染まり合う心情
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『あの人の努力も覚悟も知らないで、一方的に募らせた嫉妬心で人まで殺すなんて…救いようのない屑ね。そういう人間だから、今みたいな立場に甘んじてるのよ!あんたが不満に感じているソレは、あんたに対する正当な評価だわ!!』
『あんたに正義なんて言葉を口にする資格はない!!降谷零のような人間こそ本当の警察官よ!!Shame on you!!bastard!!(恥を知れ、クソ野郎)』
「……え?彼女がそう言ったんですか?」
連続殺人犯が警察官だったと分かり、警察組織も世間も大騒ぎとなった日から数日たったある日。降谷は上層部の人間に呼び出されていた。
「ああ、馬乗りになられ首にナイフでを突きつけられた状態でそう言い放ったらしい。あの男がそう供述していたよ」
「……………。」
「さすがFBIの捜査員、可愛い見た目でなかなか言うじゃないか」
「…………そうですね」
「他組織との捜査員のトレードなど、初めての試みだったが。なかなかうまくやっているようで安心したよ」
「は、はあ…ありがとうございます」
降谷は戸惑いつつも、小さく頭を下げながら言葉を返す。あの彼女が自分に関してそんな事を言うなんて。普段の様子からは想像も出来ないが、犯人と対峙したあの場面で放った言葉なら本心なんだろう。そう考えると、胸がザワザワと波立つように不思議な感覚が身体を駆け巡るのを感じる。
「苗字君は、捜査会議でも我々の思い付かない観点から意見を言うし、今回の事件でも大活躍。なかなか優秀なようだね」
「……そうですね」
そんな感覚に戸惑いつつも、降谷は平静を装って会話を続ける。
「報告を聞いていると、彼女を帰すのが惜しいくらいだよ。このまま日本の警察組織に欲しいくらいだ」
「………そうですか」
(……そうか、あいつはこの研修期間を終えたら帰るのか)
降谷は、先ほどとは別の感情が胸の中に沸き上がるのを感じる。そんな降谷の視線の先では、上層部の人間が笑顔で言葉を続ける。
「こちらが向こうに送った捜査員もアメリカで頑張っているようだ。FBIの上層部からも良い反応が来たよ。そこでだ。一つ、ある提案があるんだ」
「………提案、ですか?」
『君から俺に連絡を寄越すとは、珍しいな降谷君』
「……そっちにいる俺の部下はどうだ?」
『なかなか優秀だよ。先日は大きな麻薬の密売組織を潰すのに一役買っていた。苗字の方はどうだ?』
「少し怪我をさせた。俺のミスだ、すまない」
『……………謝ることはない、彼女も仕事だ。君を責めるつもりはないだろう』
「……あの話、聞いたか?」
『ああ』
「赤井……お前に頼むのは癪だが。俺は、あの提案を受けてほしいと思っている」
『ふ、ハハ!やけに白々しいと思ったが、それが狙いか?』
「………うるさい!」
『いいだろう。他でもない、君の頼みだ』
「…そうか」
『君が俺に頼み事をするなんて相当だからな。それにFBIに来ている君の部下を帰すのが惜しいのは本当だ』
「……ならば、あの案はお互い了承するという事で頼む」
『了解した。……俺の言った通り、可愛い奴だろう?』
「………っ、お前の了承は得たからな!こっちの上層部には伝えておく!!用件はそれだけだ!」
ニヤニヤと人の考えを見透かしたような笑みを浮かべているであろう赤井の顔が浮かんできて、降谷は苛々しながら一方的に電話を切る。そして小さく息をつきながら公安のフロアに向かっていると、廊下の先で名前と真壁が何かを話しているのが視界に入る。
「苗字、だいぶ顔の傷も治ってきたな」
「はい、もう何ともないですよ」
「そうか。良かった、毎日痛々しくて見ていられなかったよ」
「ハハ、すみませんね。見苦しい顔で」
「お前なぁ………そういえば、お前いつまでこっちにいるんだ?」
「あと1ヶ月くらいですかね。元々、半年の予定でしたから」
「何だ、もう帰るのか?」
「えー、もしかして真壁さん寂しいんですか?ふふ、そう言われると嬉しくて帰りにくいですけど……」
「残念だが、まだ帰れないぞ」
ニヤニヤと笑う名前の言葉を遮るように降谷が声をかけると、名前と真壁は不思議そうに顔を見合わせる。
「え、何でですか?」
「公安からFBIに行った俺の部下と、お前。それぞれの働きが各上層部から評価されて、期間を延長しないかと打診があった」
「………え?」
「おー、凄いじゃんか。どうするんだ?苗字」
「えっ、どうしようかな…」
「どうするも何も、もう上層部には了承の返事を返しておいた。決定事項だ」
「はあ?何で勝手に!!」
降谷の言葉に、名前は目を丸くしながら「そもそもFBI…赤井さんは何て言ってるんですか?私の上司は赤井さんですよ!」と、詰め寄る。
「赤井の了承も取ってある」
「………はあ?」
「……………。」
(降谷さん、あんなに嫌っている赤井秀一に連絡をとったのか?)
