「ダーク・ナイト」編
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(くそっ…どうする?トランプ銃を出すにも、少しでも身動きを取れば撃たれちまう。いや、それよりも…このままこの場から逃げたとしても俺達の事を世間に公表されるわけには…)
--ファンファン
「おっと…何も知らない私の部下達が、私の指示通り地元警察を連れてやって来たようだ」
銃口を向けられたキッドが考えを巡らせていると、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてくる。
「筋書きはこうしよう…宝石の取り分について揉めた結果、ナイトメアはキッドを殺して逃げた…と。ハハッ、片方の宝石を手にした君の屍を…彼女も見ることになるだろう」
「……ッチ」
(何とか…名前に疑いが向く事がないようにこの場を切り抜ける方法はないのか…?名前だけは、あいつだけは何としても…)
--気をつけて。帰りは、また部屋で待ってるからね。--
こんな風に犯罪に手を染める自分を理解して、怖がらせても傷つけても、ああ言ってくれる名前の笑顔が、追い詰められたキッドの脳裏に浮かんでいた。
Card.609
「……人の命をとってまで、息子を助けたいってか?」
「な、なんだと?!」
キッドが時間稼ぎのために苦し紛れに口にした言葉に、コネリーは思いの外動揺したような反応を見せる。
「あんたの息子が鎮痛剤を飲んでいるのを見たぜ?厄介な頭の病気なんだろ…治療するには、莫大な金が必要だ」
「……」
「あんたが、息子に言った"ナイトメアが消えれば病気が治る"っていうのは、その費用が貯まればあんたがナイトメアを引退するって事なんだろ?」
「だ、黙れ!息子のために、私はこの仮面を被って盗賊どもを利用し続けるしかないんだ!!」
キッドにとって名前が弱味となるように、コネリーにとっての弱味となる息子のケンタの事を指摘されて、言葉を荒げる。
「パパァ!!どこにいるの!?」
キッドの言葉を遮るように拳銃を構え直したとき、突然ケンタが父親のコネリーを探す声が響く。二人が話し込んでいる間に、外ではコネリー達の後を追ってきたケンタや中森達が捜索を始めていたのだ。
「ケ、ケンタ…!?」
寂れた倉庫で聞こえるはずのない息子の声が聞こえたコネリーは、一段と動揺して大きく後ろを振り返る。
---ザッ!
「うわっ、」
「お、おい!危ねぇ!!」
狭い足場で慌てて動いたコネリーは、足場から足を踏み外して地上に落ちそうになる。それを見たキッドは引き止めようとコネリーの右手を掴んだが、僅かに間に合わずコネリーの身体は、キッドに右手を掴まれただけの状態で宙ぶらりんの状態となる。
「す、捨てろ!そんな宝石を捨てて、両手で俺の腕に…早く!!」
コネリーが落下しないように彼の手を精一杯握っているキッドの表情は、苦し気に歪んでいる。キッドよりも体格のいいコネリーの全体重を片手だけで支えるには限界がある。キッドは、未だに左手にもった宝石を離そうとしないコネリーに向かって声を荒げるが、コネリーは青い顔をしたまま首を小さく横に振る。
「だ、駄目だ!これはケンタの、ケンタの手術のために…」
「今はそんな事言ってる場合じゃ…!!」
その時、コネリーを掴んでいるキッドの右手の手袋がズルッとずれる。コネリーの体重に耐えきれなかったのだ。
「くそっ、早く掴まれ……あ!!」
「うわああああ!!」
しかし無情にも手袋はズルズルとキッドの手からズレていく。慌てるキッドだったか、もはやどうすることも出来ない。コネリーはキッドの手袋を掴んだまま地上に向かって落ちていく。
----ドンッ!!
「おい、こっちから何か音がしたぞ!」
「パパかもしれない!」
かなりの高さからコネリーが落下したため、倉庫には鈍い衝撃音が響き渡る。その大きな音に気付いたのか、倉庫の外から中森やケンタ達の声が響いて、キッドのいる倉庫に近付いて来るのを感じる。
「………。」
--ボクも戦う!パパみたいになるんだもん!!--
自らの手袋と共に落下していき、遥か眼下で血を流して倒れているコネリーを呆然と見ていたキッドだったが、ふいにケンタの言葉が脳裏によぎる。
「くそ、くそっ!!」
悔しそうに声を荒げながらトランプ銃を取り出したキッドは、倒れているコネリーに向かってポンっと、トランプを放つ。
---パコッ!!
放たれたトランプはナイトメアの仮面の縁に当たり、倒れているコネリーの顔から仮面が弾け飛んで、仮面の下から目を閉じたコネリーの顔が現れる。それを確認したキッドは、中森と共に名前と白馬達が倉庫に入ってくるのを横目に見ながら、窓から飛立ってその場を離れたのだった。