安室透と契約結婚
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名前さんがキッチンへ向かうのを見送って、小さく息をつきながらぐるりと室内を見回す。名前さんは、自分のことをズボラで家事や料理もそこまで好きではないなんて話していたが、室内は隅々まで綺麗に掃除されているように見えるし、スッキリと整理整頓されている。
リビングには決して華美ではなく、それでいてふと目に止まるように絶妙に自分の存在を主張するように花が飾られているし、観葉植物なんかも置いてある。あれだけ多忙な降谷さんが、植物の世話までするとは思えないし、名前さんのセンスで置かれているのだろう。まあ、つまるところ訪問するのは2度目でしかも上司の部屋だと言うのに、この部屋の雰囲気はかなり落ち着くのだ。
そこにあの落ち着いた雰囲気の名前さんが、美味しい料理(あの降谷さんが控えめに自慢していた)を作って待っていてくれるのだ。あの仕事人間の上司が家に帰りたがるようになったのも理解出来る。
部屋を見回した後に、そんな事をぼんやりと考えながら、部屋の雰囲気のせいか肩の力を抜いて柔らかなソファーに背中をもたれた。
◇◇◇◇◇
芳ばしい珈琲の匂いがする。
そういえば、何だか足元も暖かくて心地好い。ん、自分は今何をしていたんだっけ?確か、名前さんの状況を確認するために降谷さんの部屋に上がらせてもらって……!!
そこまで思い出して、ハッと目をあけて身体を起こすと、いつの間にか膝にかけられてた柔らかいブランケットが床に落ちる。
「え、あれ?」
「あ、目が覚めましたか?」
まわらない頭で状況が理解出来ずに呆然としていると、背後からのんびりした声がかかる。振り返ると、名前さんがキッチン近くに置かれた簡易的なイスに腰を降ろしていて、手に持っていた雑誌を閉じるのが目に入った。
「僕…寝てましたか?」
「ええ、座った姿勢のままでしたけど。40分くらいかな?やっぱりお疲れなんですね」
「す…すみません、まさか降谷さんのお宅で居眠りをするなんて」
「一応、お目覚めの後にと思って珈琲も用意したんですが」
「いえ、本当にお気になさらず」
何とか言葉を返しながらも、上司の奥さんとは言え公安の人間であるにも関わらず、人前でかなり深く眠ってしまったことに顔を青くする。
「あは、気にしないでください。私たちの秘密にしておきましょう」そんな、僕の心情を知っているのか、知らないのか。名前さんは、僕が降谷さんに叱られることを気にしていると思ったようで、小さく笑いながらそんな事を言っている。
「いえ、本当にお部屋に上がらせてもらった上にまさかこんな」
「風見さん」
「……はい?」
「私は確かに書類上は降谷さんの妻ですけど、風見さんより年下のただの一般人ですよ。降谷さんがいるわけでもないですし、そこまで堅苦しく気を使わないでください」
「や、しかし」
「"降谷さん"の話を出来る人なんて風見さんしかいないですし、もう少し気楽にいろいろ話せたら嬉しいです」
「名前さん…」
「あと疲れているなら遠慮せず、言ってください。次の機会があるなら、無理して時間を作って部屋まで来ていただかなくても大丈夫ですよ」名前さんは、慌てていた自分とは対照的に落ち着いた様子でそう言いながら、ニッコリと笑う。その笑顔を見ると、つい自分も小さく息をついて身体の力を抜いてしまう。
「マイナスイオンの塊のような方ですね」
「え?」
「名前さんの事です。降谷さんが、仕事の合間を縫って自宅に帰りたがるようになった理由が判りました」
「風見さん?」
「あなたといるのも、あなたのいるこの部屋も、普段殺伐としている職場とは違い本当に落ち着きます。」
僕は不思議そうに目を丸くする名前さんに向かって言葉を選びながら口を開く。どうしたら伝わるだろうか。
「正直、初めはただでさえこんなに忙しいのによく知りもしない相手と結婚するなんて、頭がおかしくなったのかと思いました」
「……そうですよね」
「しかし結婚した後から、確実に仕事の効率も上がっているし、何より今まで自分を犠牲に……自分の生活の全てを公安に注ぐような生活をしていた降谷さんが、しっかりプライベートな時間を確保して自宅に帰るようになってくれて、とても安心したんです」
「そんなこと、」
「いえ、僕は仕事上の事ならいくらでも手伝えますがそれだけではダメなんです。どうか、これからも降谷さんを支えてやってください」
そう言いながら小さく頭を下げる。頭の上で、名前さんが小さく息を飲んだような気がした。
名前さんには本当に感謝している。ひたすら仕事に打ち込んでいたあの人を、人間らしくしてくれた人だ。これからも、降谷さんを支えて癒し続けてほしい。それは、自分には出来ない支え方だから。
今日は思いがけず名前さんといろいろと話す事になったが、自分が彼女に感謝している事が少しでも伝わっただろうか。
うたた寝してしまうほど、自分もすっかり彼女の魅力に癒されたわけだけれど。これだけは、あの嫉妬深い上司には報告しないでおこう。
fin.
