「ダーク・ナイト」編
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「何があったか知らないけど、そんな顔して来ても工藤君は当分ここには来ないわよ」
「……開口一番にそれはないでしょう。どうしたの?くらい聞いてくれても良いじゃない」
阿笠邸を訪れた名前だったが、玄関で出迎えられて早々に告げられた灰原の言葉に小さくため息をつく。
「新一が大阪に行ってていないのは知ってるわ…私は哀に会いに来たのよ」
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「ふぅん……押し倒すなんて、異常なくらいあなたに過保護な彼にしては珍しく大胆な行動ね」
名前から昨夜の様子を聞いた哀だったが、大して動揺する事もなく紅茶に口をつけながら平然と言葉を返す。
「だけど…あなた達くらいの年齢だったら、そんなに珍しい事でもないじゃない」
「……押し倒されたって言っても、その後は別に何にもしてないんだからね」
(そんな言い方されると…逆に私の方が恥ずかしいんだけど)
名前は、そんな灰原の態度に困ったように眉を寄せる。
「あら…そうなの?そんな寝不足のゲッソリした顔で来るから、何かあったのかと思うじゃない」
「……別に?ただちょっともやもやしてるから……快斗に会う前に誰かに話してスッキリしておきたかっただけよ」
「…………ふーん」
(もやもやねぇ。"もやもや"程度の顔には見えないけど)
名前の言葉に、灰原は名前の顔をしばらく見つめた後に小さくため息をつく。
「彼の事ばかり気にするのも構わないけど……そういう大事な事に関しては、怖いなら怖い…嫌なら嫌だって言わないと、自分で自分の首を絞めるだけよ」
「…え?」
今まで興味なさそうにしていた灰原が、突然サラリと告げた的確なアドバイスに、名前は思わず僅かに目を見開く。
「あなたは…ただでさえ、そういう事には疎いんだから。意地ばかり張ってないで、言いたい事は相手にちゃんと言った方が良いと思うけど」
「何で…そんな事…」
「あら…平気なフリをしてるみたいだけど……その顔を見たら、強がってるのなんてバレバレよ?第一、あなたにとって"大した事じゃなかった″なら、いちいち私の所になんて来ないでしょ」
「………ふふ」
灰原の言葉に、しばらくポカンと灰原を見つめていた名前だったが、突然堰を切ったようにクスクスと笑い出す。
「何よ?」
「ううん……敵わないなーと思って。哀先生には」
「馬鹿ね…あなたが分かりやすいだけでしょ」
「あら…そんな事、今まで言われた事ないんだけどな」
名前は一通り笑った後に小さく息をつくと、ふいに真剣な顔になって言葉を続ける。
「………その通りよ。本当は突然の出来事だったし、ろくに経験もないから…パニックになった。だけど、自分の中で消化出来なくて…どうしようなくてここに来たの」
「…………。」
灰原は、黙ったまま名前の言葉を待つ。
「……快斗が相手だから、嫌ではないけど。怖く…なかったわけじゃないと思う。でも、快斗にそうさせてしまったのは……多分、私が関係してると思うから」
「………あら、彼が突然そんな事をした理由が分かってるのね」
名前の言葉に、灰原は僅かに目を見開く。
「ええ……確認したわけじゃないけどね。多分"私″が゙"怪盗キッドとしての快斗″の弱みになっちゃったんだと思うの。……迷惑なんてかけたくないのに」
「…………。」
自嘲気味に呟く名前を、灰原は眉を寄せて見守る。
「だから…今回は、快斗に私の弱みは見せたくない。それじゃ…余計に追い詰めちゃうから」
「……そう。ま、あなたがそう決めたなら良いんじゃない?ただ…さっきみたいな顔で会ったら、黒羽君にもバレバレだと思うわよ」
灰原は一瞬何かを言いた気な表情を見せたが、結局は名前の考えを受け止めた言葉を返す。
「ふふ……大丈夫よ。哀に話したらスッキリしたし、後で適当に仮眠でもとるわ」
「……そう?それなら後は、あなたに任せるわ」
「ふふ…ありがとう」
---ピリピリ、ピリピリ
何となく話の区切りがついて肩の力が抜けた名前は、一息つこうと紅茶の注がれたティーカップに手を伸ばしかけたが、それを遮るように名前の携帯から着信音が響く。
「……黒羽君?」
「ううん……メール。江古田の友達からみたい」
(青子からだわ…何かしら?)
名前は、灰原の問いに答えながら携帯に届いた新着メールを開いた。