ポカンとしている名前の横で、真壁は黙ったまま二人のやり取りを見守る。
「な…何で?急に困りますよ!私、再来月には向こうで友人の結婚式があるし…帰る予定に合わせて、他にも予定がたくさん……」
「ハハ、残念だな。延長期間は一年だ。予定はキャンセルしておけ」
ガックリと肩を落とす名前に対し、どこか上機嫌な降谷は笑ってそう言葉を返す。
「もう!!キャンセルって簡単に言いますけど!ただの遊びの約束じゃなくて、結婚式………あ!結婚と言えば、真壁さん。私の写真は?」
ブツブツと文句を言っていた名前は、ふと思い出したように真壁に視線を向ける。
「へ?」
「囮捜査用に持ち込んだ私の写真…あれ、返却されてませんけど」
「え、それは……」
真壁はチラリと降谷を見るが、降谷は真壁と視線が合うと目を細めて肩をすくめる。
「えー……えっと、どこやったかな。ホラ、あの時はバタバタしてたし。悪い、探しとくわ」
「えー!!あの写真、気に入ってるのに!!」
ワーワーと言い当いとなる名前と真壁。その様子を見ていた降谷は、口元に笑みを浮かべながら名前の肩をポンと叩く。
「まあ、そう焦らなくても良いじゃないか。まだ一年ある。当分帰る予定もないんだから」
「いや、本当に何なんですか?こんな大事なこと、普通は当事者に打診してから決めますよね」
「ハハ、言っただろ?俺は気に入ったものは手放したくない性質なんだ」
「………へ?」
「お前の言ったように、俺は執念深いからな。一年たっても帰れるか分からないぞ、覚悟しとけよ」
「………え?」
「それとも、向こうに待たせている恋人でもいるのか?」
「そんな人はいませんけど……」
「ふーん?ま、いたとしても関係ないけどな」
「え?ちょっと、降谷さん!?」
戸惑う名前を尻目に、降谷は楽しそうに笑いながら公安のフロアに入って行く。それを呆然と見送りながら、名前はチラリと隣を見る。
「ま、真壁さん?今のは……」
「ハハ!!お前、随分気に入られたみたいだな!あんな上機嫌な降谷さん、久しぶりに見たぞ」
「嘘でしょ?だって、え!?そんな素振り全くなかったのに……」
真壁の言葉に、名前は更に混乱しながらも、これまでの降谷とのやり取りを思い返す。気に入られるどころか、険悪だった雰囲気がようやく普通になった程度だったはずだ。そもそも、性格には多少難はあるもののあのハイスペックの降谷さんが、よりにもよって私に?それこそ"勘違いだ、思い上がりだ、自惚れだ"と、周りからは評されそうな組み合わせな気がしてならない。
「これから、ビシバシ本気でアタックされるんじゃねーの?降谷さんが本気出すとおっかねーぞぉ!覚悟しとけよー?」
悶々と考え込んでいる名前を見て、真壁は楽しそうに笑ってそう言うと降谷の後を追ってフロアに戻って行く。
「アタック?……降谷さんが、私に?」
一人残された名前は、呆然とその場に立ちすくむ。
(あの降谷さんのアタック……えー。やだ、やだ。考えたくない)
ふざけ半分で再現してもらった、喫茶店での対応とやらを思い出す。あの顔で、あの声で、あんな風に"安室何とか"としてではなく、"降谷零"に迫られたら……そんな事を考えただけで、名前はみるみるうちに自分の頬に熱が集まるのを感じた。
fin……?
甘くもならず終わりました。
夢小説としては、ここからが本番なのに力尽きて放置していたお話。
余力かご希望があれば、続きか番外編くらいは書きたいですが。一旦はここまで。
※小説内の事件の設定は某ドラマの一部をお借りしてします。
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