「天国へのカウントダウン」編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
---タン、タン、タン
3人は階段を駆け降りて60階に向かう。階段から60階の廊下に出たところで、視界の先に連絡橋が見えてくる。
「あった!連絡橋よ!」
「よし、これでやっと落ち着けそうだな」
連絡橋が目前まで迫った事で、名前と快斗は走りながらも安心したように顔を見合わせる。
----ドォォォン!!!
「!?」
「危ないっ!戻れ!!」
しかし、三人が連絡橋を渡ろうとしたのと同時に連絡橋の中心付近が突然大きな音を立てて爆発する。先頭にいた安室は慌てたように声を荒げながら、後ろを走っていた名前達の方へ踵を返す。
---ドォォォン!!
-----ガラガラガラッ!!!
「名前ちゃんこっちだ!!」
快斗は爆発による粉塵が立ち込める中、名前の手を引いて急いで物陰に身を潜めた。
card.634
「何があったの!?」
阿笠のビートルからビルの近くまで戻ったコナンは、呆然と上を見上げている小五郎に声をかける。
「連絡橋が落ちたんだ!45階と60階の二つとも!!突然爆発しやがった!」
「え!?」
「一体誰がこんなことを……しかし、何とか避難を終えた後で良かった」
「まだだっ!」
白鳥が小さく息をつきながら呟いた言葉に、コナンは声を荒げる。
「まだ、名前姉ちゃんと快斗兄ちゃんが出てきてないはずだよ!」
「な、何ぃ!?」
コナンの言葉に目暮達が顔を青くするが、その後ろから「あの……」と、蘭と園子が戸惑いながら声をかける。
「どうかしたかね?蘭君」
「あ、安室さんもいないと思うんです。パーティー会場で事件が起こった後に、調べたいことがあるって言って会場から出て行ったんですけど……」
「何ぃ!?安室君もいないのか!?」
「!?」
(安室さんも!?あいつら、一体何してるんだよ!?)
蘭の話を聞いたコナンは、眉を寄せながら黒煙を上げるビルを見上げた。
「………お二人とも、怪我は?」
「大丈夫です」
「私も、大丈夫です」
崩れ落ちた連絡橋を見下ろしながら、三人は困ったように顔を見合わせつつ、全員が怪我もなく爆発から逃れることが出来た事に安堵の息を息をつく。
「全く、一体どうなっているんだ!」
-----ヴーヴー
珍しく苛立ったように吐き捨てている安室を横目に見ていると、ふいにポケットの中で名前の携帯が振動する。
「…………。」
(電話?新一からだわ)
「すみません、ちょっと電話を………もしもし?」
名前は携帯を取り出すと、チラリと安室と快斗に目配せしながら少し距離をあけて通話ボタンを押す。
『おい!!お前らどこにいるんだ!!』
「………60階の連絡橋の手前よ」
『何だと!?何でそんな所にいるんだ!!』
耳元でキンキンと響くコナンの怒鳴り声に、名前は軽く携帯を耳元から離しながら言葉を返す。
『お前ら早くどうにかして避難しないとやべーぞ!!この爆発は組織の奴等の仕業だ!!』
「あー、やっぱり?」
『おい…やっぱりって、お前ら一体コソコソと何を…』
「…それより、何でやばいの?」
『それよりってなぁ!!ったく、とにかく…この爆発は、灰原を狙ったものなんだ!』
名前の態度に不満そうに声をあげるコナンだったが、今は先に状況を伝えるべきだと思い直したようで、シェリーを狙ったジンが展望エレベーターを狙撃した件と、シェリーを逃さないようにコンピューター室以外の場所も爆破を続けているのかもしれない事を説明する。
「なるほど……とにかく、連絡橋は使えないし一先ず上に向かうから。屋上に救助ヘリとか頼めるかな?」
『ああ、目暮警部に伝えてみる』
「それなら、僕の方から連絡しましょうか?その方が早いと思いますよ」
コナンの言葉は聞こえないものの、名前達の会話を聞いていた安室。救助ヘリという言葉に反応して、言葉を挟んでくる。
「それって、公安の人に連絡するんですか?」
「ええ。部下に指示すれば、面倒な手続きもなくすぐに飛ばせますから」
「……………。」
(おいおい、いつの間にか公安の人間前提で話してるじゃねーか。俺のいない間に何があったんだ?)
