からニナの口調で話す自分の姿に鳥肌が止まらなかった しかしバージルに文句を言われても、ニナは困り果てて話すしかない
「そんなこと言われても というかバージルこそあたしの姿で恐い顔しないでくれない? なんか笑えるから」
「何も笑えないだろうがこの状況! 頼むから、俺の姿であまり馬鹿な発言はするな……」
「ちょっとなにそれ! さっきから言いたい放題言ってくれてるけど、あたしっていつもそんなに気色悪い訳!?」
「煩い、分かった、もう喋るな 本気で気色が悪い!」
「いや、ちょっと! あたしの姿で命令しないでよ!」
ほとんどいつもと変わらない言い合いに発展するふたり しかしこんな事していても仕方がないと思い、バージルはソファから立ち上がった
「……とりあえず、最悪時間が経っても戻らない場合は、あの酒を造った奴に問い質さなければ」
「じゃあダンテが帰って来るの待ってるしかないね あれ貰ってきたのはダンテだし」
それを聞いてバージルはぴきりと固まる
つまり、この有り様をダンテにも見せなければならないという事か
それは……出来れば断固拒否したい 不本意過ぎる 愚弟の反応を想像しただけで俺の中の何かが崩壊してしまいそうだ
バージルはその場で頭を抱え込んでしまいそうになるのを、なんとか堪える
そんなバージルの葛藤など知る由もないニナは、のんびりと構えてソファに寝そべった
「まぁ、とりあえずダンテが帰って来たらまた考えるってことで おやすみ~」
二度寝の体制に入った自分の姿をしたニナを見やり、バージルは深く溜め息を吐いた
これでは自分というより、愚弟がひとり増えたような錯覚を覚える 髪を下ろしたままでいる姿だと、本気でダンテと見間違える 俺の身体なのに
「寝るな、いつまでもそんな姿でいるな! 早く着替えて来い、あと髪を上げろ」
「ええ~、面倒臭いな まだ眠いんだけど」
「俺の身体で眠い訳がない、錯覚だ いいから早く着替えて来い」
ソファに寝そべるニナをばしりと叩くが、かえってこちらの手が痛んでしまった バージルは眉を顰めると、赤くなってしまった手を見つめる
「ちっ、なんて使えない身体なんだ……!」
「ちょ、ヒトの身体なに勝手に痛ませてるの! バージルは今あたしの身体なんだから大して力出ないに決まってるでしょう!」
「ああ、そのようだな オマケに視界は悪いし身体はだるいし、最悪な気分だ」
「待って、それ言い過ぎ! そりゃあ、あんたの身体に比べたらあたしの身体なんて錆び付いた自転車みたいなものかもしれないけどさ!」
「よく分からん例えだが、とにかく俺の姿で情けない真似は許さん 早く着替えて来い」
促して、バージルはニナを睨み付ける
「……なんか、自分に睨まれるとか変な感じ しかもあたしって睨まれても全然恐くないんだね」
「……」
恐くないと言われ、バージルは思いっきり肩を落としそうになるのも、なんとか堪えた
ふたり共適当に着替えを済ませ、リビングで何をするでもなく暇を持て余していた
相変わらずニナは髪を下げたままでいたがバージルもいちいち注意するのが面倒になってきていたので、そこはもう勝手にさせていた
じっとしているのが退屈なのか、先程からずっとそわそわと窓から外を眺めている バージルはそんな自分の姿をしたニナを見やり、無駄に苛立つ
「おい」
「……ん? なに?」
「その挙動不審を止めろ」
「え? あ、ああ、はい」
「……」
「(…キョロキョロ)」
「……」
「(…ソワソワ)」
「……だから止めろと言っているだろうが!」
手近にあったクッションを掴むと、バージルは怒号を上げながら自分の姿をしたニナ目掛けて投げる
それにうわっ、と驚いた声を上げたが、難なく飛んできたクッションを反射的に掴んだ
「ちょ、ちょっと、なにいきなり怒ってるの、」
「俺の姿で挙動不審は止めろ、見苦しい!」
「み、見苦しいって、だからあたしっていつもそんなに見苦しいの?」
