「純黒の悪夢」編
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薄暗い室内でパソコンのモニターをジッと見つめる1人の女性。
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所属:MI6
コードネーム:スタウト
所属:BND
コードネーム:リースリング
所属:FBI
コードネーム:ライ
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女性は、一人一人の指名と顔写真を確認しながらカチカチと画面をスクロールしていく。
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所属:CIA
コードネーム:キール
所属:警察庁警備企画科
コードネーム:バーボン
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画面に表示された指名に女はピクリと眉を上げるが、表情を変えないまま全ての指名を確認し終える。そして、ポケットから五色のカラーフィルムを取り出してそれをジッと見つめる。
「そこまでだ!机から離れて手を上げろ!!」
「!?」
その時パッと室内の明かりが灯り、スーツ姿の男達がゾロゾロと入ってくる。その先頭には風見が立っている。
「ふ、残念だったな。お前達の動きはお見通しだ」
「それはどうかしら?」
女を確保しようと風見達が拳銃を構えるが、女はタンッと地面を蹴って風見達の元に突っ込むと動揺する男達を一気になぎ倒していく。
「うぐ……くそっ、待て!!」
まわし蹴りを食らった風見が床に倒れ込んだ隙に、女は部屋を飛び出して駆け出して行く。
「逃がすか!!」
「!?」
しかし突き当たりの角を曲がったところで、待ち構えていた降谷と鉢合わせになり女は驚いて足を止める。
-----ドカッ!!
「っぐ!!」
防御する間もなく降谷の蹴りを食らった女は一瞬体勢を崩しかけるが、すぐに体勢を建て直すと降谷の脇をすり抜けて4階の窓から外に向かって戸惑いなく飛び降りる。
「何っ!?」
降谷が慌てて窓に駆け寄って下を覗き込むと、女は植え込みの木を利用して軽やかに着地し駐車場に停車されていた車を奪って猛スピードで逃走していく。
「ふ、降谷さん!あの女は!?」
「外だ!!車を出せ!!絶対に逃がすな!このままアレが奪われたら、世界中が大パニックになるぞ!!」
女の後を追って駆けつけた風見に向かってそう大声で指示を出すと、降谷も急いで建物から出て自身の愛車である白のRX-7に乗り込む。
----ヴォォォォン!!!
アクセルを一気に踏み込んで激しいエンジン音を上げながら道行く車や歩行者を避けて、猛スピードで女の乗った車を追跡する。
「………ッチ」
みるみるうちに後方に迫って来る降谷の車をバックミラーで確認した女は、小さく舌打ちすると片手でスマホを操作してメッセージを作成する。
『ノックはスタウト、アクアビット、リースリング、あなたが気にしていたキールとバーボンは……』
---ガンッ!!ガガガガガッ!!
そこまで打ち込んだところで、突然車内に激しい衝突音と衝撃が走る。
「っ!くそっ!!」
スマホから視線をあげると女が乗る車の隣にピタリと降谷のRX-7が並走し、車体を壁に押し付けて車を停車させようとしている。女は文章の途中で送信ボタンを押しスマホを助手席に放り投げると、アクセルを踏み込むのと同時に勢いよくハンドルを切って自分の車を壁に押し付けていた降谷の車から何とか逃れる。しかし、ホッと小さく息を吐き出したタイミングで後方から赤いマスタングが猛スピードで迫ってくるのが見える。
「………ッチ、次から次へと!!」
女は苛々したように呟きながらギリギリまでアクセルを踏み込み、追跡を逃れるために首都高を爆走していく。
----ゴォォォォ!!
