安室透と契約結婚
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2、Trick or Treat
「名前お姉さーん!Trick or Treat!!」
「わ、歩美ちゃん達。あれ、今日ハロウィンだっけ?」
「あー!お姉さん忘れてたの?」
「じゃあイタズラしちまうぞ!」
降谷さんと結婚して以来、何となく避けていたポアロ。いろいろあって和解というか、良い感じにまとまったため、久しぶりに訪れてみたら店内に入った途端に少年探偵団の子ども達に囲まれる。遠めで、コナン君と蘭ちゃん達がこちらを見ている。こんなにいつものメンバーが来ているなら、安室さんの妻として成りきらなければならないし、今日は来なければ良かったかもしれない。
「あはは、残念でした。ハロウィン用じゃないけどお菓子持ってるからあげるね」
「えー、残念」
「何でもいいからお菓子くれ」
「元太君、失礼ですよ」
なかなか個性の強い子ども達だ。工藤君は中身は頭の良い高校生ながらに、よく子供たちの相手をやっているな、と感心してしまう。そんな事を考えながら、たまたま鞄の中に入れていた小分けのクッキーを1つずつ子供たちに渡していく。
「わーい、クッキー!」
「ありがとうございます!」
「食っていいか?」
「はい、どうぞ。こぼすといけないから、座って食べようね」
「ちなみに、イタズラは何をする予定だったんですか?」
子供たちとの会話にふと割り込んでくる声。そちらに目を向けると、珈琲を片手に100%営業スマイルを浮かべる安室さん。
安室さんスマイルと敬語で話しをしている姿を見るのは久しぶりだ。人当たりの良さそうなイケメンには変わりないが、家での"降谷零"に慣れてしまうと何となく胡散臭く見える。
「くすぐり攻撃だよー!」
「俺たちうまいんだぜ」
「これをやると、みんな降参しますからね」
意気揚々と話す子供たちの言葉に肝が冷える。クッキー3枚でそんな攻撃を受けずにすんで良かった。
「はは、それはいけませんね。名前さんはそういう攻撃には弱いんです」
「な、」
「えー!安室さんの言い方なんかやらしー!」
「まあ、夫婦ですからね。ご想像にお任せしますよ」
「やだーっ!ちょっと名前さん、久しぶりに来たんだから、安室さんとの甘い新婚生活の話聞かせてよ」
「あ、私も気になります!」
何を言い出すんだと、文句を言おうとしたが既に遅い。目を輝かせた園子ちゃんと蘭ちゃんに囲まれる。
これは、これで先ほど子供たちに囲まれた時よりも都合が悪い。安室さんとどうこう以前に、人前で自分の恋愛事情を話すのは苦手なのだ。
それなのに、まさか本人である降谷さんの前であれこれ質問されるなんて身が持たない。
「人前でなんて事をいうんですか」
一通り当たり障りないように女子高生達の質問に答えると、カウンターに避難して腰をおろす。用意してあったかのようなタイミングで、私の前にサラリと珈琲を置いた降谷さんにジトリと不満気に視線を向けるが、その表情は至極楽しそうだ。
「園子ちゃんを煽るのやめてくださいよ、ああいうの苦手なんです」
「僕との事をからかわれている名前さんを見るのが好きなんですよ、可愛くて。その姿は家では見れませんから」
「な、」
「ところで名前さん、僕もいいですか?」
「……何ですか?」
意図のわからなくて、安室さんの仮面を被った降谷さんに目線を向ける。すると、降谷さんは身を乗り出すように私と距離を詰めると、カウンター台に頬杖をついてニヤリと艶めかしい笑みを浮かべる。
「名前さん、Trick or Treat」
「…は?お菓子は子供たちにあげたので最後ですけど……」
「そうですが。では今日の夜は、とびっきりのイタズラを覚悟していてくださいね」
キャーッ!と、まるで悲鳴のような女子高生たちの歓声が背後で上がる。
いつから聞き耳をたてていたのか、私は全く気付かなかったが、降谷さんがその事に気付かないわけがない。
だけど、私は妖艶な笑みとともに告げられた言葉に返す言葉もなくただ顔を真っ赤に染め上げる事しか出来なかった。
fin.