名前さんがキッチンへ向かうのを見送って、小さく息をつきながらぐるりと室内を見回す。名前さんは、自分のことをズボラで家事や料理もそこまで好きではないなんて話していたが、室内は隅々まで綺麗に掃除されているように見えるし、スッキリと整理整頓されている。
リビングには決して華美ではなく、それでいてふと目に止まるように絶妙に自分の存在を主張するように花が飾られているし、観葉植物なんかも置いてある。あれだけ多忙な降谷さんが、植物の世話までするとは思えないし、名前さんのセンスで置かれているのだろう。まあ、つまるところ訪問するのは2度目でしかも上司の部屋だと言うのに、この部屋の雰囲気はかなり落ち着くのだ。
そこにあの落ち着いた雰囲気の名前さんが、美味しい料理(あの降谷さんが控えめに自慢していた)を作って待っていてくれるのだ。あの仕事人間の上司が家に帰りたがるようになったのも理解出来る。
部屋を見回した後に、そんな事をぼんやりと考えながら、部屋の雰囲気のせいか肩の力を抜いて柔らかなソファーに背中をもたれた。
◇◇◇◇◇
芳ばしい珈琲の匂いがする。
そういえば、何だか足元も暖かくて心地好い。ん、自分は今何をしていたんだっけ?確か、名前さんの状況を確認するために降谷さんの部屋に上がらせてもらって……!!
そこまで思い出して、ハッと目をあけて身体を起こすと、いつの間にか膝にかけられてた柔らかいブランケットが床に落ちる。
「え、あれ?」
「あ、目が覚めましたか?」
まわらない頭で状況が理解出来ずに呆然としていると、背後からのんびりした声がかかる。振り返ると、名前さんがキッチン近くに置かれた簡易的なイスに腰を降ろしていて、手に持っていた雑誌を閉じるのが目に入った。
「僕…寝てましたか?」
「ええ、座った姿勢のままでしたけど。40分くらいかな?やっぱりお疲れなんですね」
「す…すみません、まさか降谷さんのお宅で居眠りをするなんて」
「一応、お目覚めの後にと思って珈琲も用意したんですが」
「いえ、本当にお気になさらず」
何とか言葉を返しながらも、上司の奥さんとは言え公安の人間であるにも関わらず、人前でかなり深く眠ってしまったことに顔を青くする。
「あは、気にしないでください。私たちの秘密にしておきましょう」そんな、僕の心情を知っているのか、知らないのか。名前さんは、僕が降谷さんに叱られることを気にしていると思ったようで、小さく笑いながらそんな事を言っている。
「いえ、本当にお部屋に上がらせてもらった上にまさかこんな」
「風見さん」
「……はい?」
「私は確かに書類上は降谷さんの妻ですけど、風見さんより年下のただの一般人ですよ。降谷さんがいるわけでもないですし、そこまで堅苦しく気を使わないでください」
「や、しかし」
「"降谷さん"の話を出来る人なんて風見さんしかいないですし、もう少し気楽にいろいろ話せたら嬉しいです」
「名前さん…」
「あと疲れているなら遠慮せず、言ってください。次の機会があるなら、無理して時間を作って部屋まで来ていただかなくても大丈夫ですよ」名前さんは、慌てていた自分とは対照的に落ち着いた様子でそう言いながら、ニッコリと笑う。その笑顔を見ると、つい自分も小さく息をついて身体の力を抜いてしまう。
「マイナスイオンの塊のような方ですね」
「え?」
「名前さんの事です。降谷さんが、仕事の合間を縫って自宅に帰りたがるようになった理由が判りました」
「風見さん?」
「あなたといるのも、あなたのいるこの部屋も、普段殺伐としている職場とは違い本当に落ち着きます。」
僕は不思議そうに目を丸くする名前さんに向かって言葉を選びながら口を開く。どうしたら伝わるだろうか。
「正直、初めはただでさえこんなに忙しいのによく知りもしない相手と結婚するなんて、頭がおかしくなったのかと思いました」
「……そうですよね」
「しかし結婚した後から、確実に仕事の効率も上がっているし、何より今まで自分を犠牲に……自分の生活の全てを公安に注ぐような生活をしていた降谷さんが、しっかりプライベートな時間を確保して自宅に帰るようになってくれて、とても安心したんです」
「そんなこと、」
「いえ、僕は仕事上の事ならいくらでも手伝えますがそれだけではダメなんです。どうか、これからも降谷さんを支えてやってください」
そう言いながら小さく頭を下げる。頭の上で、名前さんが小さく息を飲んだような気がした。
名前さんには本当に感謝している。ひたすら仕事に打ち込んでいたあの人を、人間らしくしてくれた人だ。これからも、降谷さんを支えて癒し続けてほしい。それは、自分には出来ない支え方だから。
今日は思いがけず名前さんといろいろと話す事になったが、自分が彼女に感謝している事が少しでも伝わっただろうか。
うたた寝してしまうほど、自分もすっかり彼女の魅力に癒されたわけだけれど。これだけは、あの嫉妬深い上司には報告しないでおこう。
fin.