「お前の姿で挙動がおかしいのと、俺の姿で挙動がおかしいのとでは見え方が違い過ぎるだろう! 察しろ!」
「さ、察しろって言われても」
ニナはほとほと困り果てた顔で肩を竦める そんな様子にも、バージルの苛立ちは倍増するばかりだった はあ、と息を吐いてニナはバージルを見返す
「あのさ、視界に入ってそんなに苛々するぐらいなら、ダンテ戻って来るまでお互い姿が見えない所に居たほうがいいんじゃないの?」
「この家の中でか」
「いや、あたしは外出てきてもいいし なんならちょっとその辺散歩してきたいな」
「! それは絶対に止めろ! 俺の姿で外になんか出るな!」
バージルの言葉にニナは眉を寄せてむっとした
「なにそれ、中身があたしだと人目に晒す事すら恥ずかしいって訳? いいよ、ちょっとおしゃれでもして人通りの多いとこでも散歩してくるから」
「!? お前は馬鹿か!? __おい、出ていくな、止めろ!」
出て行こうとするニナ(バージル)の肩を掴んで、引き止めるバージル
しかしニナの身体で自分の身体を止められる程の力がでる筈もなく、振り切られそうになる
それでもバージルは引き下がらずに、ついには自分の横腹目掛けて拳をめり込ませた
「いたっ! ……って痛くない」
「! っっ……!」
けれど、結局ニナの拳では自分の身体にダメージなど与えられない 逆にニナの身体が痛んだだけだった
「!? ちょ、なにしてるのバージル!?」
ニナは手を押さえて、その場にがっくりと膝を突くバージル(ニナ)を慌てて起こす
「あんた、あたしの身体なんだからもうちょっと大事に扱ってくださいよ!」
「……本当に力の出ない身体だな」
「いや、単にバージルの身体が頑丈過ぎるだけだと思うけど、てか、ああ~、手の甲赤くなってる……」
ニナは赤くなってしまっているバージルの手、もとい自分の手を両手で包み込むと、ごくごく自然にふうっと息を吹き掛ける
するとバージルは目を見開き、眼前の光景に固まった 固まった瞬間、顔を赤くした後急激に青褪めて掴まれている手を必死に解こうとする
「っっ、止めろ、放せ!」
「は? え、ちょっと」
ばっ、と手を庇うように振り払われ、怪訝そうな顔をするニナ それからバージルの顔に視線を留めて、不思議そうに首を傾げる
「バージル、顔赤くなったり青くなったりしてるけど大丈夫……?」
「……煩い、こっちを見るな」
ぷいっとそっぽを向いて、バージルは表情を読まれないように歯を食いしばる
けれど先程の光景が頭を駆け巡ってしまい、どうしても居た堪れなくなり踵を返して事務所を出ようとした
「え、ちょっと! どこ行くの!?」
出て行こうとするバージルを引き止めるように、半ば反射的にニナはその腕を掴んだ
そしていつもの感覚のまま掴んだ腕を引く しかしニナはこの時自分達の身体が入れ替わっている事を、完全に忘れていた
「!?」
ゴキっ!、と嫌な音が耳に入り、バージルは再び目を見開いた 同様にニナもその音に驚いてびくりと肩を揺らす
次の瞬間、バージルはニナに腕を掴まれたまま本日二度目の膝を突いた
「っっ!」
「え、え、あ、嘘、ごめん! 肩抜けた!?」
バージルが蹲ってしまったのを見て、ニナは自分がやってしまった事を瞬時に理解した
腕を引いた所為で肩の関節を外してしまった 脱臼させてしまった
そこまで力を入れて引いたつもりはなかったのだが、それでも今の自分の身体はバージルの身体だ
普段の腕力とは比べ物にならない程の力を普段の感覚のまま使ってしまい、結果被害がバージルに及んだ
ニナは申し訳なさそうな顔で顔を歪めるバージルの隣りに屈む
「ごめん、ホントごめん あたし今とんでもなく怪力だって事忘れてたよ……!」
「……」
バージルは痛みに耐えるように顔を顰めたまま、ニナを恨めしそうに睨んだ
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