「ダーク・ナイト」編
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--ピンポーン
室内に響いたインターフォン。名前はその音にピクリと反応したあとに、大きく息をついて目を閉じる。そして、ゆるりと目を開けて軽く頬を叩いてから玄関に向かった。
card.611
「おかえりなさい」
「……うん、ただいま」
玄関をあけた名前が笑顔で声をかけると、快斗は少し気まずそうに視線をさ迷わせた後にポツリと返す。
「怪我は?大丈夫だった?」
「ああ、俺は…平気」
「そう、良かった」
"俺は"というところを僅かに強調するように話した事に気付いたが、名前はそこには触れずに、快斗の手を引いてリビングに向かうとソファに座るように促す。
「名前」
「…何?」
「お前もあの倉庫に来てただろ?」
「…うん」
快斗は小さく息をついて、片手で目元を覆う。名前は、そんな快斗の隣で黙って快斗の言葉を待つ。
「俺は…自分が情けない。知らねー間に、名前とジィちゃんの事を調べられて、あんな奴にまんまと利用されて」
「……うん」
「…あいつを助けることも出来ずに死なせちまった。俺だけが…俺だけが、あの時あいつのそばにいたのに」
「……うん」
「……だけどさ、だけど俺あいつに俺達の秘密を公表するって言われてから…今もずっと考えてるけど、思い付かないんだ。今のこの状況以外で、名前を守れる方法が…!」
快斗は苦しそうにそう言うと、それ以上は言葉にならない。名前は、その快斗の表情に胸が締め付けられるような感覚に陥って、思わず快斗をぎゅっと抱き締める。
(私たちのこと公表するって言われたのか…)
快斗に一人で辛い思いをさせてしまったようで、名前は快斗を抱き締めながら天井を見上げる。
「ねぇ、快斗」
「………。」
「私もたくさん考えたの。白馬君にもいろいろ言われたし」
「…あいつに何か言われたのか?」
「いろいろ…ね。それで思ったの」
「何を?」
自分の肩口に快斗の顔を押し付けるように抱き締めて、名前も快斗の首筋に顔を埋めながら、名前は小さく息をつく。
「私は快斗が好き、快斗と一緒にいたいから怪盗でも構わない。怪盗キッドの快斗も全部好き。今までそう思ってたけど、」
「……けど?」
快斗は顔をあげないまま、ピクリと身体を震わせる。
「だけど、それって甘かったと思うの。快斗が好きだから一緒にいたい、快斗もそれを受け入れて正体を明かしてくれたでしょ?」
「ああ」
「だけど、大切な事をずっと見ないふりしてた」
「……大切な事?」
「キッドの正体がバレたらどうするのか、快斗が捕まったらどうするのか、私とキッドの繋がりがバレだらどうするのか」
「……そんなの!!」
快斗はガバッと身体を離して、名前を真っ直ぐ見つめる。その表情は今にも泣き出しそうに見える。
「そんなの…例え俺が捕まったってオメーは何にも知らなかったって言えばいいんだ。オメーのことは、俺が何としてでも守るから。キッドの事でオメーが責められるような事には絶対…」
「快斗、それじゃダメよ」
「なっ、」
「快斗が好きだって言って、都合のいい時だけそばにいて…何かあったら、快斗に守ってもらって私だけ安全なところにいるなんて…」
「いいんだ、それで!!俺がオメーを好きだからそばにいたいんだ、それでいいんだよ!」
--青い春を楽しむのは結構だが、そんな甘い考えで犯罪に手を染めているわけではないのだろう?--
(くそっ!最初から分かってた。名前を巻き込む可能性があることくらい。それでも、巻き込むにしたって、可能な限り名前のことは守らないと)
快斗はコネリーとの会話を思い出して、顔をしかめる。自分の正体を知っているとはいえ、名前が実際に犯罪に手を染めているわけではない。快斗はどうにかして、そんな自分の思いを伝えようとするが、
名前はそんな快斗を尻目に小さく首を振る。
「いいえ、ダメ。怪盗キッドである事を、何度も追いかけて、問い詰めて私が快斗に明かさせたのに…そんなんじゃ、快斗のそばにいる資格がないわ」
「名前…」
そうキッパリ言い切った名前に、快斗は驚愕の表情を浮かべる。そんな快斗の手を握って、名前は穏やかな笑みを浮かべる。
「今までも真剣に快斗のことを考えて、快斗の事が好きだった」
「ああ、分かってる」
「でも、楽しい事だけ共有して、相手が一番辛い時とか大変な時に一緒にいられないような関係なんて、おままごとみたいで薄っぺらいと思わない?」
名前の言葉に、快斗は困ったように眉を寄せる。何と答えればいいのかわからないのか、僅かに口を開いたまま下を向いてしまう。
(落ち込んで帰って来たのに、一方的に言いすぎたかな…だけど、これだけは言わなくちゃ)
名前はそんな快斗の姿に罪悪感を感じるが、今このタイミングで向き合わなければ、きっとまた誤魔化してしまう。
「だからね、快斗…お願いがあるの」
「……何?」
「私を、快斗の共犯者にして」