安室透と契約結婚
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名前は小さなため息をつきながら、腕時計を確認する。
(……自分から呼び出しておいて、時間も守れない人だったかなあ)
元婚約者は、待ち合わせ時刻を15分過ぎても現れない。少なからず私に申し訳ない気持ちがあれば、もう少し誠実な対応をしそうなものだけど。
「名前ちゃん、待った?」
「…まあ少し」
そんな事を考えていると、ヒラヒラと手を振りながらようやく現れた元婚約者は特に悪びれる様子もない。チラリと見えた左手には、キラリと指輪が光っている。
「久しぶりだね~あんまり変わってなくて安心したよ」
「はあ、それで荷物は?」
「せっかくだから、お茶でも飲もうよ。いろいろ話したいし」
「私は話すことなんてないけど」
「そんな怖い顔しないでよ。俺、後悔してるんだ。やっぱりよく知らない相手と結婚しても落ち着かないんだよな~価値観とか趣味も合わないし」
「はあ」
「それでさ、名前ちゃんが良かったらこれからちょくちょく会おう…」
「名前さん!」
「え?」
元婚約者の言葉を遮るように呼ばれた自分の名前と軽いクラクション音に、2人は声がした方に振り返る。そこには、颯爽と白い愛車から降りてこちらに手を振る見慣れた人物。
「え、ふ…安室さん?何で」
「あれRX-7じゃん、いい車乗ってんな~名前のちゃんの知り合い?」
「や、知り合いっていうか」
今日、私がここに来ることは伝えていないはずなのに。というか、今朝は公安の方に行くと言ってスーツを着て家を出ていったはずなのに。当然のように何故か私服姿でこちらにやって来る降谷に、名前は目を丸くして口ごもる。
「荷物は受けとりましたか?」
「あ、まだです。…ねえ荷物はやく渡してくれる?」
「え?ああ、これだけど」
元婚約者は不思議そうに降谷を見ながら、どこか不満気に鞄から1つの紙袋を取り出して私に手渡す。私がチラリと中を確認すると、袋の中には化粧水やバレッタなどの小物がいくつか入っている。
(確かに私のものだけど、こんな物なら捨ててくれれば良かったのに。)
名前が袋の中身を見て小さくため息をつくと、隣で同じように袋を覗き込んでいた降谷が口を開く。
「おや、わざわざ婚約破棄した相手を呼び出すくらいだから、もっと大きな荷物かと思ったんですが。これだけですか?」
「そうだけど…あんた誰?名前ちゃんが呼んだの?」
「僕は安室透です。名前さんの夫ですよ」
訝し気に降谷に尋ねた元婚約者に、降谷は名前の腰に手を回しながらニコリと笑顔で答える。
「お、はあ?夫!?お前結婚したのかよ?」
「う、うん」
「はあ?俺と別れてからまだ1年ちょっとじゃん!何だよ、お前も意外と…」
「名前さん」
「安室さん、何ですか?」
「僕の車の後部シートにポアロのスコーンが入ってるので、取ってきてもらえますか?」
「?わかりました」
突然名前に食いかかるように何かを言おうとした元婚約者の言葉を遮って、降谷が笑顔のままそう告げる。名前は首を傾げながらも、小さく頷いてくるりと踵を返して車に向かう。その背中を見送ったあと、降谷は一歩元婚約者に近付いて距離を詰める。背の高い降谷に見下ろされるような形になり、元婚約者は僅かにたじろぐ。
「自分が一方的に婚約破棄しておいて、名前さんに何を言うつもりですか?」
「何だよ、いきなり。あの女だってこんなに早く違う男に乗り替えてるんだから、婚約破棄した事なんて大して気にしてないんだろ!」
「……あなたが出世のために結婚した取引先のお嬢さんは、今まで随分甘やかされたようで家事もほとんど出来ないみたいですね」
「な、なんでそんな事をお前が知ってるんだよ!?」
