接近編
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2人は向かい合って座って、それぞれメニューを見つめる。結局あまり遠くまで行く時間もなかったため、名前の家の近くにあるファミレスに入った。
「俺は、ハンバーグセットにするよ。あー、何か甘いもんも食べよっかなー?名前は決まったか?」
「うん。店員さん呼ぶね」
楽しそうにメニューをパラパラとめくっている快斗の姿に、名前は小さく微笑みながら呼び出しボタンに手を伸ばした。
card.71
「え?魚が嫌いなの?」
「ああ。もう見るのも食べるのも嫌、本当に無理。名前は?苦手なものある?」
「んー、だいたい食べられるけどあんまり辛いのは苦手かな」
何気ない会話をしながらも、お互いほとんど料理を食べ終えると、名前は少し温くなったお茶に口をつける。
「名前は、学校に慣れたか?」
「…え?」
「いや、さっき中村…先生も言ってだけどさ。冗談抜きで何か困ってねェ?」
「ふふ…大丈夫。みんな優しいからね。それに、快斗もいるし?」
名前は少し迷いながらも、最後の言葉を付け加えて快斗を見てニッコリと笑って見せる。
「…!そっか、何か困ったら本当に遠慮しないで何でも言えよ」
青子達に開き直ってからというもの、冗談なのかと思うくらい分かりやすく、一方的に名前にアピールを始めた快斗。
しかし元々は快斗の一目惚れのため、こういう名前の発言で一気に心拍数は上がり形勢逆転してしまうのだ。
「それより、」
そんな中、ドキドキと胸を高鳴らせている快斗を尻目に、名前は一息ついて急に真剣な眼差しで快斗を見つめる。
(げ、…この視線と雰囲気はやべェ気が)
快斗は雰囲気の変わった名前の様子に狼狽えながらも、黙って名前の言葉の続きを待ちながらゴクリと息を飲む。
「…快斗こそ、私に何か言う事ないの?」
名前はテーブルの上で両手を組んで、快斗をジッと見つめる。
「……何かって?」
「……私ね、"彼″には聞くけど、あなたにはストレートに核心をついた問い掛けはしないって決めたの」
「?」
「…何故だか分かる?快斗の口から聞くなら、無理矢理じゃなくて…本当に自分から話したいと思った時に言ってもらいたいからよ」
(怪盗キッドの時には遠慮なく追及するけど、俺…"黒羽快斗"には聞かないって事か)
快斗は何も答えずに、名前を見つめ返す。
「…ここまで勘づいてるし、否定もするつもりないのに。私、そんなに信用出来ないかな」
名前はフッと視線を逸らして、どこか困ったように悲しげに呟く。
「…名前」
--ぼっちゃんの想い次第ですよ--
ふいに、快斗の頭に寺井の言葉が響いてきて快斗は目の前の名前をジッと見つめたまま考え巡らせる。
(……俺は、多分自分が思ってる以上に名前の存在が大きくなってる。ジィちゃん、これジィちゃんの言う"全てを知っていてもらいたい相手″って奴なのか?)
快斗は小さく息を吸った後に、「名前…」と、改めて名前の名前を呼ぶ。名前は、その音色に期待と不安が入り混じった視線を快斗に向ける。
「……俺、」
--ピリピリ…
その時、ふいに2人の間に聞き覚えのある電子音が響く。
「……。」
「……。」
「…出ねーのか?」
「…んー、うん。ちょっとごめんね」
名前はため息をついて携帯を取り出すと、着信相手を見て更に大きなため息をついた。