安室透と契約結婚
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11、僕の帰る場所
※執行人ネタあり
「名前さんの旦那さん、やべーよ」
「どうしたの?急に」
たまたま学校帰りの江戸川コナンこと、工藤新一と会った名前は近くの公園で雑談していた。
「この間のサミット会場のテロのやつ、俺一緒にいたんだけどさ」
「え?そうなんだ」
「あの時の安室さん、首都高の車と車の間を走ったり、電車に向かって正面から突っ込んで行って電車に並走して片輪走行したり。他にも、線路を走ったり…ビルから車で飛び降りたり……」
「……おかしいなぁ、頭のいい工藤君が説明してるのに…現実味がなさすぎて、全くその光景が想像出来ない」
名前は、顔をしかめて首を傾げながらそう呟く。
「あれは、マジで死んだと思った」
「……そんなに大変だったんだ。確かに、あのテロの時はあちこちひどい怪我して帰ってきたけど」
「安室さんって、あんまり家でそういう話しないの?」
驚いたように呟いている名前を見て、コナンが不思議そうに尋ねる。
「そうだねぇ、そもそも機密事項とかもあるから仕事の話自体たまにしかしないよ」
「へー、家族でもそうなんだ」
「……それに、あのテロでは公安の人に被害が出たでしょ?だから、あの事件の話はあまり話したくなさそうなの」
「……そっか、そうだったね」
少し眉を寄せて話す名前を、コナンも困ったような顔をして見ている。
「でも、コナン君の話は聞いたよ」
そんなコナンの様子に気づいた名前は、しんみりした空気を変えるようにそう声をかける。
「え?」
「不思議なスケボーに乗って公道を突っ走って、トラックの下に滑り込んだり、飛んだり跳ねたりしていたよ。すごい子だな…って驚いてたよ、降谷さん」
「アハハ、飛んだり跳ねたりって…」
「前から気になってたんだけど、工藤君って私が知らないうちに正体バラしたの?」
「いやいや、バラしてねーよ!!」
「えー?それにしては、派手に活躍しすぎじゃない?疑われちゃうよ」
のんびりした口調で目を丸くする名前の言葉に、コナンはこれまでの安室とのやり取りを思い返して「確かに……」と、乾いた笑みを浮かべる。
「……はぁ、」
そんなコナンを尻目に、名前はぼんやり公園で遊ぶ子供達を見ながら小さくため息つく。
「どうかした?」
「ううん。バーボン関連の時は、危険だろうなって家で帰りを待ってるときも、それなりに心構えしてたけど。公安の時も、そんなに危ない目にあってたんだね」
「い、いや…あんなのは、滅多にないと思うけど」
「そうかなぁ?でも、やっぱり心配になっちゃうよ。かと言って、降谷さんの仕事の事には口出せないから信じて待つしかないんだけどね」
「名前さん…」
落ち込んだように話す名前の横顔を、コナンは何と声をかければいいのか分からないまま、ジッと見つめていた。
「おかえりなさい」
「ただいま、名前」
コナンとそんな会話をした日、珍しく早く帰って来た降谷を名前は笑顔で出迎える。そんな二人の足元に、ハロがフリフリと尻尾を振りながら近付いてきて、降谷は「ただいま、ハロ。良い子にしてたか?」と言いながら、ハロを抱き上げる。
「今日も良い子でしたよ」
名前はそう言いながら、ハロと戯れる降谷をしばらく黙って見つめる。
「どうした?」
そんな視線に気付いた降谷が不思議そうに名前に視線を向けると、名前は黙ったまま降谷の腕からハロを抱き上げる。
「はい、ハロちゃんの番は終わりです。先にリビングに行っててね」
そして優しくハロを床に降ろすと、ハロの頭を撫でながらそう声をかける。
「名前?」
「次は、私の番です」
「え、」
何の事だと戸惑う降谷を尻目に、名前はギュゥ…っと降谷に抱きついて、胸元に顔を埋める。
「お、おい…どうした?」
「……おかえりなさい、降谷さん」
自分から抱きついたりすることなどほとんどない名前の行動に戸惑いつつ、名前の身体を抱き締め返す降谷。
「……何かあったのか?」
「いいえ、今日も降谷さんが帰って来てくれて嬉しいなって思っただけです」
「……………。」
(どうしたんだ……また、ハロに構いすぎたか?いや、先週6日間も泊まり込みで帰れなかったからか!?)
