安室透と契約結婚
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5、妻と部下の交流
「あ、ご苦労様です」
インターホンが鳴ったため、玄関のドアを開けるとそこには相変わらず眉間に皺をよせた風見さんが待っている。
「名前さん、降谷さんから相手を確認せずに開けるなと言われているはずですが」
「すみません、一応モニターで確認したんですけど」
「それでも、まずはドア越しに。その後チェーンをつけたまま対応して確認してください」
「わかりました」
風見さんは降谷さんが長期任務に出てから、2~3日に1回くらいの頻度で私に状況確認のメールをくれた。私としても、寂しさあるけれど降谷さんのいないただの"1人暮らし"をしているようなものなので、"問題ありません"と返答する他ない。
今日は降谷さんが任務に行って1ヶ月以上過ぎたため、風見さんがわざわざ部屋まで顔を見に来てくれた。
「変わりありませんか?」
「はい、特に何もありません」
「食事はとっていますか?不摂生をしていないか、痩せてないかと降谷さんが気にしていました」
「あは、まだ1ヶ月なのに。成人女性相手に過保護ですよね~。お母さんみたい」
「……否定はしませんが、降谷さんには言わない方が良いですよ」
「問題なさそうなら失礼します」私の言葉に、珍しく小さく笑う風見さんだが私の現状確認がすんだ途端に、そう言ってすぐに玄関から出ていこうとする。
「え、わざわざ来てもらったのに悪いですよ。お時間があるなら、お茶でも飲んでいってください」
「しかし…降谷さんの留守中にあがりこむわけには」
「平気ですよ。そもそも私の事をあれこれ確認しろって言っておいて、それで怒るようなら私が文句を言っておきます。」
「良かったらどうぞ」と言って私はキッチンに向かう。風見さんは、少し思案するように視線をさ迷わせた後に、「お邪魔します」と言って後に続いた。風見さんにリビングのソファに座ってもらい、紅茶とケーキを用意する。
降谷さんこだわりの珈琲や紅茶も彼がいないと何となく飲む気にならず、紅茶を用意するのも久しぶりだ。元々、食にそこまでこだわりもないため自分1人になってからは簡素なものや出来合いのものが増えた。降谷さんがいたから、毎日食事は手を抜かずにレシピ本を見たりあれこれ手間暇かけていたが、自分のためにそこまでやるほど料理が好きなわけではなかった。
"痩せてないか"と、彼は心配していたようだが、あながち間違っていないかもしれない。まだ1ヶ月だが、これが更に何ヵ月も続くようならきっと彼の言うように"不摂生"によって痩せてしまうだろう。
まさか、ただの過保護ではなくて私の事をそこまで理解していての心配なのだろうか?
「大したものではありませんが、どうぞ。」
「あ、すみません。いただきます」
「そのケーキ、ネットで買ったんですけど、お店みたいに美味しいからオススメなんです。今って本当に便利ですよね」
「そうなんですか?」
「ええ。降谷さん、自分のいない間に私が不用意に外に出るのも心配みたいでしたから」
「否定は出来ませんが、名前さんがそこまでしなくても良いと思いますよ」
「いいんです、何かあって風見さんのお仕事を増やすのも申し訳ないですし。私、元々インドアだしズボラなタイプだから1人で家に籠ってるの嫌いじゃないんです」
「だから正直に言うと、食事もかなり手を抜いてます」そう言って、さっきまで考えていたことを、かいつまんで風見さんに話すと、風見さんは思いの外目を丸くする。
「…そうなんですか、降谷さんがあなたと結婚してから食事もきちんとした物が毎食出てくるし、家事もこなしてくれるから暮らしやすくなったと言っていたので、少し意外です」
「えー、降谷さんそんな風に言ってくれてるんですか?嬉しい」
私は思いがけない情報に顔がだらしなく緩むのを感じる。風見さんにそんな風に言っているなら、お世辞じゃなくて本音だと思っていいだろう。
「私たち、そもそも契約結婚じゃないですか」
「ああ、まあそうですね」
(降谷さんは今となっては、どう見ても名前さんにベタ惚れだけど…一応そうなのか)
風見さんは、何とも言えないよう顔をしながら曖昧に頷く。
「だから初めは扶養してもらう対価として、家事とか食事の用意くらいはちゃんとやるべきだろうと思って、結構気合い入れてやってたんです」
「なるほど」
「でも今は…頑張ってる降谷さんのために何かしたいなって純粋に思ってるから、風見さんが言ったように降谷さんが思ってくれているなら嬉しいし、少し安心しました」
私はそこまで言って少し照れ臭くなり目線を下に向けると、風見さんの空になったティーカップが目に留まる。
「あ、すみません。気付かなくて紅茶、おかわりありますけど」
「え、ああ…いただきます。これ初めて飲んだんですが、美味しいですね」
「ラベンダーを使ってるんです。疲労とかストレスに効くみたいで、降谷さんも泊まりの仕事が続いた後なんかによく飲んでます。風見さんもお疲れなんじゃないですか?」
「はは、そうかもしれません」
「お忙しいのに私の事まで気にかけてもらっちゃって、本当にすみません。用意してくるので、ゆっくりしていてくださいね」
私は風見さんが、ケーキを食べ終えた食器とティーカップを持って立ち上がる。
風見さんは、小さく頭を下げながら私の背中を見送っていた。
→続きます