安室透と契約結婚
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「降谷さんは、思う存分ハロちゃんとゆっくりしてください」
その言葉と共に流れ落ちた涙に、俺は愕然とした。名前の涙を見るのは2度目だ。あの後輩の体験談から、夫婦仲をこれまで以上に良好にさせるためにむしろ尽力していたつもりだった。どこで間違えたんだ?
仮にも日常的にトリプルフェイスを使い分ける自分の脳内は、愕然としながらもフル回転している。どこで間違えたのか、振り返ってみなければ。
まず、ハロ(犬)を飼おうと提案したこと。
あの時の名前は、突拍子のない提案に驚いてはいたが、嫌がっている様子はなかった。むしろ、自ら飼育に必要な物品をリストアップしていたくらいだ。
(ちなみにこの時の俺は、相変わらず忙しい俺に気を使って、何も言わなくても影ながらサポートしてくれる姿勢に感激した。)
ハロを飼うことは問題なかったはず、クリア。次。
ハロが来てからはどうだ?
彼女はハロをハロちゃんと呼び、可愛がっていた。感情表現も決して激しいタイプではない名前が、「デレデレ」という形容詞が相応しいくらいには緩んだ顔をしてハロを相手にしていた。
(ちなみに俺はそんな名前を見たくて、ついついハロと名前が一緒にいる時にはその姿をガン見してしまっていた。)
もしかして、俺の顔がニヤけていたのか?見すぎて気持ち悪いと思われたか?いや、忙しくて世話やしつけを任せきりにしたのがいけなかったか?しかし泣くほどだろうか…この件は保留。次。
日常生活はどうだろう。
相変わらず自宅に帰れる日もあれば、何日も帰らないこともある。この点は申し訳ないと思っているが、それは最近始まった事ではない。そもそも、その寂しさを気遣ってハロを飼うことになったのだ。
たまに、家に帰れば笑顔で迎え入れてくれるし機嫌は悪くなさそうだった。「一緒の夕ご飯が久しぶりで、はりきっちゃった」と、豪華な夕食が並んでいたり、前に美味しいといったものを作ってくれたり。
(あの時は、名前も俺との食事を心待にしてくれている事に嬉しさが込み上げてきて、思わず一瞬だが口ごもってしまった。)
そういえば、何か食べたいものがないかとリクエストされたな。名前が作るもので嫌いなものはないし、和食、洋食、中華など偏らずにローテーションで出てくるから飽きもない。むしろ何でも美味しいから、何もリクエストしなかった。あれか?よく聞く「何でも良いが、一番困るのよ!」ってやつか?
どれも決定打に欠けるが、日常生活の中そういう些細な不満が蓄積していたのかもしれない。要検討としよう、次。
夫婦生活はどうだ?
久しぶりの休みには、後輩の嫁が喜んでいたというペットショップにハロを連れて出掛けたり、散歩をしたり。
なかなか遠出や旅行にく事が出来ない事は申し訳ないが、名前は近場の外出でもハロの洋服やおもちゃを見て、楽しそうにしていた気がする。
名前と二人でハロも連れて歩くのは、まさにホームドラマに出てくる"家族"といった感じで、雰囲気も良かったと思う。
(俺自身は、名前と二人きりになりたかった気持ちもあるが…そこは、飼い始めたばかりのハロを蔑ろにするような奴に思われたくない。それに、ハロが可愛いのも事実だし、ハロと3人で過ごすのも家族感が増して良かった)
そういえば以前久しぶりに帰ったというのに、つい組織の愚痴やFBIのあの男の愚痴をこぼしてしまったことがあり、後から反省した。何日かぶりに帰った旦那から、職務上詳細を聞くことも出来ないのに愚痴だけをグタグタと言われたら名前も気分が悪いだろう。その点、最近はハロのおかげもあり会話は和やかで微笑ましいものが増えた気がする。
(名前は元々、自分からアレコレと話すタイプではないが、ハロの話となると珍しく饒舌でそれも可愛かった。ついついハロの話を振ってしまい、名前の話を聞く自分の顔は緩んでいた気がする。浮かれすぎたのか?少ししつこかっただろうか?)
……特に、改めて反省すべき点が思い浮かばない。クリア…か?
「…わからない、」
名前が涙を流すのを見たトリプルフェイスの脳内はフル回転して、上記の検証をものの数分で行った。名前からしたら、そこまで長い沈黙ではなかったはずだ。
しかし検証結果から得られたものはなく、俺の口から出たのは情けないその一言だけだった。
→続きます