「天国へのカウントダウン」編
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「ところで、TOKIWAって何の会社だったけ?」
「中心はパソコンソフトですが、コンピューター関係の仕事なら何でもやってるみたいですよ」
社長である常磐に会う前に小五郎がこっそり安室に尋ねと、安室は簡単に会社の特徴を小五郎に説明している。
「へー!それなら、テレビゲームもあるんだな!楽しみだぜ!」
「はは、ショールームっていうくらいだから、君達が出来るゲームも置いてあるかもしれないよ」
盛り上がる元太にも笑顔でそう答える安室の言動を、名前は蘭達と会話しながら横目で確認する。
(安室さん…おじさんや元太君達とも普通に仲が良いみたいね)
card.617
ショールームには安室の言ったように、最新の対戦ゲームやシミュレーションゲームが数多く並んでいる。
「これ何だろう?」
「ゲーム機ですかね?」
「やってみるかい?これはね、コンピューターが10年後の顔を予想して、プリントアウトしてくれるんだ」
歩美達が1つの大きな機械を見ていると、TOKIWAの専務でありプログラマーの"原佳明"が歩美達に笑顔で声をかける。
10年後の自分の顔が見られるとあって、園子や子供達は興奮して順番に機械に入っていく。そんな中、快斗はみんなの輪から少し離れたところで外の景色を眺めている灰原を見つけて、灰原に近付いていく。
「………。」
(哀と快斗、意外と話が合うみたいだし…快斗ならうまくやってくれるかな)
快斗が灰原の元へ向かうのに気付いた名前は、快斗の背中を黙ったまま見送った。
「やっほー、哀ちゃん」
「…久しぶりね、黒羽君」
快斗が灰原の背中にいつもの調子で声をかけると、灰原は少し眉をよせつつもすんなり言葉を返してくる。
「米花シティービルの爆弾騒ぎの時以来だよな?元気だった?」
「特に変わりないわよ」
「俺とは久々だけど、名前ちゃんとはちょこちょこ会ってんだろ?」
「まあね。特に、あなたがICPOを巻き込んでどこかの盗賊と揉めてた時には、いろいろと聞いたわよ」
「アハハ、ご迷惑おかけしました。……あ、哀ちゃんもしかして怒ってる?」
快斗はナイトメアの一件で、自分が名前にした事を思い返して内心冷や汗をかく。
「別に怒ってないわよ。私は名前の保護者じゃないし、そもそもその時は未遂だったようだし」
「アハハ…」
(名前ちゃん…哀ちゃんには結構、赤裸々に話すんだな)
快斗は灰原の言葉に何とも反応しにくく、笑って誤魔化そうとする。すると、それまで外を見ていた灰原がようやく快斗と視線を合わせる。
「でも、結局うまくいったんでしょ?良かったじゃない」
「ぐへへ…分かるう?」
「その締まりのない顔どうにかしなさいよ」
灰原は呆れたようにため息をつきながら、離れた場所で蘭達と話している名前に目を向ける。ゲーム機の近くでは、歩美や蘭の10年後の写真を見て盛り上がっているところだった。
「あなたは、あれやらなくていいの?」
「え?ああ…名前ちゃんがやりたいなら、やってもいいけど。10年後の名前ちゃんを見る楽しみは、10年後の俺のためにとっておくよ」
「…ふーん」
「そういう哀ちゃんこそ…」
「おーい!灰原もやってみろよ!」
「哀ちゃーん!!」
快斗がゲームをやらないかと聞こうとしたタイミングで、元太達が大声でそう声をかけてくるが、灰原は「私は、パス」と淡々と返している。
「……いいの?」
「当たり前じゃない。あなた、名前との仲がうまくいっただけじゃなくて、いろいろとお互いに言いたい事を言い合ったんでしょ?」
「え?」
「……私の事も聞いたのよね?」
「ああ…うん、聞かせてもらったよ」
「それなら分かるでしょ?10年後って言ったら、私は"宮野志保"の姿に…」
「もーっ!!灰原さんもやりましょうよ!!」
「こっちおいでよ!!」
真面目な表情で話していたところに、光彦たちがワイワイと割り込んできて、無理矢理灰原をゲームまで引っ張っていってしまう。
「お、おい…オメーら!」
慌てる快斗を尻目に、灰原と一緒にコナンまで無理矢理ゲーム機に座らせれて、どんどんゲームを起動させてしまう。
(おいおい、これ名探偵はやったらまずいんじゃ…)
その様子を見た快斗が思わず名前に目を向けると、名前も慌てた表情でゲームの画面を見つめている。
---ブーッ、ブーッ
----ERROR!!
