「天国へのカウントダウン」編
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「私が江古田高校に転校してきた理由を話したの覚えてる?」
「ああ、覚えてるよ。困ってる知り合いのために、情報を集めたいってやつだろ?」
「……よく覚えるわね」
「そりゃー、名前ちゃんの事ですから!」
コナンが帰ったあと、名前と快斗はソファに並んで座って改めて話を始めている。
「何となく分かってると思うけど、それ…新一のことなの」
「あー、そうだろうな…とは思った」
「新一が、今あんな姿になってるのは…ある事件に巻き込まれたせいなの。その事件を解決して、元の姿に戻るには危険な犯罪者を相手にしないといけない」
真剣な表情で話す名前の説明を、快斗は所々に相槌をうちながらも黙って聞いている。
「私は事情を知ってるし、新一には昔からただの幼なじみとは言えないくらい…いろいろ助けてもらったから…出来ることがあるなら力になりたいと思ってたの」
「……思ってた?」
名前が、過去形で話す事に快斗は首を傾げる。そんな快斗をチラリと見た後に、名前は戸惑いがちに口を開く。
「怪盗キッドでもある快斗と付き合ってるって事が新一にも伝わった後に、組織の話題になったんだけど、その時に…『あいつは、オメーの為なら火の中、水の中……ってタイプだもんな?オメーが組織の事に関わるなら、間違いなくあいつも関わってくるだろうよ。もし、オメーがあいつを俺達の事に巻き込みたくねーなら、オメーもこれ以上組織の事には関わるな』……って、新一に言われたの」
「……あー、なるほど。俺のことよくわかっていらっしゃる」
(っていうか、名前ちゃん…何気にあいつの真似うめーな。今は言える雰囲気じゃねーけど)
快斗は、脳内に先ほど帰っていたコナンの姿を思い浮かべて苦笑する。
「そう言われて迷ったの。新一のことは大事だけど、快斗まで新一の事情や組織の事に、私の勝手で巻き込みたくないって」
「名前ちゃん、それは…!!」
名前の言葉に、快斗は思わず身を乗り出すようにして詰め寄る。しかし何か言おうとした快斗の口を名前の右手がパシッと塞ぐ。
「ふふ…快斗は優しいから"そんな事ない"って、言うんでしょ?」
「………。」
「そうだろうな、って思った。私が事情を話せば…快斗はきっと力になってくれる。巻き込まれてくれる…って。でも…やっぱり快斗を巻き込みたくなくて、ずっと迷ってた」
名前はそう言った後に、一度目を伏せて息をつく。未だに右手で、口を塞がれた快斗は、眉を寄せながら名前を見つめる。
ほんの数十秒だろうか、名前は伏せていた目線をゆるりと上げて、快斗を真っ直ぐ見つめる。
「これから先、私は必ず新一の事情に関わる。私は新一が危ない目に合うってわかってて、見て見ぬふりは出来ない」
「…………。」
「だけど、快斗と…これからもずっと一緒にいたい」
「!」
「だから、快斗がこんな私でも一緒にいてくれるなら…新一の事情を全部話すから、一緒に巻き込まれてほしい」
名前はそこまで言うと、どこか不安そうに再び目線を下げる。快斗は、自分の口元にある名前の手を優しく包むと両手でギュッと握る。
「そんなの、当然じゃん。俺の共犯者を名乗り出てくれるような可愛い彼女を、一人で危険な目に合わすわけにはいかねーよ」
「快斗、」
「ま、その事がなくても…名探偵の言うとおり…俺はもう、ずっと前から名前ちゃんのためなら"火の中、水の中"どこへでも行くつもりだけどな」
「……ありがとう。キッドだけでも大変なのにごめんね」
「謝るのはなしだって。昨日言ったろ?"これから先も…どんな事になっても、どんな時も一緒にいるから。全部俺にちょうだい"って…俺ら、ずっと一緒にいるんだからさ!お互いの荷物を助け合って持つのは当然だろ」
「……うん」
何の後悔も不安もない、ハッキリした口調といつもの笑顔。それを見た名前は、ふっと肩の力を抜いて快斗の胸に身体を寄せる。そんな名前の身体を、快斗は力強く抱き締めた。
card.614
「結局、黒羽に全部話したのか?」
「ええ、新一の事も哀の事も…私の知る限りは一通りね」
先日のやり取りで、コナンと約束していた名前。当日になって、コナンからポアロに来てくれ、と呼び出されたため、二人は珈琲を飲みながら、小声で話している。
「……とは、言っても。俺が黒羽を巻き込みたくないなら関わるなって言ってから、しばらくオメーには組織のこと話してなかったろ?あれからいろいろ事情も変わってんだ」
「?そうなの、そんなに込み入った話をするなら…私の部屋で良かったのに」
「いや、オメーにも顔を合わせてほしい人がいたから、ここに呼んだんだけど…今日はまだいねーみたいだから、先に相談したかった件を話す」
「ふーん?そこはお任せするわ」
「ところで、今日は黒羽はいいのかよ?ってきり、事情を聞いた上で一緒に来るのかと思ったぜ」
「ああ…新一の話が何だか分からなかったから、今日はひとまず私だけ来たの」
そう説明すると、コナンは納得したように小さく頷く。そして、元々小声で話しているところを、更に身を乗り出すようにして体勢を変えたため、名前も軽く店内を見渡しながら、コナンの言葉を待った。