「天国へのカウントダウン」編
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『明日、西多摩市のツインタワービルに行くことになりそうよ。もちろん、彼も一緒に…』
静まり返った深夜。阿笠邸の地下室では、灰原が声を潜めて誰かに電話している。その表情はどこか、思い詰めたような悲し気な表情に見える。
---同時刻
首都高を走るポルシェ356Aの車内
「わかりましたぜ、兄貴!西多摩市ツインタワービル…あそこは確か、天国に一番近いって」
「ふん、そいつはいいや。あの世に最も近い処刑台にしてやろうじゃねーか!!」
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*天国へのカウントダウン編
「……哀が夜中に電話?」
「そうなんだよ。博士がここしばらく灰原が何回か夜中に起き出すのに気付いて、こっそり様子を見に行ったら、どうも電話をしてるみてーなんだ」
「でも、今の哀に電話をかける相手なんて…」
名前は、コナンからの"相談"が思いもしなかった内容だったため、心配気に眉を寄せる。
「ああ、俺はあいつを信じてる…が、黒ずくめの男たちへの恐怖が、灰原を組織に寝返らせた可能性がないとも言えない…って、博士が気にしててなぁ」
コナンも珍しく憂いた表情で、歯切れ悪くそう告げる。
「それ、は…今さらないと思うんだけど」
最近の灰原は子供たちと過ごしていくうちに、以前に比べ笑顔も増えていた。名前とコナンは、そんな様子を思い浮かべながら、首を傾げる。
「おや、コナン君。難しい顔をしてどうしました?」
そんな時、ふいに名前の後ろから声がかかり、二人は驚いて顔を上げる。考えに集中しすぎて、人の気配に気付かなかったのだ。
「あ、安室さん!」
「コナン君、いらっしゃい」
(安室?気配が全然しなかったけど…新しい店員さんかな?)
名前は、コナンと顔見知りらしい店員にチラリと視線を向ける。金髪に青い瞳が映える褐色の肌。それに加えて、整った顔立ち…随分と目立ちそうな店員だという印象を受ける。
そんな事を考えていると、褐色イケメンの視線が名前に向く。
「お客様は初めましてですよね?見たところ高校生くらいですか?小学生のコナン君とは珍しい組み合わせだね」
「あ、名字名前といいます。仰る通り高校生で…」
「蘭姉ちゃんの幼なじみなんだよ!だから僕も知り合いなんだ」
「……名字…名前さん?」
「そうですけど…何か?」
先ほどまでの爽やかな営業スマイルが目を細めた探るような視線に変わる。それはほとんどの人は気付かない程度のほんの一瞬で、すぐに爽やかな笑顔に戻ったが、それに気付いた名前はコナンに目配せする。
しかし、コナンも安室の変化には気付いたようだが、名前の何に反応したのかは分からないようで、不思議そうな顔をしている。
「いえ、蘭さんの幼なじみということは…工藤新一君とも?」
「あ、そうですね。…とは言っても、親の転勤の関係で最近こっちに戻ってきたので、もう随分会ってませんね。私は高校も江古田高校で彼とは別ですし」
安室とコナンの関係がわからない名前は、ひとまずそこまで仲良くもない、と当たり障りのない返事を返しておく。
「へー、そうなんですね。僕は安室透と言います。私立探偵をやっていましてね、毛利探偵に弟子入りしてるんです」
「小五郎のおじさんに?」
「ええ。それに、蘭さんやご友人の園子さんもここの常連さんなんです。名前さんも、今後もまたぜひいらしてくださいね」
「あら、園子も来るんですね。また蘭達と、ぜひ。」
「本当に来てくださいよ?待ってますから」
「…はぁ、わかりました」
名前がひとまず笑顔でそう返すと、安室は笑顔のままカウンターに戻っていく。安室がカウンターに向かうために、名前達に背を向けたすきに、名前は携帯を素早く操作しアラームをセットする。
---ピリピリ
そして、安室との会話から数分後に作動したアラームに反応して、名前はポケットから携帯を取り出す。
「…名前お姉さん電話?」
「ううん、メール…あ、友達から呼び出されちゃった。私そろそろ帰ろうかな…コナン君はどうする?」
名前は、適当に携帯を操作してメールを読んでいるのを装ってそう答えながら、コナンと軽くアイコンタクトをとる。
「えー、じゃあ僕も帰るよ」
コナンは、名前に向かって小さく頷いてそう答えると、二人揃って席を立つ。
「おや、もう帰るのかい?」
「うん、安室さん…またね!」
「ご馳走さまでした」
「あ、名前さん!またぜひいらしてくださいね!待ってます」
「…ありがとうございます」
◇◇◇◇◇◇◇
ポアロを出て店から少し離れた所で、名前はため息をつきながら、隣を歩くコナンに声をかける。
「ねえ、あの人新一は顔見知りみたいだったけど何なの?何か探られてるような感じがしたから、思わず店から出ちゃったけど」
「いや…組織関連で最近オメーに伝えてなかった事の中に安室さんの件も含まれてたんだけどよ…」
「え?組織の人間なの?」
「いや、違うとも言い切れないけど…敵ではないんだ」
「はあ…?」
コナンは、いくら名前を信用してるとはいえ、勝手に安室の事情を全て話していいものかと口ごもるが、名前はハッキリしないコナンに首を傾げる。
「それより、オメーこそ…安室さん、オメーの名前に反応してたぞ?何か心当たりねーのかよ?」
「えー、ないわよ。そもそも、あの安室さんだって初対面なのに。またポアロに来いって圧が凄かったわね」
「ああ。安室さんに限って、オメーがタイプだとかそういう理由はないだろうし」
「…私も同意件だけど、その言い方は腹が立つわね」
「とにかく、あの安室さんが反応するには何か理由があるはずなんだが…」
コナンが真剣そうに思い悩んでいる横顔をチラリと見て、名前は眉を寄せる。
(よく分からないけど、新一がそこまで言うなら…しばらくは、あの人にはあまり近付かないようにしようかしら)
自分の何が安室に引っかかったのか分からない名前は、首を傾げながらも、幼なじみである新一が重要視する"安室透"という人物との今後の関わり方を思案する。
「実は顔を合わせてほしいって言ったのが、さっきの安室さんだったんだ」
「え、そうなの?」
「だけど、さっきの安室さんの様子も引っ掛かるから…ちゃんと紹介するのは、少し待ってくれ」
「……わかったわ」
結局この日は、灰原についての相談を受けただけで解散となった。