「黄昏の館」編
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名前は暖かい体温に包まれながら、頬に流れる風を感じる。
(…やっぱり来てたのね)
card.61
「……お嬢さんは、どうやら宙に飛び出すのがお好きなようですね?」
耳元で聞こえる声に僅かに胸が高鳴る感覚を覚えた名前よりも先に,怪盗キッドは更に言葉を続ける。
「しかし……"あまり私に心配をかけさせないでほしい″と言ったはずですが?」
名前の身体を抱き抱える怪盗キッドの腕に僅かに、僅かに力が篭るのを感じる。名前は口元に緩やかな笑みを浮かべながら、言葉を返す。
「……今回は、あなたがいるだろうなって思っていたから怖くなかったわ」
「え?」
「あなたなら、きっとあの時と同じように私を助けてくれると思ったから」
「……。」
モノクルに太陽の光りに反射して、しっかりとは見えないがキッドの瞳が僅かに見開くのが分かる。
「…私が今回ここに来たのは、あの招待状を見たから。あなたがあんな風に自分の正体を隠すような予告状を出すとは思えなかったけれど、一応ね」
名前はキッドが言葉を紡ぐ前に、更に言葉を続ける。
「…千間さんが、あのヘリから飛び降りたのはあなたを助けるためよ」
「…え?」
「そうでもしなきゃ…あなた逃げられなかったもの」
名前はそう言いながら、チラリと上空を飛ぶヘリに向かって視線を上げる。
キッドもその視線を辿ってヘリに目を向けると、開いた扉から自分を見下ろしている小さな探偵と、いつもしつこく自分を疑う同級生の探偵の姿が見える。
「あー、……っと、バレていましたか」
キッドは思わず普通に喋りそうになったのを抑えて、いつもの口調で困ったように答える。
「煙草よ。おじさんはヘビースモーカーでしょ。あなた、館に来てから1本も吸わなかったから」
「……なるほど」
キッドは指摘された事に納得しつつも、変装を見破られていたこと小さくため息をついた後に苦笑する。
「敵いませんね…"探偵″と呼ばれるあなた方には」
「……少なくとも私は探偵じゃないんだけどね」
「ふふ…それより、何故ですか?あなたは何故そこまでするんです?」
キッドの言葉に、名前は小さく息をのんで視線をさ迷わせた後に口を開く。
「…あなたに会うためよ。招待状を見てこんな所まで来たのは。だって、そうでもしなければ天下の怪盗キッドさんには会えないでしょ?」