「天国へのカウントダウン」編
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「Non-Official Cover、通称NOC。さっき、新一が言ってたやつね」
「ああ、あの怪しい店員だろ?ただ者じゃねーと思ったら、そういうわけか」
「安易に身元は明かせないって言ってたけど、所属はどこかしら?有名なところはFBI、CIA、ASIS、SIS……日本で言ったら公安か、DIHとか?」
快斗が戻ってきてから、二人は先ほどの話を再開した。
「そういや、いろいろあって言い忘れてたけど…俺この前あの人を探ってみたんだよね」
「え、安室さんを?」
快斗の突然の言葉に、名前は目を丸くする。
「ああ。だけど、全然ダメ。尾行も撒かれるし、写真も撮れない。下手に深追いしたら、こっちが尾行されちまうわ」
「へー、快斗でもそんなに手こずるのね。そういえば、ツインタワービルで会った時にも"写真が苦手"って話してたわね」
(あれは、どこかの諜報員ゆえの言葉だったのね。そこまで徹底するなんて、日本だとしたら公安?)
名前は安室とのやり取りを思い返しながら、考えを巡らせた。
card.625
「……つまり、安室さんは組織からの指示で怪盗キッドを探ってるってことか?」
「うん、そうかもしれない。もしくは、組織の中でパンドラやキッドの話題が出て諜報員として調査してるとか…」
「なるほどな。それで、怪盗キッドの事件によく関わってる名前ちゃんを怪しんでるって考えるのか妥当か。おー、本当にいろいろ繋がってきたな!!」
快斗はファイルからパッと顔をあげて、嬉しそうに名前の顔を見る。
「そうね。下手に組織にキッドの情報を流されても困るし、気をつけないとね。それか、あえて接触して味方になってもらう?」
「……うーん、危ねー賭けだな。いや!でも全てを解決するためには、多少のリスクを犯す必要もあるか!」
「ねえ、快斗どうしたの?戻ってきてから、やけに熱心に話してるけど…」
名前は、会話が再開してから不自然なほど前のめりで会話している快斗に首を傾げる。
「え!?そんな事ねーよ!早いとこ解決させたいじゃねーか」
「ホッホッホッ」
「?」
しかし快斗は話題の内容にしてはやけに晴れやかな笑顔でそう言葉を返し、それを見た寺井は楽しそうに笑っている。そんな二人の様子を、名前は不審そうに見比べる。
「とにかく!!今のところ分かってる情報はこんなところか。……あとは、一番大事な明後日の作戦たてよーぜ!!」
そんな名前を見て、快斗は慌てたようにそう提案する。名前は、未だに不思議そうに首を傾げながらも「そうね、あと2日しかないから急ごうか」と、言葉を返した。
「ふー、すっかり話しこんじまったな」
暗くなった住宅街を、名前の部屋に向かって手を繋いで歩きながら快斗は夜空を見上げる。
「本当だね。でも話したかった事はだいたい話せたかな?」
「ああ、あとは明後日の本番だな」
「そうね……今日は泊まってくの?」
「いや。もう少し明後日の準備してーから、名前ちゃん送ったら今日は帰るよ」
「そっか、わざわざ送ってくれてありがとね」
「いえいえ、それに今日あたり哀ちゃんとこにも行ってみようかとも思ってさ」
快斗がサラリと告げた言葉に、名前は目を丸くして隣を見る。
「明後日、オープンパーティーで会うんだし…その前に一回話しといた方がいいだろ?」
「そうだけど……夜行くの?」
「ああ、"俺"が行くなら夜の方がいいだろ?」
「ふふ、なるほどね。追い返されないといいわね」
可笑しそうに笑ってそう返す名前に、快斗は「おいおい、それは勘弁してよ」と肩をすくめた。
「ただいま~!名前ちゃん送ってきたぜ」
「おかえりなさいませ、何か召し上がりますか?」
「いや、ちょっと珈琲だけもらえる?この後、まだ行くとこあっから」
「おや、そうですか」
寺井はすっかり暗くなった外の様子を横目に見て、意外そうに目を瞬かせながら珈琲を入れ始める。快斗は、そんな寺井に「ちょっとな」と言葉に濁しながらカウンターに座る。
「坊っちゃん、さっきの話聞いてらしたんでしょう?」
「………さっき?」
珈琲を差し出しながら尋ねられた問いに、快斗は寺井から視線をそらしたまま問い返す。
「二階から戻られたあと、とても気合いが入ってましたからね。名前さんに気付かれないか、ハラハラしておりました」
「あー、ハハ。そうだった?」
快斗は、乾いた笑みを浮かべて珈琲を一口飲むとチラリと寺井に目を向ける。
「ま、可愛い彼女にああ言われたら俄然やる気が出ちゃうでしょ」
「ホッホッ、そうですか」
ニヤリと笑いながらそう話す快斗を見て、寺井も楽しそうに顔を緩める。
「だけど、俺にはなかなか言えない本音をあっさりジィちゃんに話しちまうのは、納得いかねーなぁ」
「……近すぎる相手には話せないことも、少し距離のある私のような老人相手の方が話しやすかったりするものですよ」
「そんなもんかねぇ」
「そう心配なさらなくても…名前さんなら、いずれきっとお話してくださいますよ」
穏やかにそう告げる寺井に、快斗は何も返さずに珈琲を飲む。
「それにしても…坊っちゃんが、盗一様の後を継ぐとおっしゃった日からこれまで…ドキドキしたりハラハラしたり、あっという間の毎日でしたが」
「……何だよ、急に」
「名前さんが現れてからは、更に時の流れが早く感じます」
「え?」
「まるで、物語が一気に動きだしたような……そんな気分です」
染々とそう話しながら、寺井は真っ直ぐ快斗に視線を向ける。
「……必ず、盗一様の無念を晴らしましょう」
「………ジィちゃん」
「その後は…快斗坊っちゃんはご自分の時間を、ご自分の人生のためにお使いください」
寺井から今までにない真剣な表情でそう告げられた快斗は、言葉を返すことが出来ないまま、ジッと寺井の瞳を見つめ返した。