「あれ?エラー?おかしいな」
「えー、見たかったのに」
しかし、ゲームからは突然エラー音が鳴り響き灰原とコナンの写真は出てこないまま終わってしまい、原が不思議そうにゲームの設定を確認している。
「……災難だったね」
無理矢理ゲームに連れていかれた灰原が、再び快斗のそばまで不機嫌そうな顔をしながら戻ってきたため、快斗は小声でそう声をかける。
「ま、写真が出てこなくて助かったけど。このタイミングでエラーが出るなんて、10年後には二人ともこの世にいないって事かもね」
「あ、哀ちゃん…」
「あなたも。組織のことに首を突っ込むなら覚悟しておきなさい、そんなに甘い連中じゃないのよ」
灰原は、快斗を真っ直ぐ見ながらハッキリそう告げる。そして目を丸くしている快斗を尻目に、少し悲し気な表情で言葉を続ける。
「本来だったら…当事者じゃない名前だって、こんな厄介な事に巻き込まれるべきじゃないのに。あなたは…いざとなったら、私や工藤君に構わないで自分の守りたい物をちゃんと守るのよ」
「俺は、哀ちゃんだって大事な友達だと思ってるよ」
快斗の言葉に、灰原は目を見開いたあとに小さく笑う。
「……少し前に、名前にも似たようなことを言われたわ」
「名前ちゃんに?」
「私のこれまでの経歴を知ってもそう言うなんて、お人好しなのね。あなたも、名前も」
◇◇◇◇◇◇
「名前さんはやらないんですか?」
灰原と快斗が話し込んでいる頃、名前の元に相変わらずの笑顔を浮かべた安室が近付いてくる。
「私はいいです。今は、子供たちが楽しんでますし…そういう安室さんは?」
(やっぱり、来たか…。とりあえず少し会話してみないと、何を探られているかも分からないわね…)
予想通り安室の方から接触してきたことに、名前は内心ため息をつきながらも、ひとまず当たり障りのない会話を続けようと質問を返す。
「はは、僕も遠慮しておきます。写真は苦手なので」
「へー、そうなんですか」
「蘭さんに聞いたんですが、名前さんも毛利先生とコナン君たちと一緒に、いろいろと事件に巻き込まれているそうですね」
「…時々ですけどね。蘭からそんな話を聞いたんですか?」
「ええ、僕も私立探偵をやってるから毛利先生の関わった事件は参考にしてるんですよ」
「なるほど。そうなんですか」
(聞いてるかぎりは、嘘っぽくもないけど…この人、いろいろ鋭そうだし…そもそも弟子入りする必要あるのかな?)
名前は安室の話に相槌をうちながら、そんな考えを巡らせる。すると、隣にいた安室が名前を覗き込むようにして笑顔で口を開く。
「特に…僕が聞いた話で興味深いのは、町田美術館館長殺害事件、黄昏の館で起きた千間探偵による殺人事件、鈴木財閥所有の漆黒の星とメモリーズ・エッグが狙われた事件……とかですかね?」
わざとらしく首を傾げながらそう言う安室は、名前に視線を合わせて笑顔を見せる。
「……随分と詳しくお聞きになってるんですね」
名前は顔がひきつりそうになるのを押さえて、感心したように笑顔でそう返す。
「ええ、興味深い内容ばかりだったので。ああ…あと、最近では暗黒の騎士(ダークナイト )の事件もありましたね」
「あら…おかしいですね、その件に毛利のおじさんは関わっていなかったはずですけど?」
「ああ!そうでしたね。すみません。でも今述べた事件には……」
「名前!安室さんも!常磐社長の準備が出来たみたいだから、75階のパーティー会場に行くよー!」
名前と安室の会話を遮るように、園子から声がかかる。名前は、「わかった、今行くわ」と返したあとに、もう一度安室に目線を戻す。
「今述べた事件には?何ですか?」
「……今述べた事件には、全て共通点がある。心当たりがありますよね?」
「………どうでしょうか?」
「ははっ。これらの事件以外にもあなたが関わっていて、尚且つその共通点がある事件がいくつかありましたよ」
「……………。」
「その辺りのお話、今度ゆっくり聞かせてくださいね?」
安室はニッコリと人当たりの良い笑顔でそう言うと、くるりと踵を返して園子たちのもとへと向かっていった。