高揚編
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「快斗…どうしたの?」
名前がくるり振り返るとそこには、僅かに息を切らして難しい顔をした快斗が立っていた。
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「えーっと…あのさ俺、」
「おい、黒羽!」
快斗が少し考えたあとに気まずそうに口を開くと、川崎が名前の後ろから快斗の名前を呼ぶ。
二人の間に挟まれている名前は、何となく口をつぐんで二人の顔を見比べる。
「こんな所まで何しに来たんだよ?」
川崎は眉を寄せて快斗を見る。
「………。」
快斗はその言葉に少し困ったように、頭を掻く。
「わざわざこのタイミングで出てきたんだぜ?それなりの理由があるんだよな」
川崎の言葉に気まずそうにしていた快斗もふいに真剣な表情に変わり、川崎と視線を合わせる。
(…このタイミング?)
そんな中、いまいち状況がつかめない名前は首を傾げる。
三人の間に僅かな沈黙が流れた後に、快斗が名前をチラリと見てから口を開く。
「俺…は、名前が他の奴とこうやって話てるのが嫌だから…名前を連れ戻しに来たんだけど…それじゃ駄目か?」
「……は、」
名前はその言葉にポカンとして小さく声を出すが、快斗は構わずスタスタと名前に近付いてきて、そのまま名前の手を掴む。
「川崎…悪ぃな、名前は譲れねーから」
その言葉と、突然捕まれた手に名前の顔はじわじわと赤く染まる。
「………。」
そんな名前の顔を見て、川崎は驚いたように目を丸くするが、負けじと口を開く。
「何なのお前ら、ただの友達なんだろ?」
「……今はな、」
快斗は川崎に負けじとはっきりとそう返す。名前は自分を取り囲む微妙な空気に困ったように視線をさ迷わせるが、それに気付いた川崎は小さくため息をつく。
「名前さん困ってるし、もう雰囲気とかぐちゃぐちゃだから今日のところは引いてやるけど。次はないからなら」
「………川崎、」
「だいたい、お前が嫌だとしても今は"友達"なら、こんな風に割り込むのはルール違反だぜ?」
そして快斗の耳元で「文句があるなら、お前も同じ土俵にたってみろよ」と、告げた後に、快斗の返事を待たずにくるりと名前に向き直って、爽やかな笑顔を向ける。
「名前さん、今日は話を聞いてくれてありがとう。今日のとこところはもう済んだから、黒羽と戻りなよ」
「え…あ、うん」
名前が戸惑いがちにそう返すと、眉を寄せている快斗はチラリと川崎に視線を合わせた後に、名前の手を引いて教室に戻っていく。
バタンと閉まった屋上の扉を見つめながら、屋上に残された川崎は頭をガシガシ掻いてフェンスにもたれる。そして、先程のやりとりで赤面していた名前の表情を思い出す。
「何だよ…黒羽の奴、これじゃ俺がけしかけたみたいなもんじゃねーか」
川崎は一人残った屋上で自嘲気味にポツリと呟いた。