名前からのスキンシップに嬉しい反面、突然の行動にまた何か思い悩んでいるのかもしれないと、慌てる降谷。
そんな降谷に気付かないまま、名前は降谷が無事に帰って来た事を噛み締めるかのように、ギュッと降谷を抱き締め続けた。
*数日後
「……と言うわけで、最近家に帰った時の名前の出迎えが毎回熱烈なんだよ。可愛いだろ?」
「安室さん、それノロケなの?」
コナンしかいないポアロの店内で、一体何を聞かされているんだ?と、半目になるコナン。
「まあ、確かにそれもあるよ。あの出迎えが待ってると思えば、徹夜でもジンの相手でも何でも出来そうだ」
「……アハハ、良かったね」
(ジンの相手でもって、どんだけ名前さんが好きなんだよ)
「だけど、気になる事が1つ」
「え?」
今まで嬉しそうに微笑んでいた安室が、ふいに探るように目を細めて自分を見る。コナンは、その表情にピタリと動きを止めて首を傾げる。
「普段、自分からスキンシップをする事のない名前があんな事をするようになったのは……君が名前と公園でお喋りした日からなんだよ、コナン君」
「え゛!?何で公園で話してたって知ってるの……」
「さあ、どうしてだろうねぇ」
安室はわざとらしくニッコリ笑いながら、コナンに一歩近付く。
「それで?何を話していたんだい?」
「い、いや…別に……」
「ん?」
「わ、わかった!話すから!降谷さんと、バーボン出すのやめて!!」
一気に冷たい空気を纏って自分に詰め寄る安室に、コナンは慌ててあの日のやり取りを説明する。一通り話を聞き終えた安室は、いつもの雰囲気に戻って「なるほどね」と腕を組んで頷いている。
「まさか、何にも知らないとは思わなくて。軽々しく話しちゃってごめんね」
「いや…まぁ、それは仕方ないが。そうか、それで僕が帰ってくる度に嬉しそうにしているのか」
「………まさか、降谷さん相手に仕事やめてとも言えないし。無茶するなとも言えないもんね」
「言われても辞める事は出来ないが、一人で悶々と心配するくらいなら、多少は口に出して自分の気持ちを言ってくれてもいいんだけどな……」
(……相変わらず、俺に気を使って黙ってるのか。そういうところは、変わらないな)
安室は困ったような微笑みを浮かべながら、小さくため息をつく。
「だけど、安室さん…結局あの時と同じ事があれば、また同じ事をするんでしょ?」
「………この国を守るためならね。だけど、あの煩い上司の言っていた言葉も…今となれば納得出来るな」
「?」
「名前と結婚する前に、しつこく見合いを薦められていたんだよ。帰る家があれば、身を削るような無茶もしなくなるだろってね」
「え!そうなの?それで、何で名前お姉さんと結婚することになったの!?」
「……まあ、それは大人の事情さ」
(そういえば、コナン君は契約結婚の事は知らなかったな)
不思議そうに尋ねるコナンに、安室はニヤリと口角をあげながらそう言葉を返す。
「……ふーん?」
(その辺りは、名前さんに聞いても教えてくれねーんだよなぁ)
「僕の仕事上、身を削るような無茶をするな、と言われても頷く事は出来ないが。手足が千切れようとも、生きて家に帰ろうとは思うようになったからね。結局のところは、あの上司の思惑通りかもしれないな」
自分に探るような視線を向けながら首を傾げるコナンを尻目に、安室はポツリとそう呟いて、今も家で自分の帰りを待つ名前の事を思い浮かべながら小さく笑った。
fin.
久しぶりに執行人を見返したら、もし降谷さんに家族や恋人がいたら、毎回あんなカーアクションやらドンパチしてる人を待ってるなんて気が気じゃないなと思って書きました。
降谷さんと一緒に戦う系ヒロインも書きたいけど、なかなか難しそう。
甘くもなく、大した落ちもなくすみません。