「黄昏の館」編
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…ブロロロ
人通りのない山奥だったが、バスは20分ほど待つとやって来た。
名前はそのバスに乗り込む。バスは古めかしいエンジン音を上げて山道を進んで行った。
card.63
バスが去っていくのを見送って、近くの茂みからガサリと1人の人物が出てくる。
「とりあえず…これで大丈夫か」
茂みから出て来たのは、既に変装を解いた快斗だった。山道の人気のない道に名前を残して行けるはずもなく、バスが来るまで近くで様子を伺っていたのだ。
「…ぼっちゃん、よろしかったのですか?」
快斗と同じように茂みに隠れていた男が控えめに尋ねる。
「ジイちゃん…他にどうしろって言うんだよ。車は?」
「あ、はい…山の下の桟橋の近くに止めてあります」
「じゃあ、行こうぜ」
何か言いた気な男の視線を無視して、快斗はスタスタと山道に出て歩きはじめる。
「…それにしても綺麗なお嬢さんでしたね。彼女が例の新しいクラスメイトですか?」
「ああ…まったく無茶ばかりしやがるから、気が気じゃねーよ」
そんな言葉とは裏腹に、快斗は優しい微笑みを浮かべている。
(…ぼっちゃん)
その後2人は寺井が桟橋の近くに止めていた車に乗り込むまで、特に会話も交わさずにに歩き続けた。
車に乗り込んだ快斗は、助手席で窓の外をずっと眺めている。
--な、何でもないです。おじさん、気をつけてね?--
思わずといった雰囲気で、自分(小五郎の姿だったが)の服の裾をつかんた時の、名前の不安気な表情を思い出す。
(…あれが俺を心配してくれてた表情だっていうなら、たまんねーよな)
--あ、おじさん…!--
--今回はあなたがいるだろうなって分かってたから怖くなかったわ。…あなたに会うためよ--
快斗は流れる景色を横目で見ながら、今日1日の名前の姿ばかりを思い返す。
--名前さんの魅力は美しさだけじゃなく…--
(くそっ!…そういや、白馬の野郎…初対面のくせに名前に馴れ馴れしくしやがって)
館でのやり取りを思い返していると、ふいに頭に浮かんだ白馬の姿。快斗は、嫌な場面を思い出して僅かに眉を寄せる。
「あの方、何というお名前なんですか?」
「え?」
その時、今まで黙っていた寺井から急に声をかけられて、快斗は思わず聞き返す。
「あのお嬢さんのお名前ですよ」
「ああ…名前、名字名前だよ」
「そうですか…名前さんですか」
寺井は運転しながらも、どこか楽しそうに笑みを浮かべて名前の名前を繰り返す。
「何だよ、ジィちゃん」
「いえ…快斗ぼっちゃんの事を、随分大事に思ってくださっているようだったので。…嬉しいんです」
「……。」
快斗は小さく目を見開いて、嬉しそうに微笑んでいる寺井を見る。
「…例えそうだとしても、俺はあいつに何も言ってやる事も出来ねーよ」
「そうでしょうか…?」
「え?」
「怪盗であるぼっちゃんも、普段のあなたも…どちらも本当の快斗ぼっちゃんですよ」
「…それでも、俺が傍にいる事で危険に巻き込んじまうなら…」
「今回は…それを承知でぼっちゃんに会いに来てくださったんでしょう?」
「………そうだけど、」
「そばにいなければ……事実を知らなければ、守れないものもありますよ」
「ハハッ…ジィちゃんらしくねェな…どーしろって言うんだよ?」
「ぼっちゃんの想い次第ですよ。しかし、1人くらいはいても良いと思いますよ。自分の全てを知っていてもらいたいと思うお相手がね……盗一様にとっての千影様のように」
どこか期待を含めるような寺井の言葉を聞きながら、快斗は考え込むように再び窓の外に視線をうつした。
人通りのない山奥だったが、バスは20分ほど待つとやって来た。
名前はそのバスに乗り込む。バスは古めかしいエンジン音を上げて山道を進んで行った。
card.63
バスが去っていくのを見送って、近くの茂みからガサリと1人の人物が出てくる。
「とりあえず…これで大丈夫か」
茂みから出て来たのは、既に変装を解いた快斗だった。山道の人気のない道に名前を残して行けるはずもなく、バスが来るまで近くで様子を伺っていたのだ。
「…ぼっちゃん、よろしかったのですか?」
快斗と同じように茂みに隠れていた男が控えめに尋ねる。
「ジイちゃん…他にどうしろって言うんだよ。車は?」
「あ、はい…山の下の桟橋の近くに止めてあります」
「じゃあ、行こうぜ」
何か言いた気な男の視線を無視して、快斗はスタスタと山道に出て歩きはじめる。
「…それにしても綺麗なお嬢さんでしたね。彼女が例の新しいクラスメイトですか?」
「ああ…まったく無茶ばかりしやがるから、気が気じゃねーよ」
そんな言葉とは裏腹に、快斗は優しい微笑みを浮かべている。
(…ぼっちゃん)
その後2人は寺井が桟橋の近くに止めていた車に乗り込むまで、特に会話も交わさずにに歩き続けた。
車に乗り込んだ快斗は、助手席で窓の外をずっと眺めている。
--な、何でもないです。おじさん、気をつけてね?--
思わずといった雰囲気で、自分(小五郎の姿だったが)の服の裾をつかんた時の、名前の不安気な表情を思い出す。
(…あれが俺を心配してくれてた表情だっていうなら、たまんねーよな)
--あ、おじさん…!--
--今回はあなたがいるだろうなって分かってたから怖くなかったわ。…あなたに会うためよ--
快斗は流れる景色を横目で見ながら、今日1日の名前の姿ばかりを思い返す。
--名前さんの魅力は美しさだけじゃなく…--
(くそっ!…そういや、白馬の野郎…初対面のくせに名前に馴れ馴れしくしやがって)
館でのやり取りを思い返していると、ふいに頭に浮かんだ白馬の姿。快斗は、嫌な場面を思い出して僅かに眉を寄せる。
「あの方、何というお名前なんですか?」
「え?」
その時、今まで黙っていた寺井から急に声をかけられて、快斗は思わず聞き返す。
「あのお嬢さんのお名前ですよ」
「ああ…名前、名字名前だよ」
「そうですか…名前さんですか」
寺井は運転しながらも、どこか楽しそうに笑みを浮かべて名前の名前を繰り返す。
「何だよ、ジィちゃん」
「いえ…快斗ぼっちゃんの事を、随分大事に思ってくださっているようだったので。…嬉しいんです」
「……。」
快斗は小さく目を見開いて、嬉しそうに微笑んでいる寺井を見る。
「…例えそうだとしても、俺はあいつに何も言ってやる事も出来ねーよ」
「そうでしょうか…?」
「え?」
「怪盗であるぼっちゃんも、普段のあなたも…どちらも本当の快斗ぼっちゃんですよ」
「…それでも、俺が傍にいる事で危険に巻き込んじまうなら…」
「今回は…それを承知でぼっちゃんに会いに来てくださったんでしょう?」
「………そうだけど、」
「そばにいなければ……事実を知らなければ、守れないものもありますよ」
「ハハッ…ジィちゃんらしくねェな…どーしろって言うんだよ?」
「ぼっちゃんの想い次第ですよ。しかし、1人くらいはいても良いと思いますよ。自分の全てを知っていてもらいたいと思うお相手がね……盗一様にとっての千影様のように」
どこか期待を含めるような寺井の言葉を聞きながら、快斗は考え込むように再び窓の外に視線をうつした。