「あの車は……赤井!?」
自分の車の横を駆け抜けて女の車を追跡する赤い車体を見た降谷は、ハッと息をのむとハンドルを握る手にギリギリと力を込める。
「下がれ、赤井!!奴は公安のモノだ!!」
そして更にアクセルを踏み込んで、二台の車の後を追う。三台の車が猛スピードで駆け抜ける首都高の上空に、一つの影が動いていることに誰も気付いていなかった。
card.661
*純黒の悪夢編
「名前ちゃん、昨日のニュース見た?」
「ええ…首都高湾岸線で工場の爆発と大規模停電あったやつでしょ?それがどうかした?」
朝から名前の部屋を訪れた快斗は挨拶もそこそこに、神妙な面持ちでそう尋ねてくる。名前は首を傾げながらも、昨晩速報が入ったニュースを思い出してそう言葉を返す。
「実は昨日、俺あの時間ちょうどあの辺りを飛んでてさ」
「飛んでた…?え!?昨日って、何か予告状出してた?」
「いやいや、ちょっと上空からあの辺りの下調べをしたくてさ。ぐるーっと旋回してただけなんだけど……その爆発、原因不明って事になってるだろ?」
「ええ、そうね。あれだけ大きな爆発なのに原因不明で、今朝になってもその後の続報がないから気になってはいたけど……」
いつになく歯切れの悪い快斗の様子に嫌な予感を抱きながらも、名前はそう言葉を返す。
「俺、見たんだよ。爆発の直前に三台の車が猛スピードで首都高を走っててさ、見た感じ先頭を走る一台の車を追いかけてたみてーなんだけど」
「………それで?」
「その途中で二台がクラッシュして、追いかけられてた車が高架下の工場に落っこちたんだよ」
「え、それが爆発の原因だったの?」
「……ああ」
「そう……何だかおかしいわね」
そんな大事故だったらもっと詳細に報道されそうなものだし、そもそも原因不明とは発表されないはずだ。
「もしかして報道規制されてるのかしら?逃げてたのが、まだ世間に公表されてない重大事件の犯人だったとか……」
何気なく呟いた名前の言葉に、快斗がピクリと肩を揺らす。それに気付いた名前が「快斗?まだ何かあるの?」と尋ねると、快斗は眉を寄せながら口を開く。
「その追いかけてた二台の車の一台が、安室さんの車だったんだよ」
「…え?本当に?」
「ああ…マツダの白のRX-7。俺、乗せてもらったことがあるから間違いない。あれは安室さんの車だった」
「…って事は、組織か公安絡み?報道規制がかけられるって事は公安かしら。安室さんの車は無事だったの?」
「上から見た感じ車は無事だったけど……何せすげー派手な逃走劇で、ガッシャンガッシャン三台の車がぶつかり合いながら走り回ってたからな。さすがの安室さんも怪我してるかもしれねーな」
「そう……心配ね。大丈夫かしら?」
名前は神妙な面持ちで、眉を寄せながらポツリと呟く。
「昨日それを見ちまったから、安室さんが何かやべー事に巻き込まれてるんじゃねーかと思って気になってさ」
「うーん、そうね。でも組織に関係のない公安絡みの案件だと私達に話してくれるかどうか……」
名前は顎に手を当てながら、小さく息を吐き出して思案する。安室と協力関係にはなったものの、それはあくまで組織絡みの問題だ。公安の抱えてる案件は組織の問題だけではないだろうし、そこに一般人の名前達が立ち入るべきではない。
「けど、やっぱ心配だろ?休んでるかもしれないけど、駄目元でポアロ行ってみねーか?元気で働いてりゃ、それで解決だし」
快斗の思いがけない提案に、名前はパチパチと目を瞬かせて快斗に視線を合わせる。
「それは構わないけど……どうしたの?やけに積極的じゃない」
「いや…名前ちゃんの記憶がない時に、安室さんには世話になったからさ。乱暴な言い方だけど、一応励ましてもらったし……俺にも何か出来る事ねーかな、と思って」
少し恥ずかしそうに頭を掻きながらも、思いの外真剣な表情でそう話す快斗。
「ふーん?」
「………何?そのニヤケた顔。どんな顔してても可愛いけど」
「んー?最初はあんなに嫌ってたのに、随分懐いたなぁと思って」
「なっ!別にそんなんじゃねーよ!」
「ふふ……でも記憶喪失の件で借りがあるなら、私も無関係じゃないわね。そうと決まれば早く行きましょ」
慌てたように否定する快斗の姿を見て、名前は可笑しそうに笑いながらも快斗の手を引いてそう言葉を返した。
「お、ちびっこ探偵団がいるぜ?」
「博士もいるわね……このメンバーで、哀はともかく新一がいないなんて。探偵事務所にいるのしら」
「アイツの事だから、また何か事件かもしれないぜ?」
ポアロについた名前達は、ひとまず外からこっそり中の様子を確認している。ポアロのマスターが接客しているのは見えるが、安室の姿は外からは確認出来ない。その代わりに、見慣れた子供達がワイワイとパフェを頬張る姿とこちらに背を向けて座る阿笠の背中が見える。
「とりあえず、中に入ってみようぜ」
「……そうね」
二人はカランカランとベルの音を鳴らしながら店内に入るが、お喋り夢中の歩美たちがこちらに気付く様子はない。名前が顔見知りのマスターに軽く会釈しながら店内を進んで行くと、名前達に背を向けて座っている阿笠が誰かと電話している声が聞こえる。
「もしもし、コナン君か?……何?頼みたいことがある?それは構わんが……携帯のデータの復元?」
「……………。」
(電話の相手は新一みたいね。博士に頼み事なんて……やっぱり何か事件かしら)
名前は隣を歩く快斗にそっと目配せし、人差し指を立ててシーッと音を立てないように合図を送る。そして二人はゆっくり阿笠の背中に向かって近付いていく。
「ああ。子供達が彼女が取り乱した時に言っていた言葉をメモしていたらしい。……えーっと、スタウト、アクアビット、リースリングと言ってたそうじゃ」
「!」
(お酒の名前?彼女って、誰の事かしら……)
(まさか……組織絡みか?)
