「ダーク・ナイト」編
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名前たちが怪盗キッドの行方を追っていた頃、キッドは闇夜に紛れてナイトメアに指示された倉庫に向かっていた。
ナイトメアに指示された倉庫は1階と2階に別れていてかなり大きいものの、使われなくなって何年もたつのか、窓のガラスはあちこち割れていて、壁や柵も所々朽ちて壊れている。キッドはガラスの割れた二階部分の窓から倉庫内に入ると、ハンググライダーの翼を閉じて倉庫の天井に繋がる僅かなスペースを進んでいく。
「……危ねーな」
自分の歩く足元は一人がギリギリ歩く幅しかなく、設置された柵も所々朽ちているため足を踏み外したら、薄暗い倉庫内の床へまっ逆さまとなるだろう。
---パチパチパチ
「いやー、見事だったよ。怪盗キッド君!」
すると、ふいにキッドの前方から軽い拍手と共に声が聞こえてくる。視線を前に向けると、初めて出会った時と同じく黒い衣服を身に纏い仮面をつけて佇むナイトメアの姿。キッドはその姿を見て僅かに眉を寄せた。
Card.608
「君を選んで正解だった!約束通り獲物は山分けといこうか」
「ふん、いるか!そんなもん」
キッドは鼻を鳴らすようにそう言いながら盗み出した宝石をナイトメアに向かって投げる。ナイトメアはそれを受け取りながら首をかしげる。
「ふっ、私が選択した逃走経路に感服したのは分かるが…盗み出したのは君だ。獲物は約束通り…」
「…そりゃ選び放題だよなあ?日本の警察に直接警備態勢を聞いてんだから」
「…なんだと?」
「そうなんだろ?…ICPOのジャック・コネリーさんよォ!!」
突然のキッドの言葉に狼狽えるナイトメアにに向かって、キッドは更にそう言葉を重ねる。その言葉にナイトメアには小さく息を飲むが、すぐにわざとらしく肩をすくめる。
「何を馬鹿な…言ったはずだぞ?私が警備態勢を把握出来るのは、防犯カメラや警察の通信網を傍受しているからだと」
「だったら何で数を間違えた?」
「…数?」
「機動隊は、表136、裏103、本館185、屋上47…計471名!あんたが言ったのは、それより1人多かったぜ?」
「そんなはずは…」
「あんた知らなかっただろうが…あの時、ふざけて機動隊の格好をした女の子が現場にいたんだ。あんたは、防犯カメラを傍受していたんじゃなく、あの時にあの場で直接自分の目で警官の数を数えたんだろ?」
「………フン」
キッドは機動隊の服を着て笑っていた青子の姿を思い浮かべながら、そう告げる。ナイトメアはキッドの言葉に小さく息をつくと、シュルシュルと仮面やカツラを外しながら言葉を続ける。
「世界各国をまわっているとねぇ…たまにいるんだよ」
そんな台詞とともに、黒い笑みを浮かべたジャック・コネリーの素顔が仮面の下から表れる。
「我々ICPOに見栄や対抗意識を燃やしてわざと数を間違えて報告する馬鹿な警官がな…だから、いつも自分の目で確認しているんだが…今回は裏目に出てしまったようだ」
そして、そう言いながら内ポケットから取り出した拳銃を構えてキッドに銃口を向ける。
「なるほどね…今まで自分の正体に気付いた相棒はそうやって自分の手で始末していたわけか」
「ああ…私が手を組むのは、その国で手を焼いている盗賊。手柄を地元警察に渡す条件で発砲許可を得ていたからね。それにしても、君はいつのまに本来の機動隊の数を確認していたのかな?」
「……何?」
「私が見ている限りでは、あの現場で君にはそんな時間の余裕はなかったようだが?」
拳銃を構えたままにやにやとそう尋ねてくるコネリーに、キッドは思わず眉を寄せてコネリーを睨み付ける。
「確認したのは名字名前だろう?」
「…気安くその名前を口にするな」
「やはり、君の犯行には彼女のサポートがあったようだな。ICPOの私がナイトメアであることと、高校生探偵だと持て囃された彼女が世紀の大怪盗の仲間であることと…何が違うのかな?君に批判される筋合いはないよ」
「あいつは、普段の俺の犯行には関与していない。人殺しのお前と一緒にするんじゃねえ!!」
「ハッハッハ…そんな事、誰が信じるというんだね?君を始末した暁には、匿名で彼女の罪を警察に情報提供するとしよう。彼女もなかなかに鋭いようだ…私の正体に気付く危ない芽は摘んでおかないとな」
「てめぇ…俺がそんな事を許すと思ってんのか!」
コネリーの言葉に、キッドは青筋を浮かべながら低い声でそう告げる。
「犯罪に人を巻き込むということは、そう言うことなのだよ…黒羽快斗君。青い春を楽しむのは結構だが、そんな甘い考えで犯罪に手を染めているわけではないのだろう?」
「……!」
「そして今、どちらの立場が劣性なのか忘れてはいけない。君は今から私の手によって始末され、君の彼女は君と共に犯した罪によって裁かれるのだ」
「君に出来る事は、もうないのだよ」コネリーは、そう言ってゆるりと口角をあげながら銃を持ち直して、引き金に指をかけた。