誓いの言葉を最期に
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「ぐでんぐでんに酔っぱらってるって言うから来たんすけど」
軽い足取りでトイレへ向かった名前を見送りながら、倉持は小湊に声をかける。
「はは、酔ってなくても一人で帰したら怒るくせに」
「まァ、そうっすけど」
「それより、お前都合がいいから苗字と結婚するって本当?」
「っ…なんで!」
「10年追いかけ回して結婚までこぎ着けたのに、なに一番大事なとこでひよってんの?」
「……別に追いかけ回してないですよ」
「結果的にそうなってるだろ?あの頃から散々俺にグズグズ弱音ばっかり吐いてたくせに」
「ちょっと、今日の亮さんなんかキツくないですか?」
「……お前がこんなに腑抜けてるとは思わなかったよ、言うべき事はちゃんと言いな」
「……ウッス」
冷たい笑顔で告げられた倉持は高校時代を思い出して、肩を震わせながら小さく頷く。そんな倉持の様子に、小湊はため息をつきながら更に続ける。
「それから苗字と結婚するなら、余計な外野の管理くらいちゃんとしとけよ」
「え?」
「事情を知らない奴らは好き勝手言いたがるもんだろ」
「……あいつ何か言ってました?」
「自分といる事でお前に恥ずかしい思いしてほしくないってさ」
小湊の言葉に、倉持は息をのんだ後に小さく舌打ちする。小湊はというと、言いたい事を全て言い切ったのか満足そうに僅かに残っていたビールを飲み干す。そして、そのタイミングで名前が戻ってきたため、3人は連れだって店を後にする。
「じゃ、俺はこっちだから。今日は急に悪かったな」
「いえ、いろいろ聞けて楽しかったです。ありがとうございました」
「ま、お前らなら大丈夫だろうけど。仲良くやんなよ」
「ウッス、ありがとうございます」
「じゃーね」
軽く手を上げて去っていく小湊を見送って、二人は自分達の部屋に向かって歩き出す。名前はチラリと隣を歩く倉持に目線を向ける。
「ごめんね、わざわざ迎えに来てもらって」
「亮さんに呼ばれたら、来ないわけにいかねーだろ」
「はは、倉持未だに先輩の前だと後輩感丸出しだったね」
「怒らすと怖ぇからなー亮さん」
「そうかな?」
「お前は二人で飲めるくらい仲良いんだな」
「1年の頃から、ずっとレギュラーの担当だったから。倉持達と仲良くなる前から先輩たちと話す機会多かったしね。でも会ったのは4年ぶり」
「なに話したんだよ?」
「ん?倉持と仲良くやってるか、って聞かれたり、小湊先輩の近況を教えてもらったり」
「……ふーん、それだけ?」
「あ、あとは結城先輩達が今何してるのか教えてもらったよ」
「…そうか」
「え、何?」
私の方にどこか不満そうな目線を向ける倉持に、私は首を傾げる。倉持は名前の顔を見て何か言いたそうに一瞬口を開いたが、結局言葉にすることなくため息をつく。
そして私の手をスルリと握ると、目線を前に戻してしまう。私は不思議に思いながらも、倉持の手を握り返す。
「倉持、夕飯ちゃんと食べた?」
「ん、コンビニで買った」
「……やっぱり」
「いいだろ、お前が来るまでは毎回そうだったんだよ」
「次から何か作り置きおいとくね」
「お前、そんなに頻繁にこうやって家あけるつもりかよ」
「そうじゃないけど。これからも残業とかで遅くなる度にコンビニ弁当じゃ身体に悪いよ」
二人はそんな風に当たり障りのない会話をしながら、帰路につく。倉持は隣でいつも通りに話す名前にチラリと視線を向けながら、小湊に言われたことを思い返していた。