「ダーク・ナイト」編
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「パ、パパァ!?」
「なにっ!?コネリーさんっ!おい、救急車を呼べ!!」
倉庫に入った中森とケンタは、血を流して倒れているコネリーの姿を見つけて声をあげて駆け寄る。そんな中、中森たちの少し後ろでその姿を確認した名前は、口元に手をあてて目を見開きながら立ち止まる。
白馬は、そんな名前の姿を横目で見ると肩にポンと、優しく触れてからコネリーの元へ駆け寄っていった。
card.610
「……ダメだ」
「パパ…パパァ!!」
救急車を呼ぶように指示したものの、中森によってその場で死亡確認がなされる。ケンタは涙を流して、倒れているコネリーに覆い被さっていて、青子が心配そうに背中を擦っている。
「…キッドの手袋を握っているところをみると、落ちそうになったこの人をキッドは助けようとしたようですね」
コネリーのそばにしゃがみこんで状況を確認していた白馬は、コネリーが掴んだままのキッドの白い手袋を見てそう呟く。その言葉を聞いた中森は、難しい顔をしたまま辺りをぐるりと見渡す。すると、コネリーのすぐそばに宝石。そして、少し離れたところにナイトメアの仮面が落ちているのが目に入って、それを拾い上げる。
「これは…ナイトメアの仮面にキッドのトランプカードが刺さっているという事は!さては、あの二人…仲間割れして逃げやがったな!!お宝も放り出して!」
忌々し気にそう呟く中森には言葉を返さずに、白馬は離れたところに立ち尽くしている名前のそばに足を向ける。このような事件には慣れているはずの名前は、いつになく青い顔をしてコネリーの遺体を見つめている。黄昏の館、探偵甲子園の事件を共に過ごしたが、名前がここまで動揺することはなかった。白馬は、困ったように眉を寄せて小声で声をかける。
「名前さん、大丈夫ですか?」
「え、ええ…平気、」
「彼は盗んでいったようですね」
「え?」
白馬の言葉に、名前はゆるりとコネリーから白馬に視線をうつす。宝石はこの場に残されているのに、一体何を盗んだというのか?
自分を見上げる名前の目が僅かに潤んでいるように見えて、白馬は優しく安心させるように微笑んで言葉を続ける。
「彼のために、悪夢という名の真実をね」
「!…そうね、」
白馬の言葉に名前は、未だに泣き続けているケンタにチラリと目線を向ける。あの仮面をつけたままの状態でコネリーが見つかれば、彼の…ナイトメアの正体をあの小さな子供も知ることになっただろう。
「亡くなったとしても、あの人のこれまでの罪は消えない。しかし、犯罪者に罪を償わせることなく…小さな子供が父親を想う心情を優先させた。彼らしいと言えば、彼らしい」
「…………。」
「動揺しましたか?」
「え、」
「彼はこれまで、たまたま起きた殺人事件に巻き込まれたことはあっても、今回のように怪盗キッドに深く関わる人物が亡くなる案件はなかった」
「それは、そうでしょうね。だって彼は…」
「"殺人犯"ではなく"怪盗"だから?」
「…そうね」
「その通り。彼のこれまでの犯行スタイルからして、一貫して他人を傷つけるつもりがないのは明白だ。しかし、これからは分かりませんよ」
「……え?」
「彼の名は、犯行を重ねる度にどんど有名になる。きっと、これからも今回のようなナイトメアや、よからぬ事を考える人間に目をつけられる機会は増えるでしょう」
そこまで言って白馬は小さくため息をつく。名前はそんな白馬の様子に首を傾げるが、白馬は少し迷うような表情をしながらも名前に真っ直ぐ視線を向ける。
「そして、今回は謀らずもあの人の死によって…あなた方の、おそらく怪盗キッドが一番守りたかった秘密を守り抜くことが出来た」
名前はその言葉に大きく目を見開いて、白馬を見つめ返す。ぞわりと身体中に得たいの知れない感覚が駆け巡るのを感じる。自分の唇が細かく震えてるのを感じながら、名前は
ゆっくりと口を開く。
「そうだとしても…彼が、怪盗キッドが、それを意図してやったわけない」
「分かっていますよ。先ほども言ったように…彼はそういうタイプではないし、現にあの人を助けようとした形跡も残っています。今回は運の悪い事故でしょう」
「……それなら、」
「しかし、今後同じような事があったら?同じように、知られたくない秘密を知られてしまったら…彼は、どうするでしょう?彼自身のことなら覚悟していても、"もう1人"の事に関して覚悟が出来ているとは…僕には思えません」
「…………。」
「最悪の選択肢を選ばないとも限らない」
--あいつは、オメーの為なら、火の中、水の中…ってタイプだもんな?--
白馬の言葉に、ふいに幼なじみに言われた言葉がよぎる。
(新一は優しいから、こんなに核心に迫る厳しい言い方はしなかった。だけど、白馬君も優しい。ずっと前から、正しい方法で必死に自分の友人を、正しい道へ引き戻そうとしてる……だけど、)
「そんな事、絶対させない」
名前はハッキリと白馬の目を見てそう言い切る。その言葉に、息をのむ白馬を見た名前は、ニッコリと微笑んで言葉を続ける。
「…って、怪盗キッドが選んだ相手なら言うと思うな、私は」
「……ふ、ははッ、なるほど。そうですか、相変わらず手強いですね。」
「これは一般論だけど、弱ってる人を追い込んで自供を促すなんて…嫌われるわよ」
「探偵の常套手段ですよ。それに、そうでもしないと崩せそうもありませんから」
白馬はそう言いながら、名前の背中に手をまわして倉庫の外へと促す。その様子は、いつもの優しくて紳士な白馬そのものだった。これまでの話は、ひとまずこれで終わりにしてくれるということだろう。
案の定、白馬は少し眉を寄せて申し訳なさそうに口を開く。
「しかし、女性相手に少しやり過ぎました。本来は、あなた1人にする話ではありませんし」
「…優しいね、白馬君は」
名前はそう言いながら小さく息をつく。白馬に対して怪盗キッドとの関係を認めないのは、今まで通り。でもそれ以外は違う。キッドの事も、そして私のことも。今まで新一に言われてきたことも。全部、ちゃんと向き合うべきなのだ…これからも、快斗といるためには。