「ダーク・ナイト」編
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「俺はこのままA地点に向かう、B班はこのまま念のため市内を巡回だ!キッドを見つけたらすぐに報告しろ!」
中森の乗るパトカーに乗せてもらい、キッドを追う名前と白馬は並んで後部座席に座っている。
助手席で無線を使い捜査員に指示を出す中森の声を聞きながら、名前は窓の外に目を向けていたが、ふと隣から声がかかる。
「どうやら僕たちはICPOが予測して割り出した逃走先にこのまま向かうようですね」
「…そうみたいだね。そこにナイトメア、いるかしら?」
ナイトメアという単語にピクリと反応するように、白馬は名前に視線を向ける。いつもの探るような視線ではなく、どこか迷いを含むような視線に戸惑いながら名前は首をかしげる。
「どうしたの?」
「……いえ、もう着くようですよ」
何かを言おうとした白馬だったが、結局小さなため息をついたあとに視線を前に向ける。
「おや、タクシー?…誰かいますね」
「え?こんなところに誰かしら」
人気のない倉庫街までたどり着いたパトカーの先には、1台のタクシーと二つの人影が見えた。
Card.607
「あ、青子!?何でお前がここに」
真っ先にパトカーから降りた中森は驚いたように大声をあげる。中森に続いて、人影の方へ向かっていた名前と白馬もそこにいた予想外の人物に目を見開く。
「青子にケンタ君も…こんなところでどうしたの?」
「あ、名前ちゃんに白馬君も!実はケンタ君がどうしてもパパに会いたいって聞かなくて。コネリーさんが乗った車を見かけたから、追ってきたらこんなところに…」
「…そう、コネリーさんもここに」
青子の話を聞いて僅かに眉を寄せた名前のそばに、そっと白馬が近づいてくる。
「この少年は?」
「ICPOのジャック・コネリーさんの息子さんのケンタ君よ」
「……なるほど」
二人の目線の先には、相変わらずウロウロしかながら父親であるコネリーを探すケンタとその後ろを慌てて追いかける青子の姿。そのまわりでは、中森や捜査員達も倉庫の中を捜索し始めているが、隣に立つ白馬はその中に加わる気はないようだ。
「ケンタ君の目撃情報もありますし、おそらくいるでしょうね。彼らは」
「……白馬君、気付いてるの?」
「キッドと手を組むと知った時点でナイトメアの事は調べましたから。毎回完璧な逃走経路を用意して、手を組んだ相棒を逃がす完璧な計画。その不自然なまでの完璧さから、ある程度予想は出来ました」
「…なるほどね」
「それは、あなたも同じなのでは?」
「そうね。動機がわからなかったけど、それも今日分かったわ」
「パパー?どこにいるの?」
走り回っているケンタに、悲し気な視線を向ける名前の横顔をチラリと見ながら、白馬は言葉を続ける。
「僕が怪盗キッドに執着する理由、前に話しましたよね?」
「え、うん…探偵甲子園の時のこと?」
「ええ。あのとき彼を捕まえる事が彼を止める唯一の方法だと言いましたが、実はもう1つ…彼が繰り返すこの愚かな犯行を、彼自らがやめる時があるのではないかと考えていたことがあります」
「え?」
「それは、自分のせいで自分の大切な存在を危険に晒してしまった時」
そう言った白馬は真っ直ぐ名前に目線を向ける。いつものように誤魔化そうとした名前だったが、その真剣な表情に名前は思わず口をつぐんでしまう。
「そして今回、謀らずもナイトメアという存在が怪盗キッドに接触したことで、僕の考えていた状況が訪れたと予想しています」
「…………」
「この件が終わった後、彼がこのまま怪盗キッドを続けるのか…それとも、大切な者を守るために犯行をやめるのか…」
「白馬君…」
「いずれにしても、犯罪者のそばにいるという事は…犯罪者が大切な者を作るということは、それ相応の覚悟が伴う。巻き込む側にも、巻き込まれる側にもね」
その言葉に名前はぎゅっと手を握りしめる。白馬の言葉はずっと考えていたことを言い当てられたようだった。以前からずっと、自分が巻き込まれる立場にあることを。そして、今後自分の決断次第では巻き込む立場にもなり得ることを。
「パパ!?今、パパの声が聞こえたよ!」
「何?向こうの倉庫か!?」
黙りこんでしまった名前の言葉を待っていた白馬は、チラリと捜査員達の方へ視線を向ける。
「向こうの倉庫に入るようですよ」
「え、ああ…本当だ」
「僕らも行きましょうか」
「…そうだね」
突然いつもの雰囲気に戻った白馬に戸惑いながらも、名前は白馬と並んで中森たちの後を追う。
「名前さん」
「…何?」
「あなた達は、僕の大切な友人です」
「え?」
「誰かが危険に巻き込まれるのが分かっていたら止めたくなるでしょう?」
「……そうね、」
「友人なら…尚更ですよ。彼にはなかなか伝わりませんがね」
それだけ言うと、白馬は小さく笑って肩をすくめる。名前はそんな白馬に曖昧に微笑んで返すことしか出来なかった。