「ダーク・ナイト」編
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(さて、ナイトメアとキッドの決着がどうつくかを見守るには、まずはキッドを追わないと)
快斗扮する館長が部屋を出てからしばらくたった。いつもの名前ならば、逃走後は快斗を信じて後を追うことなどしないが、今回は別である。
今回は宝石を盗むことがゴールではない、宝石を盗んだあとにコンタクトを取るであろうナイトメアとどう決着をつけるのかが重要なのだ。
(逃走先は聞いてないけど、ナイトメアが考えることを推察するに…あの人の行動を確認すれば…)
そんな事を考えながら、名前は中森の目を盗んでこっそり館内から出ようと入り口に向かう。
「おっと失礼」
「いえ…こちらこそ。あ、白馬君!」
「おや、名前さんは美術館に残っていたんですね。ところでどちらへ?」
「……ううん、ちょっと外の様子が気になっただけ」
しかし外に向かおうとしたところで、僅かに息を切らして駆け込んできた白馬と鉢合わせしてしまう。名前に疑うような目線を向ける白馬を前にキッドを追うわけにもいかず、名前は白馬と連れだって再び室内に戻るしかなかった。
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「無駄だよ、無駄!キッドはもう宝石を奪って逃げちまったんだ。今頃来ていくら調べたって何にも出ないさ!」
白馬は到着するなりすぐに、中森の言葉を無視したままイヤリングの入っていたケースを念入りに調べている。
「奴は犯行前にもう宝石を偽物にすり替えていて、停電中にケースを傾けてわざと水に浮かせたんだ!そうする事で、守っていた宝石は偽物だとワシらを馬鹿にしたんだよ!」
「…妙だと思いませんか?」
「え?」
それまで無言でケースを調べていた白馬は、忌々し気に話す中森にチラリと目線を向けると徐に口を開く。
「ほら、水面から上のケースの側面に張り付いたゴミで水の動きが分かるんですが…普通これだけの水が入っている容器を傾ければ、水面の中央辺りから水がせり上がった側面までゴミがつくはずなのに」
「あ、ああ?」
「しかし、このケースにはゴミが端にしかついていない。つまり動いた水の量はかなり少なかったということです」
そこまで説明すると白馬は徐にケースを傾ける。中に入っていた水が、ザバッと音をたてて全て床に零れていく。
「お、おい!?急に何を…ん?何だそれは?」
「透明なアクリル板ですよ」
突然の行動に驚いた中森だったが、ケースの中から透明な板が出て来て首をかしげる。
「小さなストッパーをケースの四隅に張り付け、それに引っ掛かるようにアクリル板を沈めて水深を浅くしてあったんです!停電中にケースを傾けて、水に落ちた宝石がまるで浮いているように見える高さにね」
「し、しかしどうやってそんな板を」
「蓋を最後に閉めた方は誰なんですか?」
「近藤館長だが…水面を調べた後に、蓋を閉めるときにフラついたせいで、ケースを少し揺らしていたが…アクリル板を仕掛けるような素振りはしていなかったはずだ」
「いや、揺らすだけで十分ですよ。蓋を閉めるときにアクリル板を重ねて持ち、置いたと同時にアクリル板を垂直に落下させる。後は、少し揺らすことで水の中に沈める事が出来ますからね」
「なっ!って事は、あの館長が鑑定した偽物は本物だったということか?!」
「そういう事になりますね」
「くそっ!館長だ!キッドは館長に変装して宝石を持ち去った!この美術館から出すんじゃないぞ!」
白馬の推理を聞き終えた中森は、わなわなと怒りに震えながら周りにいる捜査員に大声で指示を出す。
慌てて飛び度していく捜査員たちを見送りながら、白馬は小さく息をつく。
(今から捜索しても、おそらく既に変装を解いて…あの白い翼で夜空のどこかを羽ばたいていると思いますけどね)
半ば諦めたようにそんな事を考えながら、白馬はくるりと室内を見渡して一人の人物を見つけると、そちらに足を向ける。
「名前さん」
「白馬君、お見事だったわね」
「そうですか?あれくらいの仕掛けなら犯行時刻前からここいた名前さんなら、すぐに気付いたと思いますがね」
「気付いていたら、とっくに中森警部に進言してるわよ」
「そうですか?偽物の館長が鑑定する事になった決め手も、あなたの誘導によるものだったと記憶していますが」
「誘導だなんて…私は、あの仕掛けに気付かなかったから、オパールが水に浮くはずがないって伝えただけよ」
白馬が探るような目線を向けても、名前は肩をすくめるように微笑みながらそう言葉を返す。
「あなたも相変わらずですねぇ」
「何の事?」
「ふっ、今回はまんまとキッドの策略に嵌まって到着時刻が遅れた僕のミスですからね。敗けを認めましょう。」
サラリと前髪を掻き上げながらそう言う白馬に、名前は困ったような笑みを返す。すると、二人から少し離れた場所にいる中森が大きな声で声をかけてくる。
「名前ちゃん達!ICPOの連中が予測した逃走経路の捜索に向かうが、一緒に行くか?」
「せっかくですから行ってみますか?」
「……そうね、ナイトメアの方もどうなったか気になるし」
名前は自分を疑う白馬と一緒に行動するべきではないか?と、少し迷ったが、キッド達の行方が気になっていたため小さく頷いて、白馬と共に中森の方へと向かっていった。