「天国へのカウントダウン」編
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「今日行くのって、西多摩市に新しく出来たツインタワービルだっけ?」
「うん、そう。オーナーの常磐美緒さんが小五郎のおじさんの後輩らしくて。本当は来週オープンだけど、特別に今日招待してくれたらしいわ」
快斗と名前は、寺井の運転する車の後部座席でそんな会話をしている。
「元々蘭に一緒に行こうって誘われてたの。それを新一に話したら、だいたいいつものメンバーが来るから哀の様子見もかねて来てくれって」
「なるほどねー。それにしても、哀ちゃんが…誰かに電話ねぇ」
ここに来る事になる前に、先日新一から受けた相談内容を"灰原哀"の事情を含めて、一通り快斗に伝えていたため、事情を知った快斗も心配そうな難しい表情をしている。
「でも、哀がどこかに電話している事は誰も気付いていない事になってるから。あくまで普通にね?」
「オッケー、俺と哀ちゃん仲良しだからね!任せといてよ!」
「うーん、ほどほどにね」
正体を明かしてから何かと灰原に絡みたがる快斗に苦笑しながら、名前は窓の外に目を向ける。車の進行方向には、高さ319mと264mの日本一大きな双子と呼ばれるツインタワービルが見えた。
card.616
「名前!黒羽君!」
既に怪盗キッドだと新一に正体はバレているものの、寺井の存在は明かしていないため、ビルの少し手前で車を降りた二人。ビルの入り口に歩いて向かうと、こちらに気付いた蘭が手を振っていて、そのまわりには園子や小五郎、少年探偵団に阿笠…と、いつものメンバーがそろっているのが見えたのだが、その中の一人が視界に入った名前は、思わず「えっ、」と声を上げる。
「名前ちゃん、どうした?」
「名前さん!!」
それに気付いた快斗が小声で声をかけてきたのと同時に、蘭の隣に立っていた安室が笑顔で駆け寄ってくる。
「あれが、この前話した安室さん」
「ああ、あの怪しかった店員ってやつ?」
安室が自分達のもとへ向かってくる隙に、名前が小声で快斗にそう伝えると、快斗も表情には出さないものの少し警戒したような声で反応する。
「名前さん、こんにちは。ポアロに来てくれないかと待ってたんですよ」
「こんにちは。すみません、江古田から米花町に行く機会があまりなくて」
「そうですか…こちらの方は?」
「どーも!名前ちゃんの彼氏の黒羽快斗です。ポアロの店員さんなんですよね?今日はどうしてここに?」
快斗は警戒こそしていたものの、さすがのポーカーフェイスでにこやかに言葉を返している。
「毛利先生に誘っていただいたんですよ。…それにしても、名前さんの彼氏さんでしたか。お付き合いをしている相手がいたとは、残念です」
「……はあ?」
しかし、安室がサラリと放った一言に快斗は早々に笑顔を引っ込めて、思いっきり顔をしかめる。
(快斗…ポーカーフェイスがあっという間に崩れてるじゃない)
名前は、そんな快斗を横目で見て内心ため息をつくが、安室はというと不機嫌な快斗に構わずに言葉を続ける。
「ですが、今日こうやってお会いできて嬉しいです。名前さんとは、ゆっくりお話してみたかったので」
「……そうですか」
「ゆっくりお話って…オメー!」
「あ、安室さん!常磐さんの秘書さんがショールームに案内してくれるって!」
不機嫌な快斗をどうしようかと考えていた名前の足元で、いつの間にか側に来ていたコナンがそう言って話題を変えてくれる。コナンが声をかけてくれたことに内心感謝しつつ、名前が小五郎たちの方を見ると"沢口ちなみ"と名乗る常磐美緒の秘書が小五郎や阿笠に挨拶をしているところだった。
「そうかい、じゃあ行こうか。名前さんと黒羽君も行きましょうか」
「……そうですね」
安室は不機嫌そうな快斗にも笑顔を向けたままそう声をかけると、コナンと並んでビルに向かっていく。
「はあ!?何なのアイツ!!」
「快斗、ちょっと落ち着いてよ…」
安室とコナンの少し後ろを並んで歩く名前と快斗。小声ではあるが、快斗は苛々したした様子でブツブツ呟いている。
「だって!俺、彼氏って言ったよな?その上で!!あいつ本当に名前ちゃんに気があるんじゃねーの?」
「違うと思うけど…口ではああ言うけど、あの人全然表情変わらないし」
「……じゃあ何なんだよ?」
「それは分からないけど…何か探られてるような気がするって言ったじゃない?うーん、まさかハニートラップとか…?」
「はあぁ!?俺の名前ちゃん相手に?それこそ許せねーわ!とにかく、あいつの正体がわかるまであんまり近付くなよ!!」
「うん、気をつける…」
(けど…さっきの感じだと、また向こうから接触してきそうだな…。今日は哀の様子を見に来ただけのつもりだったのに)
名前は快斗を落ち着かせるように素直に相槌を打ちながらも、小さくため息をついた。
「名前と黒羽君、久しぶりだね」
「おー、悪いな!毎回蘭ちゃん達の集まりに俺まで呼んでもらって!」
「いいのよー!!黒羽君は名前の旦那なんだから、もう私たちの仲間みたいなもんじゃない!」
「園子、その旦那って何なの?」
「もー、あんたは蘭と違ってからかいがいがないわね~」
「ちょっと園子!それどういう意味よ!?」
「はは、蘭ちゃんの旦那はまだ帰って来ねーの?」
「く、黒羽君まで!!」
ショールームに向かう中、コナンと安室の後ろでは名前と快斗が蘭達と楽しそうに会話している。
(ったく、黒羽のヤツ…一応、現行犯以外は見逃すとは言ったが…まさか、ここまで俺たちに馴染むとは…)
コナンは以前まで敵対していた快斗が、最近当たり前のようにイベントとなると一緒に参加するようになった現状に複雑な気分になる。
「名前さんと黒羽君…僕は会うのは初めてだけど、結構恒例のメンバーのようだね」
そんな事を考えていると、隣を歩く安室がふいにコナンに声をかけてくる。
「あー、うん。確かに、蘭姉ちゃん達と仲良いから、こういうイベントとなると園子姉ちゃんが声かけてるかも」
「ほぉー」
「安室さん、この間から何を気にしてるの?言っておくけど、名前姉ちゃんは絶対組織とか関係ないからね!」
「はは、彼女が組織の人間とは思っていないさ。ただ別件で、少し気になるところがあってね」
「……別件?」
「ああ、とりあえず親しくなっていろいろ聞いてみたかったんだけど…思ったよりガードが固くて」
「名前姉ちゃんは、そこら辺の女の人みたいには靡かないと思うよ?一応、快斗兄ちゃんもいるし…」
「おや、コナン君は黒羽君が彼女の相手なのは不満なのかい?」
「べ、別にそういうわけじゃないよ!」
「ふーん、ま…気長にやるさ」
「僕の知り合いなんだから、あんまり変なことしないでよ?」
相変わらず何かを探るように名前と快斗を見る安室。その横顔を見てコナンは眉をよせる。
(一体、名前の何に引っかってるんだ…安室さん)