「ダーク・ナイト」編
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「近藤館長」
「おや、君は?」
名前はまわりの捜査員が聞いていないのを確認して、館長に声をかける。
「……細工は流々ですか、快斗くん」
「オメー、よく俺だってわかったな」
「今日は気合い入れてるからね、さっき何かケースに仕掛けてたでしょ?」
「まーな。あとは、白馬の野郎がうまく引っ掛かってくれると良いけどな」
そしてそっと耳元で声をかけると、館長はその顔に似合わずににやりと笑う。
「そういえば、白馬君まだ来てないわね」
「来なくていいんだよ、あんな野郎」
「ふふ…中森警部といい白馬君といい、人気者の怪盗さんは大変ね。これ、さっき話してたの。確認しておいたから」
「おー、さすが名前ちゃん……やっぱりな」
「使えそう?」
「ああ、助かったよ」
「じゃ、そろそろ中森警部の方に戻るね。あとは頑張って」
名前が用意していたメモを渡すと、館長に扮する快斗はその場で確認する。その口振りから、どうやら快斗の思惑通りの結果になったようだ。名前は、快斗の役に立てたことに内心安堵しつつ、小さく微笑む。そしてあまり話し込んでいて、怪しまれないようにと館長のそばを離れた。
(これ以上名前を巻き込まねーためにも、今日のうちに蹴りつけねーとな)
快斗は、そんな名前の背中を見送りながらグッと拳を握った。
card.604
「困りましたね…探坊っちゃま、秀峰美術館は目と鼻の先だというのに」
その頃、美術館に向かっていた白馬探を乗せた車は渋滞に巻き込まれて身動きがとれなくなっていた。白馬は、気怠げに窓の外を眺めながら口を開く。
「ばあや、どうしてこの道を?」
「先ほどガソリンスタンドに立ち寄ったときに、携帯電話を見ましたら中森警部から"至急連絡されたし"と、メールが来ておりまして」
「ほおー、中森警部から?」
「ええ、メールに書かれていた番号にかけたところ、この道が一番空いていて早いと教えていただきまして」
「ばあや、そいつは怪盗キッドだよ。わざわざ警部の声で電話をかけて、僕を混んでいる道へ誘導して足止めさせたんだ」
(名前さんには口止めしていたけど、僕がこちらに来ているのがバレたようだな)
「ええ!?ばあやが愚かでございました…申し訳ありません」
「大丈夫、犯行前に僕が来られちゃ都合が悪いことがわかったからね」
慌てる老婦人に白馬はニコリと笑顔を向けてそう言うと、ガチャリとドアを開けて車から降りる。白馬の行動に、老婦人は慌てて目を見開く。
「ぼ、坊っちゃま?」
「ばあやはそのまま車で美術館に!僕は走っていくよ」
驚いている老婦人を残して、白馬は走り出しながらポケットから携帯電話を取り出した。
◇◇◇◇◇◇
ピリリ…ピリピリ
「ん?…はい、中森」
『お久しぶりです、中森警部!白馬探です』
美術館に向かいながら白馬が電話をかけたのは、中森警部だった。電話から聞こえた言葉に中森は目を見開く。
「は、白馬って警視総監の息子の…帰ってきてたのか?」
『その話は後で。そちらの状況を教えてください』
(そういえば白馬君、本当に遅いわね。どこからかけてるのかしら?)
電話に出た中森の声が聞こえてきて、名前は首を傾げる。
あの白馬が、怪盗キッドに関わる事件に遅れてくるとは考えにくい。
そう思いながら、チラリと快斗扮する館長に目線をうつすと、こちらの目線に気付いたのか、館長がニヤリと口角をあげて笑みを浮かべる。
(あの顔……快斗が何かしたのね、いつも自信満々なだけあって根回しは完璧か)
名前は、今日になって白馬が帰国した事を知った快斗の臨機応変な対応に感心しながらも、まわりに気付かれないように館長に向けて小さく微笑んで見せた。
「状況って言ってもなあ、まだ何も……ん?」
そんな中、白馬と通話していた中森はふと周りを見渡してあることに気づいて、繋がった状態の携帯電話をそのまま耳元から離す。
「あの、近藤館長…ちょっと暗すぎやしませんか?この部屋」
「ああ、私が今調節したんじゃよ」
中森が電話している間に美術館の館内の照明はかなり絞られて薄暗くなっている。
「ええ?なぜですか?」
「オパールは約6~10%の水を含んでおり、乾燥すると亀裂が入るから強い光も避けねばならんのだよ」
「ええ、それは私も聞いていましたから事前に少し照明は落としていたはずですが…?」
不自然に暗くなった館内を中森は、眉を寄せて見渡す。
名前はそんな中、チラリと腕時計を確認する。
(犯行時刻まで1分切った…ここまで来たら、あとはもう無事に逃げ切ってくれるのを祈ることしか出来ないわね)
名前は両手をグッと握りしめて、暗闇のなか怪しい笑みを浮かべている館長の動きを見守った。