「その上、奥さんのご実家である取引先の三ツ俣商事は突然の経営不振で期待していた出世も望めないと」
「!」
降谷の言葉に驚く元婚約者に、降谷は更に顔を近づけると、先ほどまでの笑顔から一転して鋭い視線を向けながら低い声で続ける。
「今さら名前さんが惜しくなりましたか?」
「なっ」
「しかし取引先のお嬢さんとは、そう簡単に別れられないはずですよね。名前さんに都合よく自分の相手をさせようとでも思いましたか?」
「そ、それは」
「いいか?名前は俺の女だ。今後またこうやって近づいてみろ。経営不振の損失を取り戻すために、いろいろ危ない橋を渡っているようだし…お前1人くらい簡単に社会的に抹殺してやる」
「ひっ…」
降谷の迫力に元婚約者は小さく息をのんで後ずさる。その顔は血の気が引いて真っ青になっている。
「あの、安室さん…スコーン持ってきたんですけど」
「ああ、名前さんありがとうございます」
そのタイミングでポアロの紙袋を抱えた名前が戻ってきて、不思議そうに降谷と元婚約者を見比べている。降谷はパッと名前に笑顔を向けると、紙袋を名前から受け取って元婚約者に手渡す。
「どうぞ、わざわざ名前さんの荷物を持ってきてもらったお礼です」
「え、」
「これで貸し借りなしですね、金輪際会う必要もないでしょう?」
「………」
「そうですよね?」
「は、はい。今日はすみませんでした!」
元婚約者はスコーンが入った袋を乱暴に鞄に突っ込むと、名前には目も向けずにその場から駆け出していく。
「……何だったんでしょうか?」
「さあ?変わった人ですね」
困惑する名前に、降谷は可笑しそうに笑って言葉を返しながら名前の手を握る。
「今日は思ったより仕事が早く片付いたから迎えに来たんだ。このままドライブでも行こうか」
そして名前の顔を覗き込んで優しい笑顔でそう言うと、名前の手を引きながら愛車に向かって歩き出した。
続きます→
名前は小さなため息をつきながら、腕時計を確認する。
(……自分から呼び出しておいて、時間も守れない人だったかなあ)
元婚約者は、待ち合わせ時刻を15分過ぎても現れない。少なからず私に申し訳ない気持ちがあれば、もう少し誠実な対応をしそうなものだけど。
「名前ちゃん、待った?」
「…まあ少し」
そんな事を考えていると、ヒラヒラと手を振りながらようやく現れた元婚約者は特に悪びれる様子もない。チラリと見えた左手には、キラリと指輪が光っている。
「久しぶりだね~あんまり変わってなくて安心したよ」
「はあ、それで荷物は?」
「せっかくだから、お茶でも飲もうよ。いろいろ話したいし」
「私は話すことなんてないけど」
「そんな怖い顔しないでよ。俺、後悔してるんだ。やっぱりよく知らない相手と結婚しても落ち着かないんだよな~価値観とか趣味も合わないし」
「はあ」
「それでさ、名前ちゃんが良かったらこれからちょくちょく会おう…」
「名前さん!」
「え?」
元婚約者の言葉を遮るように呼ばれた自分の名前と軽いクラクション音に、2人は声がした方に振り返る。そこには、颯爽と白い愛車から降りてこちらに手を振る見慣れた人物。
「え、ふ…安室さん?何で」
「あれRX-7じゃん、いい車乗ってんな~名前のちゃんの知り合い?」
「や、知り合いっていうか」
今日、私がここに来ることは伝えていないはずなのに。というか、今朝は公安の方に行くと言ってスーツを着て家を出ていったはずなのに。当然のように何故か私服姿でこちらにやって来る降谷に、名前は目を丸くして口ごもる。
「荷物は受けとりましたか?」
「あ、まだです。…ねえ荷物はやく渡してくれる?」
「え?ああ、これだけど」
