高揚編
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自分を呼び出したらしい、教室の入口に立っている男子生徒に心当たりがなく名前は首を傾げる。
「…何かしら?」
card.93
「あっ、あれ隣のクラスの川崎君よ」
恵子が少し小さな声で名前に耳打ちする。
「川崎君?」
「名前ちゃん、転入してきたばっかりだから知らないかな?野球部でスポーツも得意だからって結構人気あるんだよ!……川崎君も、隣のクラスだから私達と一緒で今日は自習なのよ」
恵子の説明に名前はふぅんと小さく相槌を打つ。
「川崎君、野球部なんだ」
小さく呟かれた名前の言葉に,快斗がピクリと反応する。
「名前…興味あるのかよ?」
「え?興味というか、関西にいた頃の友人の影響で野球大好きなの。そういえば甲子園まで見に行ったりしたな~って思い出して」
「え?」
その時の事を思い出したのか、楽しそうに笑いながら、名前はガタリと立ち上がる。
「何の用事かよく分からないけど…とにかく行ってくるね」
ポカンとしている快斗を尻目に、名前は青子達にそう告げるとスタスタと川崎の待つ入口に向かう。
「……。」
他のクラスの男子生徒が、わざわざクラス他の生徒の前で女子生徒を呼び出したとあって、何となく教室内は静まり返る。
興味深そうに名前の動きをみんなが目で追うが、本人はそんな視線に気付いていないのか、全く気にせずに川崎と2~3言交わした後に、2人でどこかに向かってしまう。
「「……。」」
「快斗~いいのかよ?」
その光景を見てしばらく黙っていた5人だが、ポツリと桜井が呟く。
「そ、そうよ!快斗追いかけなくちゃ!!」
「今の感じ、名前ちゃんは全く気付いてなかったみたいだけど、きっと告白の呼び出しだよ!名前ちゃん野球が好きだって言ってたし、川崎君の事気に入っちゃうかも!このままで良いの?」
青子と恵子も桜井に続けて快斗を慌てたように問いただす。
「あーっ、……うるせーな!…だからって追いかけていけるかよ、かっこ悪ぃ」
快斗は言われなくても分かっていたようで、頭をガシガシと掻きながらため息をつく。そんな快斗を見て林が頬杖をつきながら口を開く。
「かっこ悪いのは、今のお前だよ…快斗」
「あん?何だよ…清人」
「お前がどれだけ名前ちゃんの事を本気なんだか知らねーけどよ、そんな一瞬のプライドも捨てられずに、追いかけられないようじゃ…例え川崎じゃなくても、そのうち他の奴に盗られちまうぞ」
いつものふざけた様子とは違い淡々と告げる林に、快斗は僅かに目を見開いた後にガタリと立ち上がる。
「……快斗?」
青子が突然立ち上がった快斗に声をかけるが、快斗は小さく息をついた後何も言わずにダッと教室から駆け出していく。
「「……。」」
駆け出していく快斗を見送ったあと、残った4人はどこか安心したように小さく息をつく。
「清人…お前良い事言うじゃん?」
「うるせー、快斗が気になってるくせに、いつまでも素直にならずにウジウジてるからだよ」
「どうなるかしら?」
「とりあえず告白を阻止出来れば良いけどな」
4人は思い思いの事を口にしながら、快斗が出て行った扉に目を向けた。