「天国へのカウントダウン」編
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「だーっ!!全然ダメっ!」
「随分と厄介な相手のようですな」
頭からキャップを外し、ぐったりとカウンターに突っ伏す快斗。寺井は、そっと快斗の頭の横にアイスコーヒーを置きながら眉を寄せる。
「これまでの経歴探っても何も出てこない。尾行しても、撒かれる。むしろ、尾行され返そうになる。写真の一枚も撮れなかったぜ…」
「そうですか。快斗ぼっちゃんが、そこまで手こずるとは…」
「ありゃー、ただの私立探偵じゃねーな。いっそ誰かに変装して、直接接触してみっかなー。でも、あの人鋭そうだし……」
快斗は眉間に深いシワを刻んだまま、アイスコーヒーをグイッと飲むと、ため息をつく。
「その男の目的も分からないんですか?」
「名前ちゃんがこれまで関わった事件について探ってるらしいんだよ。元々名前ちゃんの事が目的で探っているうちに、よく関わりのある"怪盗キッド"にたどり着いたのか。元々の目的が"俺"で、たまたま名前ちゃんにたどり着いたのか…」
快斗は指でカウンターをコツコツと叩きながら、ため息をつく。
「主語が変わるだけで、随分と状況が違ってきますな…」
「ま、どっちが…どっちでも、二人で乗り切る事には変わりねーんだけどな」
快斗が苦笑しながら言った言葉に、寺井は隠す気もないくらい分かりやすく表情を緩める。
「何だよ?ジィちゃん」
「ホッホッ…お二人が順調そうで何よりです」
「ジィちゃんは、初めっから名前ちゃん推しだよな」
「名前さんは、初めから快斗坊っちゃんが怪盗でも構わないと言ってくださっていましたからね。私は坊っちゃんの良き理解者で、良きパートナーが出来て嬉しいんですよ」
「ふーん?本当は…今でもあいつを危ない目に合わせたくねーんだけどなぁ。それでも怪盗を続けながら、あいつと一緒にいるからには、覚悟を決めるさ」
手に持ったグラスの氷をカランと鳴らす快斗は、その口調とは裏腹に優しい微笑みを浮かべている。寺井は、そんな快斗の表情を嬉しそうに見つめていた。
card.620
「おはよー、哀」
「おはよう」
原の部屋に行くために待ち合わせ場所に向かうと、そこにはまだ灰原の姿しかなかった。
(あら、ラッキー。思いがけず哀と二人で話すチャンスね)
探偵団の子供たちがいるとなかなかゆっくり話せないため、名前は灰原と二人きりの状況に感謝しつつ、普段通りを装って声をかける。
「まだ、みんな来てないのね」
「子供たちは、工藤君と一緒に来るみたいよ」
「あ、そうなんだ?でも哀が参加するなんて珍しいわね」
「あら、私も興味あるもの。原さんの作るゲーム」
「ゲーム?」
「工藤君から聞いてないの?ツインタワービルで、原さんに会った時に彼に誘われたのよ。子供の目線を参考に、新しいゲームのアイディアが欲しいから、家にあるゲームを見に来ないかってね」
「そうだったの?私は、大木市議が殺害された件で、彼の関係者をあたってるって聞いたけど?」
「ああ…確かに子供たちも探偵ごっこしてるみたいだけど。事件の調査に熱心なのは工藤君の方でしょ」
「えー、相変わらずね。新一は」
(とりあえず、いつも通り普通に話してるし元気そうね)
可笑しそうに笑いながら話す灰原の横目を見て、名前は内心安堵しつつ会話を続ける。
「事件の方は、見通したってるのかしら?」
「まだ、何とも。ただ、殺害された現場に割れたお猪口が置いてあってね。犯人が置いていったのか、被害者が遺したものなのかは、まだわからないけれど」
先日のツインタワービルで殺害された当日に大木市議と会っていたという事から、小五郎は目暮から事実確認のため聴取を受けていた。顔馴染みのコナンや阿笠も同席することになったため灰原も一緒同席したようで、その時に聞いた内容を名前に伝える。
「割れたお猪口?」
「何らかのメッセージがあると警察は考えてるようだけど、工藤君は違うことを気にしてるみたい」
「……違うこと?」
「ほら、お猪口といえばお酒でしょ?」
「ま、まさか…組織の!?」
平然と話す灰原の言葉に、名前は驚いて目を見開く。
「私は違うと思うって言ったのよ?組織が犯行現場にそんな物を残すはずがないし、ダイイングメッセージを遺させるようなミスをするとも思えないわ」
「……確かにそうね」
名前は納得したように頷きつつも、灰原の横顔を見つめる。
「何?」
「や、組織関連なのに…哀は平気なのかな?って思って」
「だから、私は組織だとは思ってないもの。何の心配もしてないわ」
「灰原さーん、名前お姉さん!」
「お二人はもう来てたんですね」
そこまで話したところで、通りの向こうからコナンを先頭に光彦達がやってくる。二人は一先ずそこで会話を切り上げて、コナン達と共に原の部屋へと向かった。
◇◇◇◇◇◇
「このマンションですね」
「確か、407号室だったな」
---ピンポーン
「………あれ?出ねぇな」
「おかしいですね、この時間で約束してるんですが」
原の部屋につきインターフォンを鳴らすが、中からの応答がない。光彦が不思議そうに首を傾げながら、ドアノブに手を伸ばす。
「あれ、開いてますよ?」
「え?」
そう言いながら光彦がドアを開けると、小さく息をのむ。
「コ、コナン君…原さんが倒れています!!」
「何っ!?」
光彦の言葉を聞いて、コナンが一早く
室内に飛び込んでいく。
「何があるか分からないから歩美ちゃん達は、ここで待っててね。……哀、みんなを見てて」
「分かったわ」
現時点では室内の様子がわからないため、名前は子供たちに声をかけながら灰原に目配せして室内に入る。
「………新一どう?」
コナンの後を追って室内に入った名前は、倒れている原のそばにしゃがみこんでいるコナンに声をかける。
「拳銃で胸を撃たれてる…ほぼ、即死だな」
「どうして原さんが…一応、救急車と警察を呼ぶわね」
「ああ、悪いな。頼む」
「…………。」
(手にナイフ…机にケーキがあるから、切り分けようとしていたのかしら。……あれは、お猪口!?これって、さっき哀が言ってた…)
名前は携帯を操作しながら、原の手に握られたナイフと身体の横に置かれている割れたお猪口を見つけて眉を寄せる。
----プルルル…
『……はい、消防です。事件ですか?救急ですか?』
「あ、知人の部屋に来たら血を流して倒れていて。……はい、場所は…」
名前は消防に連絡をしながら、ふとリビングの隣にある仕事部屋に目を向けると、デスクに置かれた一つのファイルが目に入る。
「!?」
(え、あれって…?)
『すぐに、警察と救急車が向かいます』
「……ありがとうございます、お願いします」
名前は通話を終えると、一歩一歩デスクに近寄っていく。
(……まさか、どうして原さんが?)
名前は鞄からハンカチを取り出して、素手で触らないように気をつけながらファイルを手に取った。