「時計じかけの摩天楼」編
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ファンファン…と、多くの警察車両や救急車が往来する米花シティビルの駐車場の一角。巻き込まれた被害者の救助用に大量に用意されたテントの中で、名前はふわりと毛布に包まれながら、救助隊に渡されたホットミルクに口をつける。
「………はァ」
(今日はさすがに疲れた…)
辺りでは救助された人々が歓喜の声をあげているが、名前は閉じそうになる瞼を無理矢理こじ開けて眠気覚ましにホットミルクを飲み干した。
card.581
「成る程…そこで椅子の後ろにある爆弾を見つけたわけだね」
しばらく待たされた後、今名前の前では顔見知りの目暮や白鳥が真剣な表情でメモをとっている。
「はい。あのシネマロビーは、1回目の爆発の影響で扉が開かなくて脱出も出来なかったので、仕方なく解体を……」
名前は相手が親しくしている目暮達だという事もあり、疲れた身体に鞭をうちながらもそれを表情には出さずに目暮達の質問に頷きながら現場に居合わせた人間として状況を説明する。
---バサッ
「あ…いたいた!」
そんな時、名前の後ろでテントがバサリとめくられ聞き慣れた声が名前の耳へ届く。
「おお…黒羽君。君も今回はいろいろお疲れだったな。まあ…1人でビルの中に飛び込んで行った点は感心しないがね」
その声に反応した名前が振り返るよりも早く、テントに入って来た人物に目暮が声をかける。
「あー、いや…まぁ、それはすみません」
快斗は、その言葉に苦笑しながら困ったように頭を掻く。
「快斗…どうしたの?」
(そういえば、救助された時は私も朦朧としてたし。まわりも大騒ぎで、快斗にゆっくり顔合わす暇もなかったわね……)
名前はくるりと首だけ振り返り、助かった事を実感しながら快斗の姿を目に焼き付けるようにマジマジと見つめる。
「いや…オメー救助された後、あっという間に救助隊に連れて行かれたまま全然戻って来ねーから、ずっと探してたんだよ」
(あーんなに大変な事件に巻き込まれて、せっかく助かったって言うのに……感動的な再会はおろか、今ようやくまともに会話出来たくらいだし)
快斗は、チラリと白鳥達の視線を気にしながらもどこか拗ねたような口調で言葉を返す。
「でも、まだ事情聴取が……」
「あー、そうそう。その事なんだけどさー、警部さん」
そんな快斗の言葉に名前は困ったように言葉を返すが、快斗は名前の言葉を聞いて、ふと思い出したように名前の言葉を遮って目暮と白鳥に視線をうつす。
「ん、何だね?」
「こいつさ…分かりにくいけど。こう見えても疲れてんだよ……そういう事情聴取とか、また今度にしてくれません?」
突然自分達に声をかけられ首を傾げる白鳥達に向かって、快斗はポンポンと名前の頭を撫でながらそう尋ねる。
「ちょ、ちょっと…快斗!そんなの目暮警部達に迷惑でしょ…」
「バーロー!今にも寝ちまいそうな顔して、何言ってんだ…」
「だ、だって…」
「無理するんじゃねーって。オメーは、相変わらず人のことばっかり気にしやがって。ジィちゃんが来てくれるって言うから、帰ろうぜ」
名前は、そんな快斗の言葉に驚いて目を見開くが、快斗は呆れたような視線を名前に向ける。
「おい……気付いていたかね、白鳥君」
「いえ……全く」
名前と快斗の会話を聞いた白鳥と目暮は、名前の表情や素振りからは、そこまで疲れている事に気付かなかったため思わず顔を見合わせる。
「なァ…警部さん、良いだろ?明日にでも、俺がちゃんと警視庁に名前を連れてっからよ」
「ちょ……快斗」
「それに、名前なら後日の事情聴取でも、事件の状況を忘れたりしねーだろうから…正確に聴取出来ると思うぜ?」
快斗は驚く目暮達や慌てる名前を尻目に、どんどん話しを進めていく。
「…………。」
名前はそんな快斗の気遣いに、嬉しい反面困ったように小さくため息をついた。