「天国へのカウントダウン」編
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---ブロロロ…
日付が変わる少し前、灯りがほとんど消えた住宅街に独特のエンジン音が響く。そのエンジン音は徐々に小さくなっていき、車はスピードを落としていく。そして、とある小さなアパートの前で止まった。
card.623
「兄貴…」
「この部屋か?」
ジンがアパートの一室に入ると、既に室内にいたウォッカが振り返る。
「管理人に写真を見せて確認しやした」
「フンッ、奴が組織の目を盗んでこんな場所を根城にしていたとはな…」
「家賃が一年分前払いされていて、留守電はそのまま。隣の住人の話じゃ、時々電話がかかってきてメッセージを入れてるようなんですが」
ウォッカはそう話ながら、室内にある固定電話を手に取る。
「留守電を確かめたところ、メッセージは録音されていませんでした。一体誰がどういうつもりで…?」
「フンッ」
首を傾げるウォッカとは対照的に、ジンはニヤリと口角を上げる。
「所詮、女は女か…」
「?」
ジンはそう言いながら、懐から一つのディスクを取り出す。
「組織が開発した逆探知プログラムだ。これがあれば、20秒で逆探知出来る。車の中からパソコンを持ってこい!!」
「了解…!!」
ジンとウォッカが逆探知プログラムをセットしている頃、阿笠邸ではゆっくりとベッドから起き上がった灰原が、阿笠が寝ているのを横目で確認した後に音を立てないようにしながら地下室に向かう。そして、地下室にある電話を手に取った。
---プルルル…
「…かかってきやした!!」
アパートの一室で電話を待っていたウォッカとジンは、室内に響いた着信音にピクリと反応する。
『はい、宮野です。ただいま留守にしております…発信音の後に、お名前とご用件をどうぞ』
そして、電話は留守電に切り替わり固定電話からは、留守を知らせる女性のアナウンス音声が響く。それと同時に、電話に繋がれたパソコンでは逆探知プログラムが起動し始める。
---ピーッ…
『……お姉ちゃん?私…』
「!?」
「この声は…」
そして発信音の後に続いた通話相手の声に、ウォッカは目を見開いてジンの方に視線を向けると、ジンは口角を上げてメッセージを入れる女の声を聞いている。
『明後日、ツインタワービルのオープンパーティーに行ってくるわ……もちろん、』
---ブツッ!!ピーッ…
「切れた…?」
しかし、会話の途中で突然通話が切れてしまう。ウォッカが驚いてパソコンの画面を確認すると、時間が足りなかったのか"探知不可"とエラー表示が出ている。
「クソッ!!あと数秒で逆探知出来たのに…!!まさか、あの女…俺たちに気付いて?」
「いや、それはない。だが、どうやら天は俺達に加勢してくれているようだ!」
ジンはゆっくりと煙草の煙を吐き出しながら、愉快そうに笑う。
「"ツインタワービルのオープンパーティー"ですか?」
「ああ、やっと拝めそうだぜ。シェリー…青く凍りついた、お前の死に顔をな!!」
---阿笠邸
「……工藤君?」
メッセージを吹き込んでいる最中に、突然電話が切れたことに、灰原が驚いて振り返ると、そこにはコナンと阿笠が立っている。
「やっぱりお姉さんに電話していたんだな」
「……!」
「お前のお姉さん、宮野明美が生前ひそかにかりていた部屋の電話に」
「そうか…哀君は、亡くなったお姉さんと話をしたくて…」
「…………。」
コナンと阿笠に自分の行動を言い当てられた灰原は、ふいっと視線をそらして黙り込む。
「いくら何でも危険すぎる、お前もそれくらい分かってるんだろ?」
「…………。」
「気持ちは分からなくもねーけど…」
「私の気持ちなんて、誰にも分からないわ!!」
コナンの言葉を遮るように灰原がそう叫ぶと、そのまま部屋を飛び出して、階段を駆け上がっていく。
「あ、おい!灰原!!」
「待つんじゃ、新一」
そんな灰原の後を追おうとしたコナンを、阿笠が慌てて制する。
「今は、そっとしておいてやろう…」
「博士……」
悲しそうに眉を寄せる阿笠の言葉に、コナンは小さく目を見開いた後、灰原が消えていった暗い階段に視線を向けた。
◇◇◇◇◇
「名前ちゃん、帰ろうぜ」
「うん、今行く」
授業を終えた快斗が名前と共に帰ろうと廊下に出ると、廊下の窓の所に見慣れた背中を見つける。
「おー、お前ら何してんの?」
「あ、快斗と名前ちゃん!もう帰るの?」
「ええ、青子たち何見てるの?」
青子や林達が並んで窓の外を見ていたため、名前も不思議そうに隣から覗き込む。
「ほら、あそこ!門のところに小学生が立ってるのよ」
「誰かの弟じゃねーかって話してたんだよ」
