「クリスタル・マザー」編
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「"クリスタル・マザー″は無事ですわーっ!!」
陛下が頭上に掲げた輝く宝石目掛けて、ポンッとトランプのカードが発射された。
card.83
「え?」
トランプはカコン…と宝石に当たり、ヒヒュルル…と宝石は陛下の手から離れて宙を舞う。そして、吸い込まれるようにある方向に飛んでいく。
「……。」
名前は、宝石が飛んでいく方向をジッと目で追っていく。
--パシッ
そして列車の窓辺に立つ白い怪盗の手が、輝く宝石を掴む。列車の窓は怪盗キッドにより開け放たれているため、白いマントがヒラヒラとたなびいている。
「か…怪盗キッド!」
「再びお目にかかれて光栄ですよ、女王陛下…」
「お…愚かな…ここは列車の中…!貴方の逃げ場はもうありませんよ!!」
「ふふ…陛下、覚えておいてください…怪盗キッドは神出鬼没」
そう呟くとキッドはシルクハットのツバをスッと握る。その姿に名前は、ピクリと反応する。
(キッド…もう逃げちゃう)
名前は、焦ったように一歩踏み出すが、キッドは緩やかな弧を口元に浮かべて言葉を紡ぐ。
「そして…貴方はクイーンである前に、ハートを持った母親であることをお忘れなく」
「なっ!」
その言葉に陛下は戸惑ったように声をあげる。
(キッド、フィリップ王子の事を言ってるのかしら?快斗と仲が良さそうだったし)
名前はチラリと陛下に視線を向けると、その横顔は僅かに狼狽しているように見える。
「………。」
名前はその横顔に何かを感じとり、小さく目を見開く。
--ポンッ
そんな陛下と名前を尻目に、キッドは、「では…」と、呟いた後にいつものような煙幕とともに消え去る。
「ま…待て!待て、キッドォ!!」
「キッド!!」
慌てて列車の窓から顔を出す中森を追って、名前も窓から顔を出して外を見る。
外は暗闇に包まれているが、列車から少し離れた所を飛んでいる白い影が僅かに見える。
「よーしっ!電話でこの辺一体に非常線を張らせろ!奴を逃がしてはならんぞっ!!」
中森は窓から離れて、列車内の警察に声をかける。しかし名前は窓から見える白い影をジッと見つめている。
(……よく見えないけど、あれは…プロペラ?だとすると、あの白い影はきっとダミーね)
「……。」
名前は列車の窓から視線を上に向けて決意をこめたように小さく息をつくとクルリと踵を返す。そして、スタスタとどこかに向かって行った。