「喫茶ポアロで謎解きを」編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ありがとうございましたー」
安室は店を出る客を笑顔で見送りながら、チラリと店内に目を向ける。
(今日は約束の日だと言うのに、まさか彼らも店に来るとはね……)
card.638
喫茶ポアロで謎解きを編
「しっかし、この為だけにわざわざ東都まで来るとはなー。すげぇ行動力じゃねーか」
「うるさいわ、ボケ!!こういうのはシチュエーションが大事やろがい!」
「まあ、そうかもしれないが……いいのかよ?今日で」
「あん?今日何かあるんか?」
「それは……」
「今日が13日の金曜日、だからですか?」
コソコソと話をしていたコナンと平次の元に珈琲を運びに来た安室が、ニッコリと笑いながら声をかける。
「な、何や?あんた……」
---カラン、カラン
突然会話に割り込んできた店員に平次が戸惑ってると、来客を知らせる扉の音が響く。
「あら…平次?何でこんな所にいるの?」
「名前!?お前こそ何で…」
扉の開く音につられて、何気なく入口に目を向けたコナンと平次。すると、店に入ってきたのは自分達の友人である名前だったため、二人は驚いて目を丸くする。そんな二人を尻目に、珈琲をテーブルに置いた安室が小さく笑う。
「僕がお呼びしたんですよ。この後、少し約束がありまして」
「名前とあんたが何の約束してるんや!?」
「おいおい、言っとくけど俺もいるからな」
不審そうに眉を寄せる平次に向かって、名前の後ろからひょっこり顔を出した快斗がジト目を向ける。
「へー、名前お姉さんと快斗兄ちゃんまで。安室さんに何の用事?」
不思議そうにしている平次とは対照的に、コナンは不満そうに二人を見る。
「…………。」
(まさか新一がいるなんて……あの日以来会ってなかったから、気まずいわね)
「俺ら、一緒にビルから車で飛び出した仲だからな!あれ以来気があっちゃってさ~」
名前が気まずそうに視線をそらしている横で、快斗はヘラリと笑いながらそう答える。
「ビルから車で?何の話や?」
「ハハハ。ま、とにかく座ってくださいよ。ご注文は?」
平次が不思議そうに首を傾げているのを横目に見ながら、安室は快斗と名前をコナン達の隣のテーブルへと促す。二人は飲み物だけ注文をすませると、改めて隣のテーブルに視線を向ける。
「それで?平次は何してるの?」
「い、いや…それは…」
「?」
名前の質問に、もごもごと口ごもる平次。その様子に名前と快斗が不思議そうに顔を見合わせていると、コナンが呆れたように口を開く。
「銀座でやってるイルミネーション見に来たんだってー」
「え、一人で?」
「アホ!!んなわけあるかい!和葉を誘って来たんや!!」
「和葉ちゃんを?」
「へー、告白でもすんの?」
「ぶっ!!」
快斗がサラリと尋ねた質問に、平次は分かりやすく珈琲を噴き出す。それを見た名前は、パッと顔を輝かせる。
「え!?本当に?やっと告白するの?」
「やっとって何や!!」
「でもさー、平次兄ちゃん何か悩んでるみたいだよ」
「……名前さんと黒羽君に相談してみたらいかがです?」
「え?」
名前達の元に珈琲を持ってきた安室が、ニッコリと笑いながら平次に話しかける。
「お二人がお付き合いしているという事は、いわば君の先輩にあたるわけですから」
安室の言葉に、名前と快斗は思わず顔を引きつらせる。
「そんな…私たちなんかより、安室さんの方がいろいろ詳しいでしょう?」
「そうそう!大人の目線からアドバイスしてやってくれよ!」
(こいつ…まだ俺らの事を探ろうとしてんのかよ)
自然な流れで自分達の情報を引き出そうとする安室。二人は苦笑しながら話を反らそうとするが「あいにく、僕はここしばらく恋人がいませんからねぇ」と、涼しい顔をしている。
そんな中、平次が不満気に眉を上げながらチラリと快斗に視線を向ける。
「ほな、"先輩"とやらに詳しく聞かせてもらおやないか!」
「……何だよ?」
「お前は、いつ、どこで、どんな風に、何て言って告白したんや!?」
「……………。」
(ハハハ、必死だなコイツ)
ガバッと身を乗り出して快斗に詰め寄る平次の姿を、コナンは呆れたように横目に見ながら傍観者を決め込む。
「……そう言われてもなぁ」
「何や?言えないんか?」
困ったように言葉を濁す快斗に、平次が更に詰め寄る。そんな二人のやり取りを見て、名前は諦めたようにため息をつく。
「残念だけど、私たちの話は平次の参考にはならないと思うわよ」
「何でや?」
「そもそも、先に言ったの私だもの」
「「え!?」」
名前がサラリと告げた言葉に、平次だけではなく、コナンも思わず声をあげる。
「何だよ、そんなに驚くか?」
「い、いや…快斗兄ちゃんの何がそんなに良いのかなーと、思って」
「ふっ、ハハハ!コナン君は、黒羽君に何か不満があるのかい?」
安室が吹き出すように笑いながらコナンにそう尋ねると、コナンは慌てて「い、いや…別に」と言葉を濁す。
「……………。」
(名探偵のやつ、あの店員に余計な事言わねーだろうなあ?)
