安室透と契約結婚
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10、契約変更しますか?
(本編終了直後※ほんのり事後)
いつもの帰宅時刻を過ぎても帰ってこない、様子のおかしいメールが届く。この時点で嫌な予感がして、結婚して初めてGPSアプリを起動した。
結婚した当初は心配でこのアプリを入れたわけではない。ただ俺の同居人となってもらう以上、最低限の安全は確保してやる手段の1つとして選択しただけだ。
それが、今となってはアプリの示す場所に息を切らして駆けつける事になるとは思いもしなかった。
ようやく見つけ出したと思ったら泣いているし、「別れたい、別居したい」と言われて肝が冷えた。まさか、初めて見る涙がこんな展開になるとは思わなかった。
隣で眠る名前の髪を掬ってサラサラと落とす。いつも、無表情でそれでもどこか悲しそうに向けられていた目線。その瞳は閉じられていて、寝顔だけ見ると、いつもよりどこかあどけなく見える。シーツを巻き込むように小さくなって寝ている姿は猫のようだ。
「可愛い」
寝顔を見ていて思わず漏れた自分の言葉に苦笑する。契約結婚を持ちかけて散々冷たくしておいて、想いが通じた途端に自制が効かずに、その日のうちに抱いてしまった。危険な場所に身を置いて、"好き"とも"愛してる"とも伝えられない中途半端な自分が、このまま彼女を縛り付けていいのだろうか。
「……んん、」
「気が付いた?」
「あ、…降谷さん?」
少し身動いだあとに、ゆるゆると開かれた瞳。キョロキョロと視線をさ迷わせたあとに、隣にいる俺と目線が合うと名前は僅かに目を見開いて、今の状況に気が付いて顔を赤くする。
無表情だった名前のいろんな表情が見られるのはいいが、さっきのような泣き顔はもう見たくない。これからは、こうやって恥ずかしそうに頬を赤らめたり、嬉しそうに笑う笑顔をずっと見ていたい。
「えっと…私、寝ちゃいましたか?」
「ああ、まだ2時間くらいだけど。身体大丈夫か?」
「大…丈夫です」
「寒くない?」
「寒くはないです…けど、恥ずかしいので服を着ます」
「はは、そうか。喉乾いたろ?俺は水でも持ってくるよ」
「すみません」
俺は名前の頭を軽く撫でてから、飲み物を取りにキッチンに向かう。こういう思いっきり"事後"だと言うことを思い浮かせるやり取りは恥ずかしいのか、名前は終始気まずそうに顔を赤くしている。本当に可愛い。最中の恥ずかしそうに喘ぐ表情や、余裕がなくなって敬語じゃなくなる姿も良かった。
こうなって見ると、なぜ今まで同じ空間で過ごしておいて何ヵ月も何もせずに過ごせたのか不思議になってしまう。
「はい、水」
「すみません、ありがとうございます」
部屋に戻ると名前は既にしっかり服を着ていて少し残念に思いながら、それは表情には出さずにペットボトルを手渡す。
「まだ寝ていいよ、疲れたろ」
「降谷さんは眠らなかったんですか?」
「ん、ああ」
名前の寝顔を見ていたらあっという間に時間が過ぎてしまったわけだけど、そうは言わずに軽く頷いておく。
「…私、自分の部屋に戻りましょうか?」
「何で?」
「降谷さんお仕事柄、誰かと一緒だと眠れないとか?忙しいんですから、ゆっくり休んでください」
「そんな事ない、俺だって気を許した相手なら普通に寝るよ」
そう言いながら困ったように俺を見上げる名前の身体を抱き込むようにして、もう一度ベッドに寝かせる。驚いている名前を後ろから抱きしめるようにして、名前の柔らかな髪に顔を埋める。
「俺も少し寝るよ」
「え、それなら私は自分の部屋に…」
「起きたら言おうと思ってたんだけど、寝室は一緒にしようか」
「え?」
甘い時間を過ごした後なのに、あっという間に俺を気遣って遠慮する名前に戻ってしまった。もう少し甘えたり、我が儘でも言ってほしいところだが、急には無理だったか。それは追々そうさせていこう。
「言ったろ?気を許した相手なら俺だって眠れる」
「そう…ですか」
俺の言葉に嬉しそうに頬を染める。俺は、そんな名前の手をギュッと握りながら、苦しくない程度に抱き締める力を強める。
しばらくは緊張しているのか身体に力が入っていたが、だんだん力が抜けていき、スウスウと寝息をたて始める。俺はそんな名前の身体を、もう一度強く抱きしめるとゆるりと目を閉じる。今夜はよく眠れそうだ。
fin.