「結構前から待ってるみたいだし、声かけてやったほうかといいかと思ってさー」
「小学生~?………げ、」
桜井達の言葉に訝し気に窓の外を覗いた快斗は、視界に捉えた見慣れた後ろ姿に思わず眉を寄せる。
「え、しん…コナン君じゃない!」
「名前ちゃん達の知り合いの子?」
「え、あ…うん。ほら、私が怪我して入院した時に青子たち病院にお見舞いに来てくれたでしょ?」
「おお!名前ちゃんが撃たれた時な!アレはびびったぜ~」
「ふふ、その時に帝丹高校の蘭って子に会ったでしょ?そこのウチの子」
「蘭ちゃんの?そうなんだ~」
「何の用だか知らねーけど、小学生待たせるのも悪いし。とりあえず、あいつのとこ行ってみようぜ」
蘭の事を思い出したのか、納得したように頷く青子達。そんな中、快斗がチラリとコナンを見ながら名前にそう声をかける。
「……そうね。みんな、またね」
名前は林達に声をかけると、快斗と並んで校門に向かった。
◇◇◇◇◇◇
「わざわざ江古田まで来て、どうしたの?」
何やら話のありそうな様子のコナンと合流した快斗達は、学校の周囲では人目につくため少し離れた公園まで移動した。
「電話じゃまずい話なのかよ?」
「いや、何となく直接相談したくてよ」
「言ってくれれば私がそっちに行ったのに。あなた見た目は小学校なんだから、あんまり一人でウロウロしない方がいいわよ」
「……うるせーな」
「それで、どうしたんだよ?」
「……実は、昨日また灰原が夜電話をかけてたんだけど」
コナンは何となく言いにくそうにしながら、そう切り出す。
「哀ちゃんが?」
思いがけない話題に顔を見合せる快斗と名前に、コナンは昨日の夜の灰原とのやり取りを二人に説明していく。
「なるほどねぇ、お姉さんに…」
コナンの説明を聞き終えた快斗は、何とも言えない顔をして小さくため息つく。名前は、悲しそうに眉をよせて腕を組んだまま黙っている。
「組織絡みだから、つい俺も"危険だからやめろ"って頭ごなしに言っちまって」
コナンは、ため息をつきながら言葉を続ける。
「灰原は話の途中で飛び出して行っちまうし、今日は気まずくて会話にならねーし」
「学校には来てたの?」
「ああ、一応な」
「……困ったわね。でも電話するのはさすがに危険だから、それを止めた新一気持ちもわかるわよ」
「博士は、しばらく構わないでおいてやれって言うんだよ。どうしたもんかと思ってさ」
珍しく弱気な様子のコナンに、名前も何と言うべきか言葉に詰まる。そんな中、黙ったまま二人のやり取りを聞いていた快斗が徐に口を開く。
「なあ、俺に任せてくんねーか?」
「オメーに?」
突然の申し出に、コナンは驚いたように快斗を見る。
「この三人の中では、哀ちゃんの気持ちが分かるというか…一番立場が近いのは、俺だと思うんだよねー」
「……え?」
あっけらかんと話す快斗の言葉に、コナンは驚いたように名前に視線を向けるが、名前は曖昧に微笑むだけで何も答えない。
「…………。」
コナンは、しばらく快斗を見つめたあとに小さくため息をつく。
「オメーがそう言うなら頼む。俺は多分うまくやれねーから」
「……おお、とりあえず話してみっから。オメーは、組織の方を気にしといてやれよ」
素直に自分に頼んできたコナンの態度に少し驚いた快斗だったが、すぐにニカッと笑顔を見せる。
コナンはそんな快斗を一瞥したあとに、ふいっと視線をそらすと話題を変える。
「そういや、蘭から連絡来たか?オメーらにも、TOKIWAのツインタワービルのオープンパーティーの招待状来てたぞ」
「ああ、明後日よね。行くつもりだけど、あの人も来るの?」
「……あの人?」
「安室さんよ。何かを探られてるような気がして疲れるのよね」
名前は何気なくそう言いながら、快斗とチラリと目配せする。
「オメーにも、いろいろ事情があるのかもしれねーが…敵か味方かくらい教えてくれねえ?俺も、名前ちゃんが心配だし」
「あー、そうだな……」
名前と快斗に視線を向けられたコナンは、困ったように頭を掻く。
「あの人の立場上、あんまり身分を軽々しく明かせねーんだが……敵ではない」
「……そうなの?」
「ただ、その事象から得られる利益を優先させて…場合によっては、敵になることもあるかもな」
「どういう事だ?」
「………コードネーム持ちなんだよ、安室さん。NOCだけどな」
「!!なるほど……わかったわ」
「これ以上は、言わねーぞ。安室さんもパーティー来るからな!オメーら、探られてる心当たりがあるなら、気をつけろよ。あの人は、敵にまわすとおっかねーから」
「ハハ、了解」
怪盗キッドである快斗を睨み付けながら話すコナンに、快斗は軽く肩をすくめながら答えた。