阿笠の言葉に、名前と快斗はハッと息を飲んで顔を見合わせる。
「え?安室君か?いや、そういえば今日は見てないな……」
電話先で安室の事を聞かれたらしく、阿笠がそう言いながら店内のカウンターに目を向ける。すると会話が聞こえていたのか「安室くんなら今日はお休みですよ。今朝、急に休ませてほしいと連絡があって。折り返しても繋がらないんですよ……体調でも悪いのかな?」と、マスターが心配そうに眉を寄せながら阿笠に告げる。それを聞いた阿笠が、電話に向かってマスターから聞いたことを話ながら「……だ、そうじゃ。何もなければいいが。心配じゃのぉ」と、小さくため息をつく。
「安室さんの事を気にしてるっぽいし、この感じだと名探偵も昨日の件で動いてんな」
「ええ…しかも、おそらく組織絡み」
「それにしても……名探偵も安室さんと連絡とれてないみたいだな。今日も突然休んでるみてーだし、やっぱり何かあったんじゃねーか?」
阿笠の断片的な言葉から推察したことをコソコソと話す名前と快斗。その視線の先では「分かった。とにかく家に戻ってその携帯電話を修復してみる。哀君が持ってるんじゃな?ああ……コナン君は、落ち着いたらワシの家に来てくれ」と、阿笠が通話を終えようとしている。
「とりあえず、あのジィさんから事情を聞いてみようぜ」
「そうね……新一に聞いても組織の事となると素直に話してくれるか分からないし。子供たちも何か知ってるかもしれないわ」
背後で二人が聞き耳をたてていた事に気付かないままコナンとの通話を終えた阿笠は「さて、そろそろ帰るぞ」と、子供たちに慌てて声をかけている。どうやら急いで帰ってコナンから頼まれた作業に取りかかりたいようだ。その背中に向かって「博士」と、名前が呼び掛ける。
「ん?名前君に黒羽君じゃないか!いつの間に……」
「あー!名前お姉さんだ!」
「手品の兄ちゃんじゃねーか!」
名前を呼ばれて振り帰った阿笠が二人の姿を見て目を丸くしている後ろで、歩美達が笑顔で手を振っている。
「博士が電話してる時に来たのよ。ところで、今の電話コナン君よね?」
名前は歩美達にヒラヒラと手を振り返しながら、阿笠に向かってそう尋ねる。
「あ、ああ……そうじゃが」
「それで、アイツから誰かの携帯電話の復元を頼まれた」
「ええ!?」
名前に続けて快斗がそう言うと、阿笠は戸惑ったように声をあげる。
「ごめんなさい、電話の話だいたい聞こえてたの……それで、お願いがあるんだけど」
「お願い?」
「コナン君が調べてる事件の話、詳しく教えてほしいの」
「いや、それはじゃな……」
「お願い。別件で安室さんが心配でここまで来たんだけど、新一の調べてる件と関係あるかもしれないの……さっき話てた感じだと、そっちの問題も安室さんが何か関係してるんでしょ?」
名前が周囲に聞こえないように小声でそう耳打ちすると、阿笠はピクリと肩を揺らす。
「オメーらも、さっきウィスキーの名前を誰かから聞いたって話してただろ?その話、詳しく教えてくれねーか?」
その横では快斗がニッコリ笑って歩美達にそう話しかける。
「詳しく話してくれたら、お礼に飛びっきりすげー手品見せてやるぜ?」
「えー!?本当?」
「今日、僕達はここに来る前に東都水族館に行ってきたんです!!」
「ほー?確か、最近リニューアルしたって話題になってたな!」
「そうなんです!凄い人でしたよ!イルカショーも見てきました!」
「へー、良かったじゃねーか。他には何があったんだ?」
「それがよー!アトラクションに向かう途中に俺が高いところから落っこちそうになったのを、目の色が違う姉ちゃんが忍者みたいに助けてくれたんだぜ!!」
「目の色が違う姉ちゃん?」
興奮したように話す元太の言葉に、快斗は不思議そうに首を傾げる。
「そうなの!そのお姉さん記憶がないみたいで、刑事さん達と病院に行ったんだけど……哀ちゃんが怖い顔して、歩美達は着いて行っちゃ駄目だって……心配だから一緒に行きたかったのに」
「コナン君だけ着いて行ったんですよ!」
「相変わらず、抜け駆けばっかりしやがって!ムカつくよなぁ!」
「………へー、そりゃ残念だったな」
(哀ちゃんが怖い顔?……って事は、その女が組織の関係者って事か?)
名前が阿笠からコソコソと事情を聞いている横で、快斗も順調に子供達から話を聞き出していく。そして興味深い人物の話を引き出した快斗は、「なあ、その姉ちゃんと会ったときの事……もう少し、詳しく教えてくれねーか?」と、歩美達に向かって笑顔で尋ねた。
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