快斗は、そんなやり取りを不満そうに見つめている。
「ちなみに、名前はどこでコイツに言ったんや?」
そんな中でも、自分の告白に向けて知識を増やしたい平次は名前達に質問を重ねる。
「どこって…普通に、屋内?何てことない部屋の中よ」
(まさか…鈴木財閥のパーティーがあった、船の船室とは言えないし)
まだ怪盗キッドの正体については安室にバレていない状況のため、名前は快斗とキッドの繋がりを気づかれないように注意しながら言葉を返す。
「何やそれ?何でそんな場所で言ったんや?」
「何でって……」
(平次ったら、グイグイくるわね)
名前は、困ったように快斗にチラリと視線を向ける。
「……思わず言っちまった感じだったよな?ちょっと、喧嘩?っぽくなって…その勢いで、みたいな」
名前の視線を受けて、快斗も言葉を選びながらそう答える。
「ほー、そんなパターンもあるんか。そんで?その場で付き合うことになったんか?」
「いや、俺はその時ちょっと急いでたから…何にも言わずにその場を離れちまって」
「何やソレ!?最低やないか!名前の勇気を何やと思っとるんや!!」
「うるせーな!!仕方ねーだろうが!!俺だって、いろいろ事情があったんだよ!」
率直な平次の言葉に、快斗は心外だというようにムキになって言葉を返す。そんなやり取りを見て、名前は苦笑しながら口を挟む。
「いいのよ。私が言ったタイミングが悪かったんだし、後からちゃんと返事しに来てくれたんだから」
「ふーん?」
「ほら、私たちの話は参考にならないって言ったでしょ?そもそも平次は、何を悩んでるの?イルミネーションを見ながら告白なんて素敵じゃない」
名前がそう言うと、平次は安堵したように息をつきながらも「そうやろ?わざわざその為に来たんやから!!せやけど、日にちがなあ…」と小さく呟く。
「日にち?」
「ほら、今日って13日の金曜日でしょ?」
首を傾げる名前に、今まで黙っていたコナンが変わりに答える。
「へー、日にちとか気にするもんか?そもそも13日の金曜日って、何がダメなんだっけ?ホラー映画のイメージくらいしかねーけど」
「その日が不吉だと言われている理由には諸説あるんですよ」
頬杖をついて不思議そうに尋ねた快斗の質問に、安室がそう言いながら説明を始める。
「よく言われているのが、キリストの最後の晩餐が13人で行われたから。13は12新法から外れたキリの悪い数字だからとか。そして、キリストが磔刑に処されたのが金曜日。そうそう、ケネディ大統領がダラスで暗殺されたのも確か金曜日でしたね」
「……………。」
安室が淡々と告げる説明を聞いていた平次は、次第に落ち込んだように肩を落としていく。
「で、でも…好きな人に好きだって言ってもらえるなら、場所とか日付なんて大して気にならないと思うわよ」
「そうそう!!俺だったら、名前ちゃんに告白されるんなら、道端でも便所の前でも嬉しいぜ!」
「…………。」
(便所は言い過ぎだろ…)
落ち込んだ平次に気を使って、慌てて励そうとする名前と快斗を見ながら、コナンは乾いた笑いを浮かべる。
「まあ、ここは日本ですし…そこまで気にする事はないと思いますよ。銀座のイルミネーションは評判も良いみたいですし…当初の予定通り、好意をよせる方に想いを告げてみては?」
「お、おう…」
そんな中、安室がニッコリ笑ってそう言うと、平次も気を取り直したようで頬を染めながら頷いてみせる。
「……うまくいくといいな」
再びコナンと何かを相談し始めた平次をチラリと見ながら、快斗は名前に話しかける。
「ふふ、そうね。告白さえすれば、結果は問題なさそうだけど。問題は、平次が恥ずかしがらずに言えるかよね…」
「名前ちゃんはさー、本当はそういうの気にするタイプ?」
「え?」
ふいに尋ねられた質問の意味が分からず、名前は不思議そうに首を傾げる。
「イルミネーションとか、記念日とか。もっと、ロマンチックに告白されたかった~とか思ってる?」
「……私から言ったんだから、そんな事思ってないわよ」
「えー?でもさ…俺が返事をする場所を、とびっきりロマンチックな場所にすれば良かったわけじゃん?今考えてみたら、そうした方が名前ちゃんも喜んだかなーと思って」
平次が告白のシチュエーションやら日にちにこだわっているのを見たせいか、快斗はどこか拗ねたようにそう呟く。
「そんな事ないわよ。場所やら何やら気にして、あの日すぐに来てくれなかったら…その方が落ち込んでただろうし。……それに、さっき平次に言った快斗の言葉…私も同意見だから」
「?」
きょとんとした顔で名前を見る快斗。名前は少し気まずそうに頬を染めながら「だから、快斗が相手なら私も道端でもトイレでも嬉しいって事よ」と、小声で返す。
「……名前ちゃん。最近、何か素直だね。可愛すぎて俺が照れちゃう…」
快斗はみるみる顔を赤く染めながらも、嬉しそうに口元に笑みを浮かべる。
「君たちは、相変わらず順調そうですねぇ」
そんな二人の元に、安室が楽しそうに笑いながら近付いてくる。
「安室さん、聞いてたんですか?」
「ハハ、そんな野暮な事はしませんよ。ただ黒羽君がやけに嬉しそうな顔をしてるので微笑ましくて」
安室はチラリと快斗を見ながら、更に言葉を続ける。
「あと30分ほどでシフトも終わります。僕がお願いした件は、問題ありませんか?」
何気ない会話から突然本題に触れられて、名前達はチラリと顔を見合わせる。
「そうですね。一応、安室さんの喜んでくれそうな土産話を持ってきたつもりですよ。な?名前ちゃん」
「………ええ」
「ほー、そうですか。それは楽しみだ。では、もうしばらくお待ち下さい」
快斗の言葉を聞いて安室はニヤリと口元に笑みを浮かべると、再びキッチンに戻っていく。名前はその背中を見送りながら、数日前のやり取りを思い返した。