「時計じかけの摩天楼」編
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「目暮警部…本当に聴取、明日で良いんですか?」
隣で早く帰ろうと言わんばかりの表情をしている快斗をチラリと見ながら、名前は困ったように眉を寄せて目暮達に尋ねる。
「ああ…構わんよ。黒羽君の言うように、名前君なら明日でもしっかり聴取出来るだろうしなぁ」
「そうですね…あんな事件の後で疲れているのに、我々も気が効かなくて悪かったね」
しかし目暮も白鳥も、快斗の言葉にすっかり納得したようで笑顔と共にそんな言葉が返ってきた。
card.582
「ああ…そうだ、名前君」
快斗と並んでテントを出ようとした名前を、ふと思い出したように目暮が呼び止める。
「何ですか?」
「これは聴取というより、我々の個人的興味なんだが…」
「?」
「爆弾の最後のコード」
「…え?」
「青のコードを選んだのには、何か理由があったのかい?」
目暮の突然の言葉に首を傾げる名前に、白鳥が目暮の言葉に続けて尋ねる。
「…え、爆弾のコードに色なんかついてたのか?」
目暮達の質問を聞いて、爆弾の構造の詳細を知らなかった快斗が首を傾げながら名前に視線を向ける。
「えっ……あ、うん。そうなんだけど…」
名前は、快斗の視線を受けて困ったように目暮達と快斗を交互に見る。
「「?」」
そんな行動に、不思議そうに首を傾げる3人だが、名前は珍しく歯切れ悪くおずおずと口を開く。
「え…っと、その話も明日で良いですか?」
(目暮警部達相手でも言いたくないのに……快斗の前じゃ、とても恥ずかしくて言えないわ…)
「……………。」
しばらくの沈黙の後、戸惑いがちにそう言葉を返す名前の横顔を快斗は不思議そうに見つめていた。
「もう明け方近いのに…まだ結構、人が残ってるのね」
「こんな爆弾騒ぎ、滅多にあるもんじゃねーからな。みんな興奮が冷めないんだろ」
目暮達からの最後の質問の答えも、結局は明日の事情聴取で答える事になった名前。ようやく快斗と並んで家路につくために、テントを出て寺井の待つ駅前に向かって歩いている。
「それよりさー、名前ちゃん」
「何?」
そんな中、快斗がふと改まったように口を開く。
「結局、その最後のコード?…切った理由なんだったわけ?」
「…え?」
「オメー、警部のおっさんにあの質問された時に、明らかに俺の事を気にしてたじゃねーか?」
快斗は両手を頭の後ろに組みながら、どこか不満気に名前に視線を向ける。
「爆発の危険と隣り合わせの中、愛しい彼女のためにビルに飛び込んだ彼氏にも言えねーわけ?」
「…………。」
「そうか、そうか。名前ちゃんの俺に対する気持ちは、そんなもんか。悲しいなぁー、俺は名前ちゃん大好きなのに」
「…………。」
(わざとらしい…)
明らかにわざとらしく、拗ねたように肩を落とす快斗を横目で見ながら、名前は小さくため息をつく。
(冗談っぽく言ってるけど…快斗があんな状況でも、私を置いて行かずに最後まで一緒にいてくれたのは本当だもんね。あの後、何となくお礼を言うタイミングも逃しちゃったし……)
「あの時……最後のコードは、赤と青2つあったの」
呆れたような表情を見せていた名前だったが、快斗が自分のためにビルに残ってくれた事を思い返して小さく息をつくと、戸惑いがちに口を開いた。