｢それじゃ、私もちょっと中森警部に挨拶してくるね｣

｢あ…うん、分かった｣

中森の元に向かう名前の背中を見送りながら、青子は不思議そうに首を傾げる。

｢それにしても……名前ちゃんが、人前であんな風に素直に惚気るの珍しいね｣

｢…………。｣

｢快斗……聞いてる？｣

何も答えない快斗の態度に首を傾げる青子の横で、快斗は遠ざかって行く名前の姿をジッと見つめていた。



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--私…快斗が大好きだから、そう簡単には快斗の事を嫌いになったりしないもの--


快斗は、名前の言葉を思い出して小さくため息をつく。

｢……敵わねーよなぁ、本当に｣


--……だから安心して？--

(あれは…あの言葉は、あの日の俺に対する名前ちゃんの答えって事か…)

そして、自嘲気味に口元に笑みを浮かべながら前髪を掻き上げる。

(……気まずいし、嫌われたかもしれねーって怖じけづいてた自分が情けねーな……本当に)

--……その名前さんの覚悟から、ぼっちゃんは逃げてはいけませんよ--

｢……ふっ｣
(本当に…その通りだぜ。ジィちゃん…)



｢ちょっと快斗ー？どうしちゃったのよ！黙りこんだかと思ったら、急にニヤニヤして｣

快斗が、名前や寺井とのやりとりを思い返している中、青子は眉を寄せて不思議そうに快斗の顔を覗き込む。

｢なぁ……青子｣

｢……何？｣

｢俺…やっぱり名前ちゃん、大好きだわ｣

｢………はぁ？｣

青子は突然の快斗の呟きに目を見開くが、快斗は至って真剣な表情をしているため、青子は肩をすくめて大きなため息をつく。

｢もうっ…何よ！名前ちゃんも快斗も！！青子の前で2人して堂々と惚気ちゃって！｣

｢ハハハ…いやー、それくらい名前ちゃんへの愛が止まらねーってわけだよ｣

｢……はいはい。あんた達がラブラブなのは分かったから、もう良いわよ｣

ニヤニヤと楽し気に話す快斗に、青子は呆れたように肩を落としてため息をつく。



｢ねぇねぇ、お姉さんも悪い奴らと戦うの？｣

そんな会話をしている快斗と青子の足元から突然声がして、2人は会話を中断して足元に視線を向ける。すると、2人の足元には小学1年生くらいの外人の男の子が立っている。

｢？｣
(誰だ…こいつ)

｢……ええ、そうよ！捕まえてギッチョンギッチョンにしてやるわ！！この世に悪が栄えた試しはないんだから！｣

首を傾げる快斗を尻目に、機動隊の服を着ている青子は少年の年齢に合わせた言葉を返す。

｢じゃあパパの味方だね！！頑張ってね！｣

そんな青子の言葉に、少年は嬉しそうに笑顔を浮かべる。

｢…パパって、オメー誰だ？｣
(見た目は外人だけど…日本語うめェな、こいつ)

少年の言葉に、快斗が不思議そうに尋ねる。

｢僕は、ケンタ･コネリー！パパの名前は、ジャック･コネリー！"ナイトメア″っていう悪い奴をずーっと追い掛けてる、インターポールっていう所の偉い人なんだよ！！｣

少年は快斗の質問に嬉しそうに自己紹介しながら、くるりと後ろを向いて警官達の中心で中森と言葉を交わしている長身の男性を指差した。