葵が風邪で学校を休んだ。

この前「大丈夫、今回の範囲は結構ついていけてるし、一夜漬けでもいける！」と言っていたが、きっと一夜漬けをして体調を崩したんだろうなと俺は思った。

「千空くん、大樹くん。後で葵ちゃんの家にお見舞いに行くけど2人も来る？」

「ああ、行くぞ！もちろん、千空も行くよな！」

できるならそんな面倒ごと遠慮したかったがこうも2人に言われては断りにくく、行くと返事した。

杠が先に材料を買っていくと言い出て行き、俺と大樹はいつものペースで葵の家に向かう。

葵とは所謂幼なじみということもあり、昔からよく遊んでいた為家も覚えている。
ピンポンを鳴らすと杠がドアを開けてくれたので家に入った。

「千空くん、ちょうど良かった！今、葵ちゃん寝てると思うんだけどこれを部屋に持っていってほしいな」

そう言われ小鍋を渡されたが、適任者は杠だろうと思ったが、「早く行って！」と急かされ葵の部屋まで向かう。

一応ノックしドアを開けると案の定寝ていたが、ドアを開ける音で起きたのかモゾモゾ布団の中で動いていたので「起こしたか？悪い」と告げる。

頭がぼーっとしてるのか返事はないがとりあえず大丈夫だろう、と思い近くにあった机に鍋を置く。

「……ねえ、杠」

「あﾞ？」

俺のことを間違って杠だと思っているのか、コイツは。と思いながらも小声で何かを訴える彼女の元に行って聞くと「今机に向かうのもキツイから食べさせてほしい」と言われた。

食べさせてほしい…？さっきのといい寝ぼけてやがると思った俺は「待ってろ」とだけ告げて、杠を呼び食べさせてやってくれとお願いをした。

途中急に大声で俺の名前を叫ぶ時があったがご飯も食べ終え眠りについた彼女を見届け部屋の扉を閉めた。


「なんで急に葵は叫んだんだ？？」

帰り道、気になっていたんだろう。大樹が不思議そうに杠に尋ねて「鍋を持ってきたのが千空くんって答えたらびっくりしてたよ」と答えた。

まあ、俺を杠と思っていたし驚くわな。

多分治ったら謝りに来るだろうな、そう思いながらこのネタを材料に今度の実験は手伝ってもらうか。
そんな事を考えながら家の方向に足を向けた。