「ダーク・ナイト」編
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「……ねぇ、快斗」
「んー?」
中森と別れて宝石の展示室を出た2人は、美術館の入口に向かって足を進めていく。
「さっきのガラスケース見た時、何か考えてたみたいだけど…良い方法思い付いたんでしょ?」
「ははっ…まぁな。仕事の前からご丁寧に仕掛けまで教えてもらえるなんて、今回は楽勝だな」
名前の言葉に、快斗はどこか楽し気にそう言葉を返す。
「ふーん」
(ナイトメアが絡んでるって言うのに余裕だな…快斗)
「名前ちゃんは、今日ずっと現場にいるんだろ?」
「ええ…中森警部に頼まれたし。ナイトメアの方も気になるからね。何か出来るかは分からないけど…」
名前は肩を竦めながら、小声で快斗に言葉を返す。
「ま、俺は名前ちゃんが傍にいてくれるだけで力が湧いて来るからさ。ナイトメアの野郎の事も俺に任せて…名前ちゃんは、俺が華麗に仕事を熟すのを楽しんでよ…な?」
「ふふ…相変わらず頼もしいわね」
(ナイトメアの件もあって勝手に心配してたけど……いつもの自信満々な快斗ね、良かった)
名前は、ニヤリと笑う快斗の横顔を見て安堵の息をつきながら、微笑みを返した。
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「あら…あれ、青子じゃない?」
「ん?本当だ。あいつ、さっき帰るって言ってなかったか?」
そんな会話をしていると、廊下の先に青子の姿が視界に入り、2人は不思議そうに顔を見合わせる。
「おーい!青子!オメー、まだいたのかよ?」
そして青子との距離が縮まったところで、青子の背中に快斗が声をかける。
「あれ…名前ちゃん、快斗!おかえりー!」
「青子…ケンタ君を、送って行くんじゃなかったの?」
「だってー、この子…"ボクもパパと一緒に悪い奴をやっつける″って言って動かないんだもん」
名前の言葉に、青子は困ったように床にしゃがんで抗議の姿勢をとるケンタに視線を向ける。
「ほら、ここは坊やのパパや青子のお父さんに任せて…」
「やだっ!!ボクも戦う!お父さんみたいになるんだもんっ!!」
青子が優しく説得するのも虚しく、ケンタはブンブンと首を横に振る。
「……意外と頑固だな」
「困ったわね…」
そんな青子とケンタのやり取りを、名前と快斗は苦笑しながら見守る。
「……うっ、」
しかし、そんな2人の視線の先で突然ケンタが顔を歪めて頭を押さえる。
「ケ、ケンタ君…!?」
「ケンタ君、頭痛いの?」
「おい、大丈夫か!?」
ケンタの苦悶の表情を見て慌てる青子の横に、名前と快斗も眉を寄せながらしゃがみ込んでケンタに声をかける。
「だ…大丈夫。薬あるから」
そんな3人を尻目に、ケンタはゴソゴソとポケットから薬瓶を取り出すと、慣れた手つきで1粒口に含む。
「薬って……オメー、それ鎮痛剤じゃねーか!」
ケンタはが取り出した瓶には、子供が携帯するには不釣り合いな強い効果をもつ薬品名が書かれている。それを見た快斗は、驚いて目を見開く。
「お医者さんは、ボクの頭の中に悪い奴が住んでいて…手術しなきゃいけないって言ってたけど」
「手術ってオメー…」
「………。」
(手術をしなきゃいけないなんて、脳腫瘍か何かかしら…?)
ケンタの言葉に何と言葉を返そうかと戸惑う快斗の横で、名前はどこか悲し気に眉を寄せる。
「で…でも、大丈夫だよ!!パパ言ってたもん!」
青子や快斗の動揺を読み取ったのか、ケンタは慌てたように口を開くと、どこか明るい口調で言葉を続ける。
「ナイトメアがいなくなれば、ボクの頭の中で暴れてる悪い馬を追っ払えるって!そうしたら、ずーっとパパと一緒に暮らせるようになるって……そう言ってたもん!!」
---グルルゥゥ…
「………あ、」
「あら、お腹空いたの?」
しかし、そこまで言いきったところでふいにお腹がグルグルと鳴り、ケンタは恥ずかし気にお腹に手をあてる。
「だったら、青子とファミレスでカレーライス食べようか!」
「……え?」
「人参を食べれば、悪いお馬さん大人しくなるかもしれないよ!」
「う…うん」
そんなケンタに青子が優しくそう声をかけると、ケンタも目を丸くしながらコクンと頷く。
「…………。」
「名前ちゃん、どうかした?」
仲良く手をつないでファミレスに向かう青子とケンタを見送る快斗だったが、隣で眉を寄せて黙り込んでいる名前を心配そうに覗き込む。
「ケンタ君の、今の言葉の意味って…やっぱり……」
「え…?」
(名前ちゃん、また何かに気付いたのか?)
名前はケンタの背中を見つめたまま、何かを考えるように顎に手を当ててポツリと呟く。快斗は、そんな名前の横顔を不思議そうに見つめていた。