快斗は、名前と安室のやり取りに乾いた笑みを浮かべつつ状況を見守る。
「それは止めた方がいいですよ。近くにジンがいるようなので」
「ジンが!?」
「"公安"って書かれたヘリが飛ぶわけない事はわかってますけど、どこからNOCと疑われるか分からないですよ?」
「………そうですね、そちらで手配してもらいましょう」
名前の意見を聞いた安室は、正論をぶつけられて肩を竦めながらため息をつく。
「それより、この爆発…やっぱり組織の仕業らしいんですけど。安室さんご存じなかったんですか?」
「ええ…あの男は、自分の計画をいちいち組織に報告するような人間じゃありませんから」
「そうは言っても…一歩間違えれば、仲間が巻き込まれるかもしれないのに?現に、こうやって安室さん巻き込まれてるじゃねーか?」
二人の会話を聞いていた快斗は、不審そうにそう尋ねる。名目上は組織の人間である安室が、組織の仕掛けた爆弾の被害に巻き込まれているのだ。
「ハハ、あの男が僕がパーティーに出席しているのを知っていたかは知りませんが。僕が巻き込まれたとしても心配するどころか、逆に喜ぶような男ですよ」
「……………。」
鼻で笑いながらそう答える安室。直接"ジン"と面識のない名前と快斗は、一体どんな奴なんだ?と不思議そうに顔を見合せる。
『おい、ヘリ頼んだぞ!!』
そんな会話をしていると、ふいに電話口からコナンの声が再び聞こえてくる。
『つーか、オメーはさっきから誰と喋ってんだよ!?黒羽も一緒なのか?』
「あ、うん。快斗と安室さんもいるわ」
『はあ!?本当に大丈夫かよ、オメー……』
「平気よ。とにかく、ヘリが来るなら屋上に向かうから……」
『あ!!ちょっと待て!事件の犯人が、まだビルに残ってるかもしれねーんだ!オメーはいつの間にか会場抜け出してたから、事件の詳細知らないだろ?ちょっと安室さんに変わってくれ!』
「……いいけど、」
いつの間にか会場から抜け出してた、の言い方がとてつもなく嫌味っぽいことに内心ため息をつきながらも、名前は安室に携帯を差し出す。
「安室さん、コナン君が事件のことで話があるそうです」
「コナン君が?」
(随分込み入った話をしていたが……電話の相手はコナン君だったのか)
安室は首を傾げつつも携帯を受けとると「やあ、コナン君かい?」と緊迫感のない言葉を投げ掛けている。それを横目に見ながら、名前はソッと快斗の隣に並ぶ。
「結局、これは組織の仕業だったわけか?」
「ええ…原さんが殺害されたのは、やっぱり組織の仕業と考えるのが自然でしょうね。この爆発も、おそらく原さんの残したデータ関係の抹消が目的だと思うわ」
「原さんの殺害現場にあったお猪口、血溜まりの中に落ちてたのに血がついてなかったって言ってたもんな。ってことは、あの人は連続殺人の犯人と組織の連中の両方から狙われてたってことか?」
「多分、そうなるわね……連続殺人の犯人はわからないけど、犯人が殺害するために原さんの部屋を訪れたら既に組織の人間に殺されていた」
「それで、後からお猪口だけ置いて立ち去ったってわけか」
快斗は小さく頷きながらそう呟く。二人はパーティに参加する前から、原さんが組織の人間であることと名前が現場で見たお猪口の状態から、「原さんを殺害したのは組織の人間ではないか?」と、仮説を立てていたのだ。この爆発が組織の仕業だと分かった今、その仮説はかなり信憑性を帯びてくる。
「つーか、名前ちゃん。俺のいない間に金髪店員と随分打ち解けてねーか?」
「え、そうかな?」
「そうだよ!!なんかさー、公安の事とか、NOCの事とか、理解し合ってますぅ~みたいな会話しちゃって!!」
快斗はわざとらしく拗ねたように頬を膨らませてそう言いながら、名前にジト目を向ける。
「ふふ、そうかな?これでも、爆発が起きる前はピリピリしてたのよ?だけど、それもバタバタしてる間にうやむやになっちゃったし。それに…」
「それに?」
名前が電話をしている安室に視線を向けたため、快斗もつられてそちらを見ながら先を促す。
