「天国へのカウントダウン」編
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秘書の沢口と専務の原の案内で、名前達は展望エレベーターに乗って75階に向かう。
ガラス張りのエレベーターは、ぐんぐんと上昇していき、エレベーターから見える町並みはみるみる小さくなっていく。
「このエレベーターって、75階まで直通なんですか?」
「はい、これはVIP専用のエレベーターですから行きたい階まで直通です。エレベーターの外から止められるのは、68階のコンサートホールだけになります」
蘭が沢口とそんな会話をしている後ろで、高所恐怖症の小五郎は75階につくまでずっと目を閉じていた。
card.618
75階に到着すると、オープンパーティーの準備中ということもあり、数人のスタッフが機材を搬入したりと慌ただしい様子だった。
そんなスタッフの中心にいたショートカットの女性が、小五郎を見つけて笑顔で近付いて来る。
「毛利先輩!」
「常磐君、久しぶりだな」
小五郎は挨拶を交わしたあとに、自分と一緒にきた娘の蘭やコナン達全員の紹介をすませる。
「私の方もご紹介しますわ」
常磐は、自分のそばにいた男性3人を小五郎に紹介し始める。
一人目は、常磐の絵の師匠で日本画家の如月峰水(60)
二人目は、西多摩市の市議会議員の大木岩松(55)
三人目は、ツインタワービルの設計をした風間英彦(41)
「…隣のB棟は、商業棟です。下の方は店舗、上にはホテルがあります。屋上には、プールがあってドームの屋根は開閉出来るようになっています」
「ほおー、大したもんだ」
紹介を終えた常磐は、ツインタワービルの特徴を説明している。
「快斗、哀と何か話せた?」
ビルの説明がすむと、だんだん常磐と小五郎達の雑談が始まったため、名前は隣の快斗に小声で声をかける。
「あー、うん。話したぜ?」
快斗は、少し言葉を濁しながら灰原と会話した内容をかいつまんで説明する。
「……10年後にはこの世にいない、か」
それを聞いた名前は、僅かに眉をよせながら歩美達と何かを話している灰原を盗み見る。
「俺はさ、どこかに電話してるらしい…っていう前情報があるから、ちょっと気になっちまったけど…哀ちゃんって、元々そういうブラックジョークとか言うタイプだろ?」
「そうなのよね…いつも通りと言えば、いつも通りな気がするし。組織の話題にナイーブになっているとも取れるし…難しいわね」
名前が困ったようにため息をつきながらそう呟くと、快斗が「ところで…」と、言いながらジリジリと名前との距離を詰める。
「な、何?近いよ、快斗…」
「哀ちゃんのことは、引き続き様子を見るとして……オメー、あの男と何か話してたろ?」
「あー、うん…少しね」
「すぐにでも割って入りたかったんだけどさー、哀ちゃん放って行くわけにもいかないじゃん?大丈夫だった?」
「平気。でも、あの人…私に興味があるわけじゃないわ。完全に何かを探りにきてる」
「……一体、何を?」
「それなんだけど、もしかしたら良くない状況かも…」
「え、」
「まだ、確証はないけど…」
--チンッ
「いやー、今時あんな車を見るなんてな」
「ああ、珍しいよなー」
名前が何かを言おうとしたところで、二人の背後にあった展望エレベーターの扉が開き、荷物を抱えたスタッフが二人降りてくる。
名前と快斗は、会話を一旦やめてスタッフの邪魔にならないように横にズレる。
「あれ、なんて車だっけ?」
「ポルシェ356Aだよ」
「何っ!?」
スタッフの会話が聞こえていたコナンは、その車種に反応して名前達のそばにいるスタッフの元に駆け寄ってくる。
「ねえ、その車の色は!?」
「く、黒だけど?」
突然、コナンに詰め寄られたスタッフは首を傾げながらも質問に答える。
「どこで見たの!?」
「このビルの前に止まってたんだ」
「!!」
それを聞いたコナンは、勢いよく駆け出して展望エレベーターに乗り込んでいく。
「ちょっと、コナン君!」
「こら、坊主!!」
それを見た蘭達は慌てて制止するが、コナンはエレベーターに乗ってどこかに向かってしまう。
「名探偵、どうしたんだ?」
「……黒のポルシェ356A、新一に例の薬を飲ませた男の車よ」
不思議そうにコナンを眺めていた快斗に、名前はこっそり耳打ちする。
「え!?何でこのビルに…?」
「さあ、わからないけど…」
名前は快斗と会話しながら、窓から外を見ている灰原に目線を向ける。少し離れてはいるが一連の会話は聞こえていたようで、灰原が顔を強張らせているのが分かる。
(まさか、本当に組織に電話を?哀に限ってそんな事は…)
名前が眉をよせて考えこんでいると、名前達の元へ安室が近付いてくる。
「……ポルシェ356A、ご存知ですか?」
「え?」
「名前さんが、その車種を聞いた時に反応していたように見えたので」
突然の質問に思わず戸惑ってしまった名前を見た快斗は、名前の変わりに笑顔で口を開く。
「車種くらいは知ってますよ。こんな所にそんな車がいるなんて珍しいなって話してたんです。な?」
「あ、うん…そうね」
快斗の素早いフォローに感謝しながら、名前は小さく頷く。
「……そうですか」
安室は、そんな快斗と名前の顔を見比べたあと意味深な笑みを浮かべた。
◇◇◇◇◇◇
「疲れた…」
「お疲れー、何か飲む?」
ツインタワービルでコナン達と別れた名前達。
名前の部屋に帰宅すると、名前はため息をついてソファに座り込む。
「んー、大丈夫。ありがと」
「名前ちゃんが、そんな風になるの珍しいな。あんまり疲れてるなら、俺今日は帰ろうか?」
一人暮らしの名前と、母親が仕事のため頻繁に家をあけている快斗。自然と名前の部屋で一緒に過ごす事が多く、今日もひとまず名前の部屋に帰宅した。しかし、疲れた様子の名前に快斗は気を使ってそう声をかける。
「ううん、平気よ。最近は、快斗がいるのが当たり前みたいになってるし」
「おー、嬉しい事言うじゃん」
「ふふ、今日は安室さんの前で変なこと言わないように気を使うのが疲れただけ」
「そういえば、昼間その話してたとき何か言いかけてたよな?」
「ああ…うん、確証はないんだけど、あの人…私が今まで関わった事件にやけに詳しくて…」
名前はそこまで言って、戸惑ったような視線を快斗に向ける。
「……何か言われたのか?」
「うーん、何か"怪盗キッド"が関わってる事件について知りたいって感じのニュアンスだった」
「え!?何であいつが?ただの私立探偵なんだよな?これまでのキッドの仕事で、あんな奴に関わった覚えないけど…」
予想もしていなかった怪盗キッドの名前が出たことに、快斗は驚いて目を見開きながら、過去の自分の事件を思い返している。
「……新一があの人について何か知ってるみたいだから、また聞いてみるわ」
(何もないといいんだけど…)
名前は、真剣な表情の快斗の横顔を見ながら小さく息をついた。