元婚約者は不思議そうに降谷を見ながら、どこか不満気に鞄から1つの紙袋を取り出して私に手渡す。私がチラリと中を確認すると、袋の中には化粧水やバレッタなどの小物がいくつか入っている。
(確かに私のものだけど、こんな物なら捨ててくれれば良かったのに。)
名前が袋の中身を見て小さくため息をつくと、隣で同じように袋を覗き込んでいた降谷が口を開く。
「おや、わざわざ婚約破棄した相手を呼び出すくらいだから、もっと大きな荷物かと思ったんですが。これだけですか?」
「そうだけど…あんた誰?名前ちゃんが呼んだの?」
「僕は安室透です。名前さんの夫ですよ」
訝し気に降谷に尋ねた元婚約者に、降谷は名前の腰に手を回しながらニコリと笑顔で答える。
「お、はあ?夫!?お前結婚したのかよ?」
「う、うん」
「はあ?俺と別れてからまだ1年ちょっとじゃん!何だよ、お前も意外と…」
「名前さん」
「安室さん、何ですか?」
「僕の車の後部シートにポアロのスコーンが入ってるので、取ってきてもらえますか?」
「?わかりました」
突然名前に食いかかるように何かを言おうとした元婚約者の言葉を遮って、降谷が笑顔のままそう告げる。名前は首を傾げながらも、小さく頷いてくるりと踵を返して車に向かう。その背中を見送ったあと、降谷は一歩元婚約者に近付いて距離を詰める。背の高い降谷に見下ろされるような形になり、元婚約者は僅かにたじろぐ。
「自分が一方的に婚約破棄しておいて、名前さんに何を言うつもりですか?」
「何だよ、いきなり。あの女だってこんなに早く違う男に乗り替えてるんだから、婚約破棄した事なんて大して気にしてないんだろ!」
「……あなたが出世のために結婚した取引先のお嬢さんは、今まで随分甘やかされたようで家事もほとんど出来ないみたいですね」
「な、なんでそんな事をお前が知ってるんだよ!?」
「その上、奥さんのご実家である取引先の三ツ俣商事は突然の経営不振で期待していた出世も望めないと」
「!」
降谷の言葉に驚く元婚約者に、降谷は更に顔を近づけると、先ほどまでの笑顔から一転して鋭い視線を向けながら低い声で続ける。
「今さら名前さんが惜しくなりましたか?」
「なっ」
「しかし取引先のお嬢さんとは、そう簡単に別れられないはずですよね。名前さんに都合よく自分の相手をさせようとでも思いましたか?」
「そ、それは」
「いいか?名前は俺の女だ。今後またこうやって近づいてみろ。経営不振の損失を取り戻すために、いろいろ危ない橋を渡っているようだし…お前1人くらい簡単に社会的に抹殺してやる」
「ひっ…」
降谷の迫力に元婚約者は小さく息をのんで後ずさる。その顔は血の気が引いて真っ青になっている。
「あの、安室さん…スコーン持ってきたんですけど」
「ああ、名前さんありがとうございます」
そのタイミングでポアロの紙袋を抱えた名前が戻ってきて、不思議そうに降谷と元婚約者を見比べている。降谷はパッと名前に笑顔を向けると、紙袋を名前から受け取って元婚約者に手渡す。
「どうぞ、わざわざ名前さんの荷物を持ってきてもらったお礼です」
「え、」
「これで貸し借りなしですね、金輪際会う必要もないでしょう?」
「………」
「そうですよね?」
「は、はい。今日はすみませんでした!」
元婚約者はスコーンが入った袋を乱暴に鞄に突っ込むと、名前には目も向けずにその場から駆け出していく。
「……何だったんでしょうか?」
「さあ?変わった人ですね」
困惑する名前に、降谷は可笑しそうに笑って言葉を返しながら名前の手を握る。
「今日は思ったより仕事が早く片付いたから迎えに来たんだ。このままドライブでも行こうか」
そして名前の顔を覗き込んで優しい笑顔でそう言うと、名前の手を引きながら愛車に向かって歩き出した。
続きます→