「あの人は味方になってくれると思う……あくまで警察の人間だから、犯罪者を見逃してくれるかは分からないけどね。そこは私たちの出方次第かな」
「ふーん、何か妬けちゃうなぁ。この短時間で、あの人の評価右肩上がりじゃねーか。飛び降りた時にも守ってもらったみてーだし、顔も悪くない。まさか名前ちゃん、あの店員のこと……」
「……快斗?馬鹿な冗談言わないでよ。私が何のために公安の人間を挑発したり、データ盗み出したり、70階からバンジージャンプしたと思ってるの?」
「……へ?」
「全部、快斗の為なんだからね!私は好きな人以外のためにこんな事するほど、お人好しじゃないんだから」
「名前ちゃん…?」
「それとも快斗には、私の事がそんなにホイホイ簡単に他の男の人に目移りするように見えてるわけ?」
「や、ごめんって!ちょっと嫉妬して、からかっただけだから!!本当にありがとう!!俺も名前ちゃん大好き!!愛してる!!」
名前が心外だというようにフイッと横を向きながらそう言うと、快斗は慌てて名前の手を握りながらそう叫ぶ。
「……こんな時に、随分お熱いですね」
すると、いつの間にか電話を終えていた安室が名前に携帯を差し出しながら、呆れたように二人の顔を見比べる。
「……緊張感がなくてすみません」
「謝ることねーって!爆発から逃れて無事に恋人と再会出来たんだぜ?少しくらいイチャつかせてほしーわ」
名前は気まずそうに携帯を受けとるが、快斗はと言うと名前が安室の事を評価したのが気にくわなかったのか、ツンとそう呟く。
「ま、仲が良さそうで何よりですよ……コナン君から事件の事情は聞きました。警察から逃れるためか、目的を果たして自ら命を絶つつもりなのかは知りませんが…どうやら犯人は、まだ避難せずパーティー会場にいるようです」
「え、そうなんですか?」
しかし意地を張っていた快斗も、本題に入ると真面目な表情で安室の話を聞いている。
「ええ、ですから我々は犯人を確保しつつ屋上に向かいましょう。救助ヘリもあと5分もしたら到着するでしょうし」
---タン、タン、タン
つい数分前に必死に駆け降りた階段を、今は75階まで駆け上る。
「ハァ、今日1日で何階分階段で移動したかわかんねーな」
「本当ね…ハァ、足がパンパンだわ」
軽く息を乱しながら階段を上る二人の前では、全く息を乱すことない軽快な足取りで安室が足を進めている。
「すげーな、あの人……あの人が一番怪我してんのに」
「公安で潜入捜査してるくらいだもの、鍛え方が違うのよ…きっと」
「ハハ、やっぱ敵にまわしたら怖そうだな」
「そうね…70階から避難する時も、あのガラス自分で蹴破るつもりだったみたいだし」
「おっかねー!」
名前と快斗はそんな安室の背中を追いかけながら、乾いた笑みを浮かべた。
--75階パーティー会場
「誰かいるぞ」
階段を上りパーティー会場に入る。真っ暗な会場のステージに佇む人影に気付いた快斗が、スッと一歩名前の前に出る。
「誰が犯人だか知らねーけど、連続殺人犯だ。名前ちゃんは俺の後ろにいろよ」
「……ありがとう」
相変わらずどんな状況でも自分を気にかけてくれる快斗。名前は、小さく頷いて快斗に続いてステージに近付いて行く。
「………あなたが大木さんと常磐さんを殺害した犯人ですね?」
快斗と名前の先を歩く安室が、ステージに立つ人物に声をかける。声をかけられた人物が暗闇の中で振り返る気配がする。しかし真っ暗な会場では、その人物が誰なのかは名前と快斗には分からない。
「ある動機から常磐さん殺害を決意し、彼女に真珠のネックレスをプレゼントした。そのネックレスをつけて、オープンパーティーの檀上で自分の送った絵を紹介してほしいと…」
「え?」
「それって、まさか…」
顔を見合せる二人を尻目に、安室は持っていたペンライトをパッとステージに向ける。
「そうですよね?常磐さんの日本画の先生である…如月峰水さん」
照らされたライトの光の先にいる如月は、動揺する様子もなくジロリと名前達に目線を向けた。